47.【屋根のない洋服屋 : 夜の世界】
左にこだわる謎のカメラマンが現れてから数日後の夢。
また35.【白い廊下:広場と怪しい屋台】で出てきた真っ白な廊下に立っていた。
大きな窓ガラスから入ってくる陽射しが強くて眩しい。
廊下を真っ直ぐ進むと、一番奥に扉があった。
前の夢の時は、扉は開けっ放しの状態だったから外に出られたけど、今回は鍵が閉まっているのか開けることもできない。
右を見ると見覚えのある銀色のエレベーターがあった。
エレベーターにはいい思い出が無いな……。
なんて考えていたら、コツンコツンと足音のような音が聴こえてきた。
音のする方を見ると、最初に立っていた場所の奥に階段があった。
そこから誰かが上ってきているような気がする。
足音で思い出すのは、あの悪夢。
また殺人鬼……?
そう思ったら、体が一気に緊張し始めた。
目を逸らすことができなくてじっと見ているとーー
看護師みたいな格好のおば様が歩いてきた。
離れていてもわかるぐらい真っ赤な口紅をしていて、強めのパーマをかけているのか髪もクルクル。
それに不自然なぐらい髪の表面がテカテカとしていた。
殺人鬼じゃないけどコワイッ!
――と思いつつ、動けない。
この感じは、前の43.【ゆらゆら : チキンスーツ】(前編)の時と似ていると思った。
でも、この時のエレベーターは地下にあって、廊下もこんなに明るくない。
それにあの地下にいた看護師みたいな人達は、ノイズみたいに体がブレていて、このおば様みたいにはっきりした姿ではなかった。
おば様は無表情とも何とも言えない顔で、じわじわと近づいてくる。
動けずにいると、突然エレベーターが勝手に開いた。
急いで乗って、階数の書いていないボタンを適当に連打。
扉がゆっくりと閉まりだして、どうにか逃げられると思った瞬間――
物凄い音と同時に閉まりかけた扉の間から、真っ赤なマニキュアをした両手が出てきた。
「乗せてよ」
謎のおば様が扉をこじ開けて、ニヤケた顔で入ってくる。怖い。
扉が閉まるとエレベーターは下へ動きだした。
前の悪夢と同じで、何階にいて何階に向かっているのかわからない。
不安になっていると、ある所でエレベーターが停まった。
静かに扉が開いた先には、子供がたくさん立っていた。
……と思ったら、よく見ると子供ではなくて、子供のように背が低い小さなお爺さん達だった。
急いでアタシが降りようとすると、看護師のおば様が腕を強く掴んできた。
怖くなって、力一杯振り払いながらエレベーターから降りた瞬間――
お爺さん達が一斉にエレベーターの中へ入っていった。
次々にお爺さん達が乗っていくから、エレベーターの中はわちゃわちゃ。
おば様が中でもがいているのが見える。
その隙にアタシは奥へと走った。
ここは図書館みたいな場所なのか、たくさんの本と大きなソファーがいくつも置いてあった。
小さなお爺さん達が本を読んだり並べたりしている。
本棚の間を縫って進んでいくと、また見たことのある大きな木の階段があった。
足元を見ると、同じく見覚えのある絨毯。
ここって……
もしかして前の夢に出てきた博物館みたいな所?
