シャーマニズム―エクスタシーと憑霊の文化
シャーマニズムについての、コンパクトでわかりやすい解説書です。
シャーマニズムを知りたいなら、最初に選ぶ一冊として、お勧めです(^^)
とはいえ、二〇一一年現在、本書は絶版のようです。古本屋で入手するか、図書館で借りて読むしかありません。とても残念です。
一九八〇年に出た本ですが、「日本語で読めるシャーマニズム入門書」として、いまだに、本書に勝るものは、ほとんどありません。
シャーマニズムという、神秘的で理解されにくい現象を、うまく説明していると思います。
学問的に見れば、本書の内容には、古い部分もあるでしょう。
けれども、「入門書」として読むならば、それは、あまり問題になりません。大づかみに、シャーマニズムとはどんなものか、知ればよいからです。
本書には、日本をはじめ、いくつもの国で見られるシャーマンが紹介されています。シンガポールの童乩【タンキー】、日本の南西諸島のユタ、ロシアのオロチ族のシャーマン、イヌイット―本書中では、「エスキモー」と表記―のシャーマン、日本の長崎県五島列島のホウインサン(ホウニンサン)、スリランカのカプラーラなどです。
どの地域のシャーマンにも、共通性と、地域ごとの独自性とがあります。その実例を知ることができて、興味深いです。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
I 生き神(シャーマン)の諸相
シンガポールの生き神・童乩【タンキー】
奄美の生き神・ユタ
他界に飛翔する生き神・シャーマン
シャーマンの呪術‐宗教的特質
II シャーマニズムとは何か
「シャーマン」の語の由来
若干の定義をめぐって
憑霊【ひょうれい】=ポゼッション
脱魂=エクスタシー
脱魂・憑霊とトランス
トランス・憑霊・霊媒術・シャーマニズム
III ”憑霊”の構造
さまざまな憑霊現象
自発的憑霊と非自発的憑霊
シャーマニックな憑霊の構造
IV シャーマニズムの世界観
アニミズム
霊的存在の実態
インドの神々
北アジアの精霊観
霊魂観と他界観
V シャーマンへの変身のプロセス
”ウマレユタ”と”ナライユタ”
宮古島のユタのイニシエーション
召命型のイニシエーション
修行型のイニシエーション
シャーマニック・イニシエーションの社会‐文化的意味
VI シャーマンと祭司【プリースト】
オショウサンとオカミサン
呪術‐宗教的職能者分類の現状
祭司―シャーマン関係のヴァリエーション
VII シャーマニズムの社会的機能
集団ヒステリーとシャーマン
個人の救いとしての憑霊
社会の”安全弁”としてのシャーマン
シャーマニスティックな儀礼の意味と役割
VIII 日本のシャーマニズム
さまざまなシャーマニズムの寄り合い場所日本
日本のシャーマニズムの諸局面
注
あとがき
索引