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漫画でわかる学力の経済学(作者 中室牧子)
本の紹介をします!
今回は『学力の経済学』というタイトルで教育経済学者の中室さんが30万部以上売り上げた書籍をマンガ化したものです。早速、本の概要とポイントを3つ絞って書いていきます。
概要
私たちは教育に関して人から聞いたり、ニュースで特集されている成功体験のエピソードを信じがちですが、本書では特定の個人の成功体験ではなく教育経済学の研究者が科学的な方法を用いて、大規模なデータを分析した結果から導き出した『効果的な教育方法』を紹介しています。
1.子供をご褒美で釣ってはいけないのか?
ご褒美で子供を釣らなければ勉強させられないのは親失格ではないかと悩んでいる人も多いと思います。
人間には目先の利益が大きく見えてしまう性質があり、近い将来だとたとえ小さくてもすぐに得られる満足を大切にしてしまうのです。
この性質を了解して子供に勉強をするように仕向ける事で勉強を先送りにしないのも立派な戦略です。ここでのポイントはインプットに着目してご褒美を与えることです。ハーバード大学のフラーヤー教授の研究によるとインプット(特に本を読むこと)にご褒美を与えた子供たちの学力向上は顕著だったという結果もでています。
また、褒める時もむやみに褒めるのではなく、具体的に子供が達成した内容を褒めることが重要です。コロンビア大学の6回にわたる実験で分かったことは「子供のもともとの能力を褒めると、子供は意欲を失い成績が下がる」という結果もでいます。
ご褒美としてゲームはOKかという問いに対しても2時間を超えるとマイナスの影響が出てくると言われており時間を決めて遊ぶことが大切です。
本当に子供が成長できる学校とは?
次に子供が成長できる学校について解説していきます。
学校の選ぶ際に偏差値の高い学校に入学して、学力の高い友人から影響を受けてほしいと願う親が多いと思います。友人や周囲からの影響を受けることを良い、悪いを含めて経済学では『ピア エフェクト』と呼びます。確かにスタンフォード大学の研究で学力の高い教室変わるとテストの成績が良くなる研究結果が出ていますが、実は学力の高い優秀な友人から影響を受けるのはそのクラスでもともと学力の高い子供だけだったのです。
スウェーデンの高校性のデータを用いた研究では学力の高い同級生の存在が、学力の低い生徒の自信を喪失させ、大学への進学意欲を失わせたことを明らかにしています。
子供の学力をしっかりと見極めたうえで学校選びをすることが大切だと言えるでしょう。
また、共学よりも男女別学のほうが成績が向上したことを示した研究もあります。これは、男女の性質(競争心、リスク態度)に差があるためであるとの研究もあり、特に女性は競争心が弱いため女性だけが集まる別学のほうが有利に働くということかもしれません。また、「教員のかかわり方」の面からも男子校、女子校で勤務経験のある教員の方が、男女生徒の性質の違いを把握できておりそれぞれの性質にあった教育が可能になっているのかもしれません。
また、いい先生に巡り合うことも重要な要素です。スタンフォード大学の研究では、「能力の高い教員」と「能力の低い教員」の学習内容の習得率を比較すると1.5学年分:0.5学年分となり、実に1年分の差が生じることを示しています。教員の質を見るのに有効な方法として「教員の担当した子供の成績の変化(付加価値)で見る」というものがあります。ハーバード大学の研究で20年分のデータを使って、『付加価値』は「いい先生」の判断材料として有用だと証明しました。
非認知能力の伸ばし方
「忍耐力がある」とか「社会性がある」とか「意欲的である」といった人間の性質や性格的な特徴を「非認知能力」といいます。プリンストン大学では大学生の中退率が40%近くに上るという事実に着目してどういう学生が中退せずに卒業する可能性が高いか調べました。そこで、高校時代に認知能力が高かった学生より認知能力以外の通知表(締め切りを守る、発言する等)の成績が高かった学生の方が中退率が低いことがわかりました。高校で良い成績を取る過程で獲得した非認知能力は、高校を卒業した後も彼らを成功に導いたのです。
また、もっとも重要な非認知能力として挙げられているのが「やり抜く力」と「自制心」です。それぞれ以下の事が重要だという結果が多数報告されています。
やる抜く力:「自分の能力は生まれつきのものではなく、努力によって後天的に伸ばせる」と信じること。
自制心:「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」こと。
いかがでしたでしょうか?私も子供との接し方、補助の仕方を悩むことが多々あるので、このように統計的に教育を説明してくれる本を読めて有意義でしたし、勉強になりました。こちらの本がkindle会員は無料購読できます。気になった方は詳細は本書をご覧ください!