アジアもののけ島めぐり―妖怪と暮らす人々を訪ねて
アジア各所の妖怪や魔術について、紹介した本です。
少なくとも、本書が書かれた一九九〇年代までは、アジアのそこらじゅうで、「妖怪や魔術が実在する」と信じられていました。
本書は、その様子を、レポートしたものです。
紹介されているのは、インドネシアのバリ島、マレーシアのランカウイ諸島、日本の琉球(沖縄)、マレーシア領部分のボルネオ島です。
これらのうちで、比較的、知られているのは、日本の琉球の情報だけですね。少し妖怪に詳しい方なら、琉球のキジムナーについては、聞いたことがあるでしょう。
他のアジアの妖怪となると、情報は、無きに等しいです。
その点で、本書は、貴重な資料です(^^)
情報は、あまり整理された形では載っていません。散漫な感じを受けます。
とはいえ、バリ島の呪術大戦の話や、ランカウイの人魚の話、ボルネオの妖怪ポンティアナの話など、他には、どこで探したらいいのか、わからない話が載っています。
妖怪がお好きな方はもちろん、アジアの文化がお好きな方も、読む価値があると思います。
妖怪には、そこに住む人々の世界観が、如実に表れるからです。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
文庫版まえがき
プロローグ ”おばけ諸島”を旅して
第1章 精霊と黒魔術が舞い踊るバリ
おばけを恐れ、愛するバリ人
……異界からやってくる妖怪たち
ある日本人女性を襲った怪異
……窓から精霊が入ってくる家
……妖怪にとり憑かれたダプール
妖術に身も心も捧げた人たち
……目には見えない呪術大戦
……サヌールを漂う妖術つかい
……黒魔術師に敗れたイギリスの魔女
異界へ”ゲート”を開けた村
……馬の死臭が漂うわけ
……天界からレイプされた湖畔の女神
悪霊が舞うチャロナランの夜
……魔女ランダの物語
……バリアンのおばけ祓【はら】いのうた
第2章 呪縛のとけたランカウイの空
二百年の呪いをかけられた島
……マスリの呪い
”最近、人魚は見かけない”
……マングローブの枝につかまる妖怪
……オートバイのおばけ
……七つの泉の妖精たち
白い鰐【わに】になった赤ん坊
……妊娠した娘たちの湖
……ガルーダと戦ったフェニックス
第3章 琉球は気まぐれな妖怪を乗せて
妖怪キジムナーと暮らす人たち
……妖怪の友情を裏切った若者
……妖怪のおちんちんを打ち据えたオバア
……踊る妖怪に救われた娘
魂をフラッシュする妖怪変化
……明かりをともすと消える赤ちゃん
琉球版アダムとイブの物語
……空から餅【もち】が降らなくなったわけ
魔もの封じのテクニカル・ライフ
……死んでから子を育て続けた母
”流れる龍”からはるかな旅へ
……龍宮の王女と結婚した漁師
第4章 世界のおばけはボルネオへ還【かえ】る
ポンティアナ伝説を追いかけて
……妖怪ポンティアナの変幻
ジャングルが奇跡をひき起こす
……森のなかのおばけたち
暖かなまなざしの”首狩り族”
……吹き矢を抱えたプナン族のおばけ話
……首狩りで霊と対話するビダユ族のおばけ話
おばけを飼いならす妖術師たち
……飼い主を追いかけるトヨール
……ボルネオ版キョンシー
世界はこの島で裏返る
……ナガ・龍のおばけ
……精霊たちの故郷
エピローグ 奇跡的、絶対的なおばけたち
おばけは”霊”である 水木しげる
その新しい地図に日本はあるか? 京極夏彦