結末はまだ知りたくない
小学生の頃のわたしにとって、物語はめでたしめでたし、で終わるものだった。
悪いやつは最後に倒されるし、頑張った人は報われる。だから、あの時観た映画は子どもだったわたしの心に強く印象に残ったのだと思う。
確か、学校か村の運動会のあった日だった。家に帰ると、たまたまテレビで外国の映画をやっていた。夕方。お夕飯まではまだ時間がある。
することがなかったから、わたしはぼんやりと映画を観ていた。
ちょうど、わたしと同じくらいの年齢の男の子が主人公だった。
彼は、どうやら妹の運動靴をダメにしてしまったようだ。
彼の家は、おそらくあまり裕福ではなかった。
妹に新しい靴を買ってあげることはできない。
あるとき、男の子は町のマラソン大会の景品が、運動靴だということを知る。
妹のために、彼はマラソン大会に出ることを決めた。
残念ながら、映画の内容は、ほとんど覚えていない。ただ、主人公の男の子が、外国の土っぽい道を一生懸命に走るシーンだけは、印象に残っている。
わたしは、当然、彼はマラソン大会で良い成績を納め、運動靴を手にすることができるものだと思っていた。だって、妹のために一生懸命練習していたんだから。
でも、彼は、運動靴をもらえなかったのだ。
なんで?妹のために、この子一生懸命走ったじゃん。わたしにも妹がいるから、彼のがっくり度合いはよくわかる。彼が運動靴を手にすることができなかったことが、全然納得できなかった。
映画を最後まで観たのか、家族の誰かが途中でチャンネルを変えたのかは覚えていない。
ただ、物語の展開を受け入れられなかったわたしは、翌日仲良しの友だちに、映画の話をした記憶がある。だれかに聞いてもらわないと消化できないくらい、あのシーンはわたしの心に強く残った。
大人になって、レンタルショップで、あの時の映画を見つけた。「運動靴と赤い金魚」
そうそう、そんなタイトルだった。
懐かしくなって、パッケージを手にとるが、結局借りなかった。
あの後、男の子はどうなったんだっけ。
結局、運動靴を妹にプレゼントできたんだっけ。
答え合わせをしたいような気もする。
だけど、大人になったわたしは、イマイチ理解できない展開の物語でも、「よくわかんない」「納得できない」と正直に言えなくなってしまったように思う。
理解できないわたしの感性の問題なのかな、面白いって感じた人が不快に思わないかな。
自分の感想は自分のものなのに、余計なことばかり考えて、正解っぽいものを探してしまうのだ。
だから、あの映画だけは、素直に「納得できない!なんで?」と思った気持ちごと、残しておきたいな、と思っている。
いつか懐かしくなって、再び観る日が来るかもしれない。けれど、いまはまだ結末を知らないままでいたい。