ヘイトとウソと外国と(1)
▼フェイクニュースについてのニュースがとても多くなってきた。そのなかの一つ。2019年4月23日付の朝日新聞夕刊から。
〈現場へ! フェイクニュース 2/ヘイトと結びつくウソ〉(松本一弥)
ハーバード大学のショレンスタインセンターで、〈テクノロジーと社会変化について調査するプロブラムのディレクターをしている〉ジョーン・ドノバン氏の研究。
彼が調べているのは〈SNSや動画配信サイトを駆使しつつ、過激な人種差別的表現を盛り込んだメッセージを拡散させて自分たちの運動を推し進めようとしているナショナリストたちの動向だ。
ナショナリストの膨大な情報は、ニューヨークにいる15人のスタッフやドノバンの周囲の人々を軸に、多くの仲間のネットワークの力を総結集して徹底的に調べている。このため「ものすごい時間と労力がかかっている」という。
「過去5年ほどのナショナリストたちの動きを観察してみると、一つの行動パターンがはっきり見えてきました」とドノバン。
過激なヘイト表現を大量に盛り込んだフェイクニュースや陰謀論をでっちあげたナショナリストたちは、最初は「市場調査」のようにいくつかの「ネタ」をネット上に出して人々の反応をチェック。「これはウケがいい」と思ったら、今度はそれを自分たちのブログに載せ、「もっといけるぞ」と判断したら、さらに動画配信サイトや地上波のテレビなどを通じて大量拡散させているという。〉
▼フェイクで広告費を稼ぐ連中は、ゲーム感覚で、お金が手に入って、ぼろい商売だという感覚なのだろう。彼らは、人類の歴史上、誰も経験したことのない経験を生み出している。興奮もともなう日々だろう。その行き先はどこだろうと、今の稼ぎとは関係ないわけだ。
ドノバン氏の研究は、フェイクニュースの高い「生産性」をどう生み出すのかを、「タテ型」の視線で分析したものだが、その影響する範囲はひとつの国を軽く超えることを「ヨコ型」の視線で分析した研究もある。
両方組み合わせると、眩暈(めまい)がしそうな世界が浮かび上がる。(つづく)
(2019年6月21日)