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「西日本新聞」の「移民」論に学ぶ(1)

▼深刻な社会問題について、ブロック紙や県紙が優れた記事を書く場合が多い。

「ジャーナリズム」2019年5月号が、「移民社会へ」という特集を組んでいた。西日本新聞記者の坂本信博氏が書いたルポを紹介する。西日本新聞の連載「新移民時代」について。

▼2016年9月、社会部の同僚が「福岡市の一角に、ネパール人の若者たちが身を寄せ合って暮らすリトルカトマンズがあるらしい。『国際通り』って呼ぶ人もいるそうだ」と口にしたのが連載のきっかけだったそうだ。

法務省入国管理局にきいてみると、福岡県の、ネパール人の増加率は、10年間で19倍も増えていた。

▼このルポで紹介された紙面の見出しは、〈出稼ぎ留学生(上)/暮らしの隣「移民」100万人/工場バス、アジア系続々〉

取材班は、ネパール人の若者がバイト先に向かうバスに乗る。バイト先は、たとえばコンビニ弁当の工場。〈バイトを掛け持ちして月25万円稼ぐ若者がいた。深夜はその工場で働き、昼間はコンビニのレジで働いて、自分が作った冷やしうどんを売っているという冗談のような本当の話もあった。〉

▼彼らはどんどん取材を進める。

〈バスを追い、内部資料を入手するような取材をした理由は、運送会社もコンビニも、多数の留学生が働いているにもかかわらず取材を断ってきたからだ。多くの留学生が入管難民法に基づく留学生の就労制限(原則週28時間以内)を超えて働いているのを隠すためのようだった。

 しかし、日本の若者が敬遠するそれらの職場で、留学生たちが欠かせぬ戦力になっている実態は、もはや隠しようもない段階にまで来ていた。〉

▼運送会社もコンビニも、法律違反を見て見ぬふり。こうなると、いまの日本社会が「移民」をどう扱っているのかのレベルを考えると、バイトしている人の境遇が想像つく。

ベトナム人の借金漬けの実態が描かれる。それは「現代の奴隷労働」といわれる。

ベトナムから来日した20代の男性は「僕は動物じゃない」と記者に訴えた。

受け入れ先の建設会社で毎日のように怒鳴られ、殴られた。日本語がよく分からず、理解できたのが「ばか」「国に帰れ」。

日本人の同僚からカッターナイフを投げつけられたこともあったという。〉(つづく)

(2019年6月18日)

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