頭を冷やせ!と言われたら、本当に頭を冷やすと損する理由。
ハイライト
・頭を冷やすと脳機能が著しく低下する
・頭を冷やすとメンタル状態が悪化して怒りが増す
・5分でメンタルを改善して頭は冷やせる
頭を冷やせ!と言われたら、本当に頭を冷やすと損
頭を冷やす:
血がのぼった頭を冷やす。冷静になる。
「 - ・して、もう一度考え直せ」
三省堂 大辞林 第三版より
「頭を冷やせ!」は、怒りや興奮、不安、考えすぎによって、冷静な状態が保てなくなった状態になった時に使う言葉。
興奮してくると体が熱を持って温かくなり、それがエスカレートしていくと、体は目に見えて熱を持っていきます。そんな状態をどうにかするためのことわざが「頭を冷やす」ですよね。
でも、科学的な実験の結果を見てみると、頭を実際に冷やしてしまうと怒りが増したり、いつもと違った不可解な行動をとってしまうので、むしろ損。
・実際に頭を冷やすとどんな効果があるの?
→ 気分や認知機能に与える影響は?
・んじゃー、頭冷やさずにどうすりゃいいの?
2つのポイントを根拠に基づいて解決していきましょう!
■体温を下げると脳機能はめちゃくちゃ落ちる
「頭が冷えた」=冷静になって何かを考え直すことができる
とすると
「頭が冷える」 → 冷静 → 脳機能は向上する
頭を冷やすためには、冷水・涼しい空気・氷・送風などいくつかの手段をとるハズです。その行動の結果必ず起こるのは”体温の低下”。
体温が低下すると脳機能はどう変化するのか?
それを明らかにするのにピッタリな研究が2012年にケント州立大学で行われていました。この研究では、体温の低下によって人間の脳がどんな影響を受けるのか?が調べられています。
①:健康な20代前半の10人の男性を募集
②:25℃の部屋で脳機能テスト
③:10℃の部屋で十分に体温が冷えた後脳機能テスト
④:25℃の部屋で体を1時間温めてから脳機能テスト
このような研究が行われました。
頭を冷やすと脳機能が向上するなら、③の冷えた状態でのテストが最も高い点数を獲得できるハズです。
しかし、結果は残念なものでした。
■結果
・脳の反応時間:冷えた状態の方が悪い
・言語機能テスト:冷えた状態の方が悪い
・数値能力テスト:冷えた状態の方が悪い
脳機能は、完全に冷えた状態の方が悪いという結果。
さらに、冷えた後に1時間ほど回復時間をとっても、この結果は25℃の時の状態には戻りませんでした。
実験中では、3時間ほど回復時間をとると大分元通りになることが示されていますが、「ちょっと頭冷やしてくるわ~」から3時間もかかるなら無意味。というかデメリットの方が大きいですよね。
したがって、「頭を冷やす」ために体温が冷えるようなことをやらかしてしまうと、脳機能は著しく低下してしまいます。
頭に血がのぼった状態では正しい判断ができませんが、残念ながら体温を冷やすようなことをしてもムダということです。ちゃんちゃん。
では、次は感情面を見ていきましょう。
■体温が下がると寒さに震えるだけでなく、怒りに震える状態に。
「頭が冷えた」=冷静になって気分に流されない状態になる
とすると
「頭が冷える」 → 冷静 → メンタルが安定
では、体温変化がメンタルに与える影響を調べる研究が2009年にAerospace Medical Association誌にて公開されているので、この研究をもとに考えてみましょう。
①:21~23℃の状態(普通)でメンタルテストを受けてもらう
②:10℃の状態(冷)でメンタルテストを受けてもらう
■結果
・うつ傾向ポイントが1.57倍にアップ!
・怒りポイントが1.2倍にアップ!
・元気が20%ダウン!
