オカルトの帝国―1970年代の日本を読む
副題にあるとおり、一九七〇年代の日本社会について、語った本です。
かすかにでも、当時を覚えている日本人であれば、読んで損はありません。
それは、単に、「郷愁を呼び起こされるから」ではありません。
当時を知らない人でも、十二分に読む価値があります。
なぜなら、現在の日本社会の、「ある一部分」の基礎が作られたのが、一九七〇年代だからです。
「ある一部分」とは、「オカルト的要素」です。
二〇一一年現在、世間では、「スピリチュアル」やら「パワースポット」やらが流行っていますね? これらは、立派なオカルトです。
二十一世紀になっても、なぜ、日本で、オカルトが流行るのでしょう?
本書を読めば、その手がかりがつかめます。
本書は、まず、オカルトに興味がある方―否定派でも、肯定派でも、懐疑派でも(^^)―に、お勧めします。
また、漫画やゲームやライトノベルに興味がある方にも、お勧めです。
なぜ、漫画やゲームやライトノベルなのでしょうか?
現在の日本で、これらの娯楽作品には、魔法や超能力や宇宙人が登場するのが、ごく普通ですよね。
例えば、「テレパシー」や「UFO」という単語が、ほとんどの場合、何の説明もなく、登場します。説明がないのは、「誰もが、意味がわかる言葉」だと、認識されているからです。
これらの言葉が、今のように市民権を得たのは、一九七〇年代でした。この時代の日本は、たいへんなオカルト・ブームだったのです。
そのオカルト・ブームは、当時の漫画や小説や映画といった娯楽作品にも、大いに影響を与えています。それどころか、ブームをあおったのが、こういった娯楽作品でした。
現在のように、漫画やゲームやライトノベルが発達するにあたって、一九七〇年代が果たした役割は大きいです。
とりあえず、以下の単語のどれかに反応できる方は、本書を読んだほうがいいと思います。
『日本沈没』、横溝正史、『エクソシスト』、ノストラダムス、桐山靖雄【きりやま せいゆう】、心霊写真、妖怪、水木しげる、つのだじろう、UFO、コンタクティ、ユリ・ゲラー、超能力。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
第1部 オカルトの日本
第1章 オカルト・ジャパン・シンドローム――裏から見た高度成長
1 オカルト・ジャパンの現状
2 疾駆するオカルト――高度成長の陰で
など
第2章 小松左京『日本沈没』の意味
1 繰り返し破滅する世界
2 一九七三年の日本とは、いかなる世界だったか
など
第3章 ディスカバージャパンと横溝正史ブーム
1 日本再発見
2 科学的思考
3 戦後社会と憑き物
など
第2部 メディアのなかのオカルト
第4章 エクソシスト・ショック
1 「空前」の映画、日本上陸
2 嘔吐と失神の彼岸に「エクソ世代」は何を見たのか?
など
第5章 「ノストラダムス」の子どもたち
1 ノストラダムスの『予言集』の受容
2 少年誌におけるノストラダムス
など
第6章 宗教書がベストセラーになるとき
1 新宗教研究にとっての一九七〇年代
2 宗教書ブーム
など
第3部 表象としてのオカルト
第7章 〈霊〉は清【さや】かに見えねども――「中岡俊哉の心霊写真」という〈常識〉
1 中岡俊哉以前――日本「心霊写真」史概略
2 「心霊写真鑑定家」中岡俊哉(一九二六―二〇〇一)
など
第8章 一九七〇年代の「妖怪革命」――水木しげる『妖怪なんでも入門』
1 「妖怪ブーム」と水木しげる
2 水木「妖怪」のライバルたち
など
第9章 オカルト・エンターテインメントの登場――つのだじろう「恐怖新聞」
1 ウイングを広げる――心霊からオカルトへ
2 「新聞」というフレーム
など
第4部 オカルトの現代史へ
第10章 円盤に乗ったメシア――コンタクティたちのオカルト史
1 マスターとアメリカ
2 二人のジョージ
など
第11章 メディアと科学の〈聖戦〉―― 一九七四年の超能力戦争
1 空前の超能力ブームの到来
2 「週刊読売」VS「週刊朝日」――超能力論争の勃発
など
おわりに