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桶屋雑記(第1期)

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基本人との関わり方とか小説の話しかしないマガジンです。 毎日更新します。たまに進捗報告になります。
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#文章

仕事の帰り際、秋の風が心地よくて胸が苦しかった。

仕事の帰り際、秋の風が心地よくて胸が苦しかった。

退勤してから浴びた秋の風の匂いがなぜか、懐かしくなって胸が苦しかった。東京と地元を行ったり来たりする秋口。残暑は夏の末日に殺されてしまった。

マスク越しの呼吸は息苦しい。
けれど、不織布越しの涼しい空気は喉を潤した。

灰色都会の空気には、山奥のような美味しさは感じないけど、なんだかやけに澄んでいる気がした。
空気を吸って吐いて、ただそれだけの生命活動が心地よいのは、単に暑さが和らいだから、なの

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私の頭に『モクモク』がやってきた。

家の狭い自室で仕事をしていると、時折モクモクが心臓に針をさす。
その痛みのせいで、ため息が増えてしまうのが最近の悩みのタネだ。

私が『モクモク』と呼んでいるそいつは、芥川龍之介なら、「将来に対する唯ぼんやりした不安」と訳すだろう。絶望だとちょっと過激かなって思う。だから、私は珍妙なそいつに『モクモク』と名付けた。お風呂に入りながら、ふと頭に浮かんだのが『モクモク』だった。湯気みたいだけどさっぱり

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原稿に詰まった。文章の書き方を振り返った。

原稿に詰まった。文章の書き方を振り返った。

書いている原稿が詰まって丸一日悶々としていた。
原稿自体は3000字ほど進んだが、いかんせん小説じゃないので進捗がすこぶる悪い。
あと1日か2日で書き上げたら、小説に取り掛かりたい。

小説と小説じゃない文章の書き方は違う。根本的な文章作法は同じだが、構成の練り方が違う。
私は基本、理解しやすい文章を作るようにしている。巧みな比喩が使える自信はないので、気持ちいい感覚で使ってみた喩えを、読み返して

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夏は死んだ。季節と言葉と思考は巡り、遠かった他人と自分の距離は少しずつ近づいている。

夏は死んだ。季節と言葉と思考は巡り、遠かった他人と自分の距離は少しずつ近づいている。

9月になって一気に冷え込んだ。夏は死んだらしい。
唐突な訃報に、先週と変わらず半袖のポロシャツで出勤する私は肩を縮ませるばかりだった。
肩にずっしりと夏の死体がもたれかかってくるからか、身体が少しばかり重い。
体調管理に気をつけたいね。今日は早めに寝ることにした。

夏が終われば秋が来て、秋は一呼吸のうちに冬になる。
緑と燦々太陽色の街並みを、刷毛を持った木枯らしが銀色に塗りたくる。
冬まではまだ

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