夢を思い出しながら辺りをよく見渡した。
前に見た木の階段は下りだった。
今、目の前にある木の階段は上り。
この上には博物館みたいな建物があって、その下の階は図書館なのだろうか。
上ってみたいけど、階段は鉄の門のような物で封鎖されていた。
「先へ進みたいのならこっち」
どこへ行こうか迷っていたら声をかけられた。
振り返ると、大きなメガネをかけた小さいお爺さんがいた。
手招きする方へ行くと、またエレベーターがあった。
さっき乗ってきた銀色のエレベーターとは違って、茶色いオシャレなエレベーターだった。
「あの女に捕まると面倒だから、これに乗って扉の開いた場所で降りなさい。私もどこに着くかはわからないが……とにかく進みなさい」と物凄く適当なお爺さん。
「おーいっ、女が降りたぞ!」
他のお爺さんが叫んだ。
メガネのお爺さんは小走りで茶色いエレベーターに近づくと、扉の横にあるベルを二回鳴らした。
すると、すぐに扉が開いた。
「ほら! 早く今のうちに乗れ乗れ!」
背中を押されて、言われるがまま乗ると扉が閉じた。
エレベーターが上に向ってゆっくりと動き始める。
同時に扉にあるガラス越しから、凄い形相のおば様と杖みたいな棒で応戦しているお爺さん達の姿が見えた。
しゃがみながらギリギリまで様子を見ていたけど、すぐに見えなくなってしまった。
お爺さん達は大丈夫かな。
なぜ助けてくれたんだろう。
アッチノ世界の夢は悪夢も多いけど、不思議と助けてくれる人も多い……。
そんなことを考えていたら、、エレベーターが停まった。
静かに扉が開いて、見えてきたのは夜の森だった。
何か嫌だなぁ。
絶対に怖くなるやつじゃん。
そんな気しかしなくて動けずにいると、突然エレベーターが重量オーバーの時のように鳴り出した。
まるで降りろと言われているみたい。
あまりにうるさいので外へ出ると、ピタッと音は止んで扉が閉まった。
扉が閉まると辺りは更に暗くなって、ベルやボタンがあるのかもわからない。
とにかく前に進んでみよう……。
ビビりながら、暗い中を少しずつ進んでいくと
辺りは暗いけど、また前に来たことのある場所だった。
左側には丘があって、右側には木が並んでいる。
ここは「顔の左消して!」のカメラマンが現れた場所だと思った。
あのオッサンがいないか警戒しながら木の間を通って抜けると、また見覚えのある場所だと思った。
そこは大きな石像達が現れた広場と呼んでいる場所。
ここに繋がるのか!
アッチノ世界の配置が結構明確になってきたかも……。
なんて思って興奮していたら、嫌な音が聴こえてきた。
振り返ると、一体の石像がこちらに向かって走ってくる。
やっぱり夢だからか、前に見た夢を思い出すと似たような状況になる事が多い。
どこに逃げようか右往左往していると――
〝ワンッ〟と犬の鳴き声がした。
足元を見ると、小さな柴犬が座っていた。
アタシと目が合うなり猛ダッシュ!
広場を囲うフェンスが途切れている方へいなくなった。
慌てて追いかけると、細い路地に入って行くのが見えた。
路地を抜けると住宅街みたいな場所に辿り着いたけど、柴犬の姿は見当たらない。
周りに建っている建物は、白っぽい石のような素材でできていた。
そこだけ浮き上がって見えて変な感じがする。
その間には同じ素材の細道があって、緩やかな階段みたいに凸凹と続いていた。
夜だからか異様に静か。
いつもの月明かりのような謎の光が周辺を薄っすらと照らしているけど、それでも暗い。
ここはどこだ?
フラフラ歩いていると――犬の鳴き声がした。
さっきの柴犬だと思って声のする方に曲がると、柴犬が座っていた。
アタシを見るなりまた猛ダッシュ!
追いかけると明るい場所が見えてきた。
暗くてすぐにはわからなかったけど、良く見るとそこは屋根のない洋服屋だった。
屋根がないから家の中の灯りが外に出て、辺りがオレンジ色に光っている。
前に昼間に来た時は店主っぽいお兄さんがいた。
窓から中を覗いてみると、人の影が見える。
そーっと扉を開けて中に入ってみると、お兄さんではなく綺麗な女の人が椅子に座って本を読んでいた。
目が合うと女の人は
「えっ……あらやだ。いらっしゃい。ビックリしたわ。どうやってここに?」と驚いた様子で近づいてきた。
説明しようかと思っていたら――
「キミは商売上手犬なんだねぇ。お散歩ついでにお客さんまで連れてきちゃって」
後ろから声がした。
振り返ると、前にここで会った店主っぽいお兄さんが柴犬を抱っこしてワシャワシャと撫でていた。
「キミは前にも来てくれたよね。こいつが連れてきてくれたから良かったけど、この辺りを一人でうろついたらダメだ。危ないよ」
お兄さんは柴犬に頬ずりしながらアタシを見つめて言った。
「夜は気まぐれで要らないモノまで動き出す。今度来る時は前のように昼間だといいね」
そんな風なことを言われた瞬間、目が覚めた。
今回の夢は映画のように重要な登場人物が多い夢だった。
その中でも屋根のない洋服屋のお兄さんは、アッチノ世界のことを色々と知っている人物だと思った。
そんな夢でした。
別サイト初回掲載日:2011年 03月01日
この夢を見た数日後に友人と話していたら……
「そういえばさ、この間夢に真っ赤な口紅塗ったクルクル頭のオバサンが夢に出てきて、めっちゃ怖かった」と言われて、当時物凄くザワザワした私です。
偶然なのか、そうじゃないのか。
どうなんですかねー🌚
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