医学研究の闇を暴く:ある教授の20年に及ぶ真実の探求
~システマティックレビューの愛と裏切りの物語~
プロローグ:2024年、医学界を揺るがす告発
灰色の冬空が広がる2024年初春、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の一室で、私はイアン・ロバーツ教授へのインタビューを行っていました。窓の外では小雨が降り続き、部屋の中は重苦しい空気に包まれています。
「医学研究の世界は、今、重大な危機に直面しています」
教授は静かに、しかし確信に満ちた口調でそう切り出しました。その瞳には、20年に及ぶ研究生活で目の当たりにしてきた真実への強い覚悟が宿っていました。
「私たちが信じてきた『エビデンス』の多くは、実は砂上の楼閣だったのかもしれません」
この発言は、現代医学の根幹を揺るがすものでした。なぜなら、私たちの医療の多くは、「エビデンスに基づく医療」という概念の上に成り立っているからです。
振り返る2019年の衝撃的講演
この話の発端は、2019年12月25日の京都大学での講演にまで遡ります。その日、ロバーツ教授は自身の所属大学でさえ「あまりにも挑戦的」として発表を制限されていた内容を、日本の研究者たちの前で初めて包み隠さず語ったのです。
講演の核心は、世界保健機関(WHO)を始めとする国際機関が膨大な資金を投じて進めてきた「グローバルな疾病負担研究」への根本的な批判でした。
「この研究プロジェクトは完全な時間の無駄です。世界はこの研究が行われなかった方が良かったでしょう」
当時、この発言は医学界に大きな波紋を投げかけました。しかし、それは氷山の一角に過ぎませんでした。
第1章:愛と探求の始まり ―コクラン共同計画との運命的な出会い―
1993年、医学研究に革命が起きた
1993年、医学研究の世界で一つの革命が起ころうとしていました。その中心にあったのが、コクラン共同計画(The Cochrane Collaboration)という国際的な研究組織の誕生です。
この組織の理念は、一見してシンプルでした。
「世界中の臨床試験の結果を系統的に収集・分析することで、最も信頼できる医学的根拠を作り出す」
当時、まだ30代前半だったロバーツ教授は、この理念に深く共鳴します。
理想への情熱
「あの頃の私の気持ちを説明するなら、まさに恋に落ちたような状態でした」
教授は、当時を振り返りながら穏やかな笑みを浮かべます。
「恋をすると、相手のすべてが完璧に見えますよね。同じ音楽の趣味を持っていることも、同じ食べ物が好きなことも、すべてが運命的に思えるんです」
その頃の教授にとって、コクラン共同計画の掲げる理想は、まさに医学研究の聖杯のように思えました。疑いを持つことなど、考えもしなかったのです。
情熱の日々:1993-2003年
以後10年間、教授はコクラン共同計画の活動に没頭します。世界中の医学雑誌を丹念に調べ、見落とされている臨床試験を探し出す。それは、まるで考古学者が失われた文明の痕跡を探すような、地道な作業でした。
「クロアチアの外科雑誌を手作業で確認していた時のことを今でも鮮明に覚えています。新しい臨床試験を見つけた時の興奮は、言葉では言い表せないものでした」
教授は、世界中の片隅に埋もれている臨床試験のデータを掘り起こし、それらを系統的にまとめ上げていきました。一つ一つの発見が、より良い医療への確かな一歩に思えたのです。
第2章:最初の疑念 ―愛に潜む影―
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