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おいしさのための曖昧さ 【チャーシュー】

ねぎを買ったら青いところまで無駄にせず使いたいとは思っているものの、大抵白いところがほしくて買うから考えるのがいつも後回しになるのと、白い部分に比べて香りも辛味も強く固いし粘りもあってさらっと使いこなすのが難しいから、そうこうしているうちに黄色くなったり傷んだりで正直捨ててしまうことも多かった。

白いところは細かく刻んで炒め物の香り出しにも大きく切って具にもなる、汁の実として煮てもいいし仕上げの薬味で散らしてもいい。何かしら使えるんだから、考えてみればそっちこそ後回しでいい気がして、先に青いところのための料理を考えることにした。

その一つがチャーシュー。
チャーシューというのは元々は料理名というより、中国料理で大串に刺して炙り焼く調理法(叉焼)のことを言うそうで、焼くのは豚肉が代表的。そこから日本でチャーシューといえば豚肉の焼いたのをさして焼豚ともいってすっかり定着、そして一度入ってきさえすれば独自に進化をさせるのは日本のお家芸だから、作り方も焼く煮る蒸すに低温調理、食感もとろけたりほぐれたりしっとりしたり噛みごたえがあったりと様々に発展。

ただどうであっても一番のポイントは、質感とか色より何より、想像からそう大きく外れないやや甘さのあるあの味付けにあると思っていて、私の作り方だとその甘さにねぎの青いところが上手に働いてくれるから、これで一気に使い切る。

肉ははじめに焼いたあとで少し煮る、だから叉焼でも焼豚でもなくチャーシューで、おいしさのための曖昧さも家の料理には大切だと思う。

■チャーシューの作り方■

●豚肩ロース…600gくらい
●醤油…90g
●みりん…150g
●酒…90g
●サラダ油…少々
●ねぎ…1本、青い部分も使用
●にんにく…3〜4かけくらい
●しょうが…1かけくらい
※煮るといってもトロトロタイプではなく噛みごたえのあるおつまみ向きの仕上がりなので、この作り方だと部位は肩ロースが最適です

①醤油、みりん、酒を鍋に入れて一度沸かします
比較的短時間であの甘辛味にするため、みりんと酒のアルコールを飛ばして、醤油も含めた煮汁全体を軽く濃縮しておきたい。
一旦沸かして放っておけば、自然と蒸発して煮込み始める前には少し濃くなってくれています。
煮汁の量は少なめなので、お鍋はできれば肉がギリギリ入るくらいの小さめサイズがいい。


②肉の表面をしっかりと焼きます

フライパンに少量の油を入れて、肉の全面にしっかりとした焼き色がつくまで焼きます。この焼きは、火を通すためではなくてあくまでチャーシューらしい香ばしさがほしいから。
形を整えるのにタコ糸で縛ったりせず、いつもそのまま。家で作るチャーシューの形が色々で何か問題があると思わないし、自然な形がまたおいしそうに感じる。

肉自体の色素が少ない豚肉は実は焼き色がつきにくいお肉。
なので一面ずつ時間をかけて焼くしかない代わりに急に焦げたりもしないので、焼く面を変えたらしばしそのまま、また面を変えたらしばしそのままを繰り返しながら、焼くのはここが最初で最後だし根気よく焼く。
ここでまんべんなくしっかり焼き色をつけておくと、仕上がりの見た目にも食感にも窯で焼いたようなチャーシューらしい雰囲気が出ます。

③香味野菜を準備
ねぎの青いところを切り落として、太いところは半分に割り長ければ鍋に入るくらいに切って、にんにくは皮をむいて丸のまま、しょうがは皮ごと薄切りにします。
これが煮上がったのを食べてみたらおいしかった。
チャーシューと肉の旨みを含んだいいおつまみが同時にできあがると考えて、私はどれも多めに入れていつも食べてしまいます。

④肉が焼けたら、一度沸かしておいた調味料で煮ます
①の調味料に、しっかり焼き色をつけた肉、香味野菜を全部入れ、オーブンペーパーなどで落し蓋をして中火で煮始めます。

落し蓋は、余分な水分は逃しながら熱の周りを良くして、煮汁の高さがグツグツと上がってくるようにするため。
15〜20分ほど煮たら一度肉をひっくり返して、また15〜20分煮る。合計30〜40分煮て、お肉も香味野菜もいい飴色に煮上がっていれば火を止める。

⑤鍋のまま休ませる
味もしっかり濃いしすでに火も通っているのですぐにも食べられるけど、固まりの肉を調理したあとは「休ませる」ということをすると、味がなじんでよりおいしく。
煮え立てを切る方が熱くて触るのも大変だし、休ませるといっても放っておくだけ。

作っておいて翌日に食べる場合など時間を置くときは冷めたら冷蔵庫へ。
肩ロースでも煮ている間に多少の脂は出てくるので、冷えて固まった脂が浮いていれば取り除いておくとよりすっきりとした仕上がりになります。

⑤で、完成です
触れるくらいまで冷めたら、また一度冷やした場合は火にかけて常温くらいまで温めてから、好きなように切って完成。

ねぎの白いところを斜め薄切りにして水にさらし辛味を抜いたのをたっぷり添えて、一緒に煮込んだ香味野菜も合わせて盛り付けました。
香菜、からしなんかもあると引き締まっていい。

煮汁が残ったら野菜炒めとかまた違うお肉を焼く時の味付けに使ったり、チャーシューの端っこと飴色に煮えたしょうがを刻んで混ぜ込んだチャーシューごはんにも。
おいしくないわけない。

卵と焼いたチャーシューエッグ。一見地味だけど実はかなり贅沢なおいしさ。

そのままでまずおいしくアレンジもきく、働き者の手作りチャーシュー。
作った手間に見合う以上のおいしさは、きっとねぎの青いところのおかげ。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。



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美窪たえ|おとな料理制作室
お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。

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