「夏の騎士(百田尚樹著)」を読む
少し前の作品ですが、
「夏の騎士 (百田尚樹著)」読了
ぐだぐだの雑文です
本作の内容には、ほぼ触れません
内容や解説は、良識ある方のレビューをお読み下さい
何かとお騒がせの作家ですが、個人的には作品に変な偏りが無く面白ければそれでいいと思っている
難しいことはよくわからないので、
この作家の映像化された作品を中心に何冊か読ませて頂いているが、
『「黄金のバンタム」を破った男』には驚愕した
ボクシングをテーマにしたノンフィクションでは沢木耕太郎の作品があるが、それとは全く違った観点から書かれている
相当な取材をしたのだろう、あらゆる角度から関係事項を徹底して追いかけ、そしてその莫大な素材を纏め魅力的な文章で組み立てている、
この発想力、洞察力と筆力があるヒトが作家なんだと感銘を受けた
(この作品の原点となった『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかった(増田俊也著)』は少し展開のテンポが合わず残念ながら途中で挫折した)
そんな実力ある作家の書いた本作
『夏の騎士』
ワタシはいい歳をしたおっさんなので、本来ならば絶対に手にも取らないジャンルではあるが、色々と偶然が重なり手もとに回ってきた
ただし、ワタシの場合は、この偶然から胸踊るような冒険は起こらず、いつものように静かに読了しただけである
読了後、久しぶりに、自分でも驚くほど爽快感があった
この作家は、ワタシより年長者ではあるが同じ昭和の後半を生きている
今のように、あらゆる情報が瞬時に入手出来るのこともなく、自分を取り巻く狭い世界の中で生きていた時代である
戦争、復興という大きなうねりが終わり、高度経済成長期の総中流社会化・ベビーブームが落ち着いた時期に生誕し、学生運動など全く縁がなくオリンピックも万博も体感せず、バブルは堪能する前に終わり、
氷河期を淡々と生き、24時間闘えますかと揶揄されたアナログ世代である
生きていく危機感や時代を変えていく使命に直面することなく、何かに情熱を持つ高揚感さえ抱かなかった
ゆるやかな時間の中で目標と目的が見つけられず、ふわっと生きてきた世代である
言い訳と他責がうまい世代でもある(完全なる個人的見解です)
その中で「やれば出来る」と言われ続けたが、何もやらずに言い訳ばかりしていた、
「何のためにやるか」という大義名分が見い出せなかったからと
本作はそんなヒト(ワタシ)が、その時代を回顧したとき、こんな経験をしたかった、と切望する世界である
その時の、その環境での自己の立ち位置、心許せる友、クラスメート、憧れの異性、そして事件や冒険、
この作品は、想像し憧れるもの全てが網羅されている
それが、想像を遥かに超え躍動する
このドキドキ感とわくわく感なんだよね
実際は、悲しいほど何も無く、苛立たしいほど何もしなかった少年時代の自分がいるのに
本作は、この世代のヒトの懐古や憧憬、ましてや疑似体験ではダメだと思う
いつもクダを巻いて後悔ばかりしているおっさんにならないように、
出来ようが出来まいが、まずはじめること、やることが大事だよ、
ってことを真摯に受け止めてくれる少年に読んでもらうべき作品であり、
取り巻く環境は違えど、現在進行形のメッセージであってもらいたい、
少年がエクスガリバーを持って時代と対峙できる「騎士」になるために
などど、思う
そういう意味では、ノスタルジックな位置付けの『スタンド・バイ・ミー』を宣伝文句にするのは如何なものだろう
結局、ぐだぐだ文句言っているが、
改めてこの作品に啓発されたおっさんとして、何か出来ることがないか考える
「三匹のおっさん(有村浩著)」(読んでいない)や「龍三のと七人の子分たち(北野武監督)」(観ていない)を参考にして、今度こそ、今しか出来ないことをはじめよう、
やればできるんじゃないかな、と思いつつ、
既に今年の暑い夏は終わろうとしている
(参考まで)
個人的課題図書、映画
参考