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教科書で出会った物語「きつねの窓」と「鳥」

これまで様々な企画のご案内を目にしてきましたが、書こうと思ったのは初めてです。なぜなら、心の奥に眠る教科書で出会ったお話が、わたしにもたくさんあるからです。

わたしは小学校教師なのですが、あえて子ども時代の出会いについて書いてみようと思います☺️


数々思い浮かぶその中で、わたしの心に最も残っているものは、安房直子さん作「きつねの窓」です。

あらすじ「きつねの窓」

主人公のぼくは猟の途中で、一面の桔梗の花畑に迷い込みました。そこで1匹の白い子ぎつねに出会います。追いかけていくうちに、なんでも青に染めることができる、染め物やにたどり着くのです。おそらくきつねが化けているのでしょう。ぼくは、勧められるままに、指を染めてみました。人差し指と親指を染めて、窓のようにかざすと、中に懐かしい風景が見えるのです。今ではもう、会うことのできない誰かのような。
店員のきつねはそのお代として、鉄砲を求めました。ぼくは染めた指があるなら、鉄砲も惜しくはないと思いました。
家に帰ってぼくはうっかり、いつもの通り手を洗ってしまったのです。その後いくら探しても、桔梗畑ときつねに会うことはありませんでした。

きつねの窓


素敵なお話なのです。なのに、読んだ当時はそれほど強く心に響いたわけではなかったのです。
「きつねの窓」を深く読んでみようと思ったのは、中学生になり、国語の授業で別のお話を学んだ後のことでした。

それは同じく安房直子さん作の「鳥」でした。
耳の中の秘密を取り出さなければならない少女のストーリーは、幸せな結末を迎えたはずなのに、もの悲しい余韻を残していきました。
そしてそれは、「きつねの窓」にも通じる青色の気配でもありました。

そう感じてから改めて、「きつねの窓」を読み直してみたのです。

きつねの窓

その世界は、青と白に覆われていました。読み進むほど不思議な空間に引き込まれ、ぼくの心象風景へ同化していきました。

指を染めることと引き換えに鉄砲を求めた、染物やに扮したきつねはどんな思いだったのだろう。

商売道具でもある鉄砲を手放してまで、見たかった懐かしい風景とは、ぼくにとってどれだけの価値があるものなのだろうか。

ただ手を洗ってしまっただけなのに、鉄砲も思い出の風景も失ってしまったぼくの思いは…。

小学生の時には辿り着けなかったことに、中学生になって初めて巡り合った気がしました。


心に残る物語

今でも安房直子さんのお話はとても好きです。
ただ、「鳥」の本は、今はまだ見つけることができていないのです。
これを機会に、本気で探してみようと思います。

国語の学習で学んだお話が、数十年経っても心にしっかりと存在している。そしてそれを家族共通の話題にすることもできる。
国語の教材として長く続く物語があるということは、とても素晴らしいことだと思います。

今回このような企画を立てて下さったメディアパル様、ありがとうございました。
そしてきっかけを下さったhikariさん✨
ありがとうございました😊

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