題名読書感想文:57 題名!読書感想文
途中で読むのをやめてしまった本がたくさんあるんです。そこで思いました。題名なら読んでも挫折なんてしない。そんな極めて後ろ向きな理由で始めたのが、題名読書感想文です。
今回のテーマは「!」です。「感嘆符」、または「エクスクラメーションマーク」と呼ばれる記号でございます。驚きや危険を表現したり、何かを強調する場合など、割と自由に使われる記号でございます。
たった1文字で何かを強調できるのが「!」でございます。だから、題名のように、なるべく少ない文字数で他より目立たせる必要があるものとは相性がいいと言えます。もちろん、題名にはしばしば用いられています。最もシンプルな形は単語の後ろにくっつけるパターンでしょう。例えば、「スマッシュ!」なんかがそうです。
「スマッシュ!」ならば「!」のつく必然性が感じられます。作者もそれを見越して「!」をくっつけたに違いない。しかし、一般的には「!」をくっつけない、何なら「!」を積極的に抜く方向性になりがちな単語でも「!」をくっつけた題名が稀に見つかります。例えば、「葬儀!」です。
シンプルゆえに独特さが際立っています。何をそんな葬儀と叫ぶのか。もうちょっと落ち着いてくださいと、著者にコップ1杯の水でも飲ませたくなる題名です。
ちなみに原題は「Funébre!」で、フランス語で「葬儀」を意味します。このシュールさは直訳した結果、生じたわけですね。著者もフランス語圏の方に違いない。こうなると、文化の違いを可能性に入れる必要があります。つまり、著者の生活圏では、古来より「葬儀!」と叫ぶ文化が根付いているのではないかと。
「!」をつける必然性が一見なさそうな「葬儀!」があれば、「!」をつける必然性があるのかないのか分からない題名もあります。それが「ゾイア!」です。
副題に「ゾイア・ホーン回顧録」とある通り、これはゾイアさんの回顧録であり、だから「ゾイア!」なんです。祭りの掛け声ではないんです。
これでゾイアの謎は解けましたが、回顧録の題名として、自分の名前に「!」をくっつけるパターンは初めて見ました。試しにアマゾンで回顧録をいろいろ検索してみたんですが、その手の題名は「ゾイア!」だけです。回顧録の題名としてはかなり珍しいタイプと言えましょう。
もちろん、もっと複雑な文章に「!」をくっつけるパターンもございます。例えば、「「ジョブ・クラフティング」で始めよう 働きがい改革・自分発!」です。
「」や・を使い、副題も活用した末の「!」でございます。このように、長めの文章のラストに「!」を入れて締める形はしばしば見られます。
ただし、「!」の必然性が不思議なことになっているのは相変わらずです。人間、「葬儀!」と叫ぶことも滅多にありませんが、「自分発!」と叫ぶことも滅多にありません。何なら「叫んでいいの?」と思う人もいるでしょう。当然、「別に普通じゃない?」と考える方もいらっしゃるでしょう。議論を呼ぶ「!」なわけです。
更に議論を呼ぶゾーンへと参ります。続いては「はい!セラピー」です。
この場合の「!」は必然性がありそうです。「はい!」という形は割と用いられる。少なくとも葬儀よりはバリバリ使います。「はい!」で高揚しておきながら、「セラピー」で急に冷静さを取り戻す点は気になりますが、必然性は申し分ない。
ただ、なんか既視感がある題名だったんです。少し考えて理由が分かりました。一発ギャグみたいなんです。もしくは秘密道具を出すドラえもんですね。どちらも「はい!」と言ってから、何か言う形です。
意外なところで、意外な共通点を見出すものです。何なら、「はい」を使う一発ギャグはドラえもんから着想を得た可能性も考えられます。芸人にとって、ドラえもんは兄さんみたいな存在なのかもしれませんね。実際に裏で「ドラ兄さん」とか呼んでいるのかもしれません。
ところで、「!」は誰かへ強いメッセージを届ける際にも使われがちです。例えば、「アリ!なんであんたはそうなのか」は、その手法を用いた題名です。
アリに対して「なんであんたはそうなのか」と訴えています。そういう形にすることで、アリの本であることを暗に示すと共に、人の目を引くように仕向けていると考えられます。
この題名の場合、「!」の使い方に違和感を覚える方は少ないでしょう。アリに向かって強めに訴える、そのための「!」です。しかし、この世の中は不思議な「!」が後を絶ちません。例えば、「鳥!驚異の知能」です。
「葬儀!」よりはまだ日常で使われそうな「鳥!」でございますけれども、副題の「驚異の知能」のお陰で不思議な題名になってしまっています。「鳥!」と強めに呼んでおきながら、振り向いたところを「驚異の知能」と言ってスカすんです。いや、スカしてるかどうかも分からない。「はい!セラピー」ばりの、高揚からの冷静でございますけれども、「はい!セラピー」より特殊な文章です。
似たような題名は他にもあります。例えば、「クマムシ?! 小さな怪物」です。
先ほどの「鳥!」と構造は近いですが、こちらは「クマムシ?!」です。半ば混乱しながら訴えるも、副題に来た頃には「小さな怪物」と冷静さを取り戻しています。
別に「クマムシ!」でもよかったとは思うんです。それなのにどうして「?」までくっつけたのでしょう。困惑を題名に出したかったんでしょうか。いずれにしろ、独特な題名になっています。
「アリ」も「鳥」も「クマムシ」も、主題と副題の間に「!」が入っていましたけれども、題名の真ん中をぶった切るように入り込む「!」もございます。それが「世界すご!ペディア」です。
以前に「〇〇ペディア」という題名を集めてご紹介しましたけれども、この本もまた同様でしょう。つまり、「百科事典的な本ですよ」という意味で「ペディア」をくっつけた形です。
しかし、ペディアの前後を「!」がぶった切ってるんです。題名を断絶していると言っていい。真ん中をバッサリいってでも「これくらいすごいところを集めてるんですよ」と訴えたかったのだと思われます。
今回のラストはこちら、「熊!に出会った襲われた」です。
道端で熊に出会えばそりゃビビる。「!」で題名をぶった切るくらい。
よく見ると「出会った襲われた」も慌ててる感じが満載です。文法的にどうかは分かりませんが、心情的には物凄くよく分かる題名です。