動画 グリーンスリーブスをリュートで弾いています
リュート奏者の櫻田亨です。リュートを弾いて30年、古楽の本場、オランダに7年在住していました。現在は、埼玉を拠点にコンサートやレッスンをしたり、全国各地のでリュートセミナーなども開催したりしています。
リュートのサロンコンサートにて
リュートは小さなサロンでのコンサートが似合います。お客さんに曲目や楽器のこと、日々の想いなどを語りかけながら、演奏するのが好きです。質問なども受けたりします。
「繊細な音色の楽器ですね。私たちも知っている曲も1曲、お願いしま~す。モーツァルトとか。」
ルネサンスやバロック時代の古楽器で古典派やロマン派の音楽をというのが、一番難しいかもしれません。リュートが人気があったのは400年前です。日本では「関ヶ原の戦い」の辺りですね。その当時のヨーロッパの曲で皆さんが知っているとなると
「このリュートで演奏できる日本でもおなじみの曲ですか・・・えーと、ございます。グリーンスリーブスなどいかがでしょうか」
これなら日本でも聞いたことがあるのではないでしょうか。
「昔、うちの電話の待ち受けで使っていたよ。」
日本語の歌詞もついているので日本の曲と思っている人いるようでした。
グリーンスリーブスの詩を味わう
“訪れた春の日よ 光あふれて
待ち続けた花は咲き 聞こえる鳥の声
心に目覚めゆく 愛の夢淡く
なつかしふるさとの 便りも楽しい“
このメロディから受ける印象は岩谷時子作詞がぴったりです。日本人の感性ですね。
“恋人つれなく 私を見捨てた
深くも愛した 恋しきその人
グリーンスリーブス“
門馬直衛の訳詞はわかりやすくて、原曲に近い感じです。
“緑の小そでよ 愛のかたみと
はるけき想い出 わが胸に
グリーンスリーブス“
三木おさむ訳詞は美しい日本語が堪能できます。素敵です。
Alas, my love, you do me wrong,
To cast me off discourteously.
And I have loved you so long,
Delighting in your company.
私が訳すと
ああ、私の愛する人、あなたは私に酷いことをするのね。
私を見捨てるの 非情にも
私はあなたを愛していたのに こんなにも長く
喜びとは あなたのお側にいることなのに
(訳:サクラダ トオル)
まったく詩的ではありませんが、この訳し方が私にとっては理解しやすく、歌に寄り添いリュートで伴奏することができます。
シェイクスピア劇の音楽
リュートマニア ★☆☆
グリーンスリーブスはシェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」第2幕第1場に出てきます。フォードの細君が大酒のみフォルスタッフに立腹し罵ります。
「あの男は口と腹では大違い、讃美歌と流行歌ほど違う」
そこで歌われるのがグリーンスリーブス。残念ながら悪い例のほうとして。
そのまま訳すと「緑の小袖」。当時、この緑には野外で愛し合った時に女性の服に着く草の汚れという性的なイメージもあったようです。
あるコンサートで私が聞いた解説に、
「娼婦が別れた男の前で “『緑の小袖』これが「『極上のペチコート』『心の代わりの宝石』とあなたの為に費やしたのに。” と外していく歌です。」
ものすごく衝撃的な解釈ですね。本当かな?
この流行歌がのちにクリスマスキャロルとして歌詞をつけられ歌われます。
“こはいかなる子であるか
マリア様のひざにて眠りぬ
天使が祝いのあいさつ送り
羊飼いらの眺めしときに“
のちの世に讃美歌として歌われるとは、「くだらない流行歌」という評価を与えたシェイクスピアも驚いたことでしょう。
グリーンスリーブスの起源は?
これだけ有名な曲ですが、その起源は厳密にはわかっていません。エリザベス朝のころイングランドとスコットランドの境のあたりで歌われた曲ともいわれています。1580年にロンドンの書籍組合の記録に
物語歌 A New Northern Dittye of the Lady Greene Sleeves
として登録されていますが、その実際の印刷文は見つかっていないようです。1600年の初頭にF・カッティングの曲集に掲載されているリュートのための「グリーンスリーブスによる変奏曲」が古い証拠文献の一つと言えるかもしれません。
グリーンスリーブスは櫻田亨のCD|やすらぎのガット|に収録されています。
櫻田亨 | おやすみリュート
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