つまり、体温が冷えると脳機能が落ちるだけでなく、メンタルの状況も最悪になってしまいます。したがって、「頭を冷やせ!」と言われたら、体温を冷やすような行動はとるべきではありません。
「頭を冷やせ!」=「体冷やしちゃダメ!」です。
んじゃ、結局最適な温度ってどのくらいなのよ?
■最適な温度は22~25℃
2007年のオウル大学の研究によると、冬になると季節関連の死亡率が急激に上昇することが示されています。14℃以下の環境では寒さ関連の死が非常に増えてしまいます。
一方、22℃~25℃の環境では死亡率が最低になることが示されており、心疾患や呼吸器疾患のリスクは顕著に低下します。
したがって、脳やメンタルに関する機能も22~25℃程度にしておくのが一番ベターな選択。「頭を冷やせ!」と言われても、22℃以下の場所に行く必要はありません。
じゃあ、頭を冷やしたいときどうすりゃいいの?
■なんだかんだ自然が最強
「頭を冷やせ!」と言われるような状況は、メンタルにダメージを受け、冷静に状況判断ができない状況です。したがって、メンタル状態を改善することができれば、「頭を冷やした」効果が得られます。
2010年に過去の10の研究をまとめ上げたメタ分析がEnviron. Sci. Technol誌に公開されています。この研究では、「メンタルヘルスには自然が圧倒的に効く」という結果が示されました。
したがって、自然環境を使うことはとても良いアイデアです。
・ウォーキング
・サイクリング
・ガーデニング
・ボート
・農業体験
・水遊び
例えば、こんな自然との戯れをすると、メンタルストレスが減り、気分障害が圧倒的に改善することが示されています。行く場所やアクティビティの時間や強度についても詳細に調べ上げられているので、その情報もシェアしておきます!
■場所
水がある場所 > 森林 > 野生動物の住処 > 村、農場 > 都市部の緑地
■時間
5分 > 1日 >半日 > 10-60分
■強度
軽い運動 > 激しい運動 > 軽い運動
意外なのは時間!5分程度のかる~い自然との接触が最もメンタル状態を回復する手段なのです。しかも、運動強度は軽くてもOK。かるく歩くだけで十分。
都市部の緑地はこの中では最低の効果ですが、確実にメンタルを改善する効果はあります。ちょっくら中庭行ってくる!でも十分メンタルは改善するのです。噴水など水がある場所だと最高かもしれません。
さらに、5分という時間は冬の時期には適切な時間です。
たった5分しかいなければ、体の深部体温が冷える前に温かいところに行くことができます。したがって、脳機能が低下する前に室温に戻れるのです。
体が冷え切ってしまうと、脳機能が元に戻るのは時間がかかりますから、
「しっかり厚着をして一瞬で戻ってくる。」
これが脳機能を維持しつつメンタルを回復させる、最強の「頭を冷やせ!」
なのかもしれません。
おしまい
このnoteは、世界中の論文を読み漁ることが趣味の私が、普段の生活や健康、美容などについて、根拠に基づいた意思決定をするための知識を提供していくnoteです。アナタの時間を、もっと楽しいことや自分の興味のあることに使うための情報を集めて書いていきます!
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引用
Muller, Matthew D., et al. "Acute cold exposure and cognitive function: evidence for sustained impairment." Ergonomics 55.7 (2012): 792-798.
Lieberman, Harris R., John W. Castellani, and Andrew J. Young. "Cognitive function and mood during acute cold stress after extended military training and recovery." Aviation, space, and environmental medicine 80.7 (2009): 629-636.
Mäkinen, Tiina M. "Human cold exposure, adaptation, and performance in high latitude environments." American Journal of Human Biology: The Official Journal of the Human Biology Association 19.2 (2007): 155-164.
Barton, Jo, and Jules Pretty. "What is the best dose of nature and green exercise for improving mental health? A multi-study analysis." Environmental science & technology 44.10 (2010): 3947-3955.
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