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私たちがロボットに学んだこと ~刈谷工科高校のつくばチャレンジ挑戦記の制作記

「失敗しないこと」より「挑戦しないこと」の方が怖い

「この作品を通して一番伝えたかったことは?」と聞かれたら、迷わずこう答える。

2023年つくばチャレンジ

『失敗を恐れないこと、諦めないこと、そして前進すること』

今回のドキュメンタリーは、刈谷工科高校 IT工学科の生徒たちが、自律走行ロボット「メリエ1号改」を開発し、つくばチャレンジに挑んだ記録だ。彼らは数々の困難に直面し、それでも前を向き続けた。

最初は「ロボット開発の記録」になると思っていたが、編集を進めていくうちに気づいた。これは、技術の話ではなく、人間の話だ。 彼らの姿を見ていると、「本当の失敗って、挑戦しないことなのかもしれない」と思わされる。挑戦して、失敗して、それでも前に進む。その姿に心を動かされたのは、私自身だった。

つくばチャレンジ本走行当日

企画の始まり:最初の印象は「もっと派手な企画がよかった(笑)」

この作品の始まりは、私のMVやドキュメンタリーを観たテレビ局のプロデューサーからの「何か一緒に作りたい」という話だった。

つまり、最初は「刈谷工科高校のロボット挑戦を撮る」という具体的な企画が決まっていたわけではなく、「とりあえず何かやる」 という状態だったのだ。

だから最初に「ロボット開発のドキュメンタリーをやろう」と言われたとき、正直な話、「もっと派手でドラマチックな題材がいいなぁ」 と思った。(笑)

つくばチャレンジ2024

でも、私はどんな題材でもカッコよく撮る自信がある。だから「映像的に成立しないかも」という不安は一切なかった。ただ、専門知識に浅く踏み込むのは危険だと思ったので、「とことんサイエンスに寄せるか、生徒たちや先生の成長を描くサクセスストーリーにするか」の二択だと考えていた。

結果的に、私は「成長の物語」を選んだ。そして、それがこの作品の核心になった。

刈谷工科高校の生徒

撮影のこだわり:「登場人物を知ること」から始まる

撮影で最も意識したのは 「登場人物たちに興味を持つこと」 だった。

最初の頃は、彼らが話している内容が高度すぎて、聞いているこっちは終始 「???」 状態。自己位置推定? マップフォーエンジン? 何それ? という感じだった。

当然、そんな状態では撮影していてもあまり楽しくない。だが、撮影が進むにつれ、私自身も彼らの会話を理解できるようになり、「あ、今の言葉には彼らの葛藤が隠れているな」 と感じられるようになった。

特に、つくばチャレンジ本番では、私自身も完全に感情移入していた。

「ロボットよ、走れ!!動け!!!」

カメラを構えながら、心の中でそう叫んでいた。

本走行直前!はたしてロボットは動くのか!

撮影中の印象的な出来事:「金丸君の変化」

撮影中、最も印象に残っているのは 金丸君の変化 だった。

彼は、つくばチャレンジ前日にロボットが動かず、先生から厳しく指導されていた。何度も試行錯誤し、それでもうまくいかない。

そんな彼が、つくばチャレンジ1日目の夜、ホテルで取材班に 「弱音」 を吐いた。

取材当初、彼はあまり感情を表に出すタイプではなかった。でも、この日、彼は自分の気持ちを言葉にしてくれた。「この取材を通して、彼が少しずつ気持ちをオープンにしてくれたんだな」 と実感した瞬間だった。

この作品が感動的なのは、登場人物たちが心を開いてくれたから だと思う。

印象的なインタビュー

エンディング:「すべてを詰め込んだ最後のカット」

エンディングを作っているとき、何回か泣いた。(笑)

つくばチャレンジ本番の0mリタイア。この結果を受け、私は 「エンディングを撮影する必要がある」 と決断した。

実は、もともと学校でロボットが走るシーンを撮影し、それをオープニングに使う予定だった。しかし、この結果を受け、「このシーンをラストに持ってくるべきだ」 と考えた。

先生と生徒たちが用意してくれたプリント

また、エンディングに登場する紙にプリントされた言葉たちは、先生と生徒たちが用意してくれたものだった。当初は 生徒たちがそれを読み上げる予定だった が、私はそれよりも 「学校に貼ることで彼らが学んだことを可視化し、最後の一文を自律走行ロボットに貼る」 という演出に変更した。

こうして、「彼らの挑戦の証」と「未来への意思」が刻まれたエンディングが完成した

ラストシーン

作品完成後の気持ち:「寝れる!!」

ラスト3日間は徹夜。体力的にも精神的にもギリギリだった。

でも、その分 「この作品に、今の自分ができるすべてを注ぎ込めた」 という確信がある。

これで終わりではない。彼らの挑戦は、まだまだ続いていく。

そして、私自身もまた、次の挑戦へと進んでいく。

おやすみなさい


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