見出し画像

HIGH LINE(ハイライン)

ニューヨークに年間440万人を超える利用者・観光客を集める人気の観光スポット=ハイライン(HIGH LINE)がある。さすがにメトロポリタン美術館の610万人には及ばないが、自由の女神は315万人。近代美術館(MOMA)の250万人を上回る人々を集める…それがハイラインだ。

ハイラインは、ニューヨーク市の鉄道ウェストサイド線の支線のうち、マンハッタン34丁目以南の高架貨物線のこと。1980年に最後の列車が走ってからは放置され、治安面からも90年代の後半には解体が決定、スポーツ施設などを中心にした周辺地区も含め再開発が行われる予定だった。

しかしながら、二人の若者が発起人になって、高架橋を公園・遊歩道として再利用しようという案が提唱される。彼らは「フレンズ・オブ・ザ・ハイライン」というグループを立ち上げ、行政などの関係機関への交渉や、グッズのデザイン&販売などのキャンペーンを展開。ついにはニューヨーク市の再開発案撤回を引き出し、実際に高架橋を緑地化。そして、440万人を超える利用者・観光客を集める人気の観光スポットをメイキングした。

画像1

今も、ハイラインは「フレンズ・オブ・ザ・ハイライン」とボランティアたちによって維持管理がされている。でも、日本の公園愛護会とはちょっと違う感じ。「フレンズ・オブ・ザ・ハイライン」はボランティアたちにお礼の手紙を書いたりするし、ボランティアたちはハイラインについての歴史の勉強会などに参加する。…そんなことより、彼らはほんとうに友だちだな。役所のための勤労奉仕じゃないんだ。

この本には、このハイラインというプロジェクトの顛末が記されている。前半部分は主役の2人が交代で登場し、時系列に沿いながら、その出会いとプロジェクトのはじまりから、具体的にどのような形で進めていったのかを語っている。

(この二人の話しっぷりが唯一無二のハイラインなんでね。彼らの行動をノウハウ化して何にも生まれない。ただただ、ああ面白そうだな、行ってみたいなって読めばいいんだと思う)

そして、後半は写真の紹介。現在のハイライン。放置された廃線だった時代のハイライン。そして、ハイラインの隆盛によって地価が上がったという周辺の開発状況も記録されている。

まさに「私立の公共政策」。リスペクトだな。

何より臥薪嘗胆じゃなく、楽しそうなのがいい。

ジョシュア・デイヴィッド/ロバート・ハモンド 著 和田美樹訳
「HIGH LINE アート、市民、ボランティアが立ち上がるニューヨーク流都市再生の物語」アメリカン・ブック&シネマ 刊

この記事が参加している募集