匈奴―古代遊牧国家の興亡
中国の歴史に興味がある方や、遊牧民族に興味がある方にとって、本書は、必読です!
匈奴【きょうど】は、中国史において、おそらく、最も有名な遊牧民族でしょう。
漢時代の中国は、匈奴を抜きに語れません。
匈奴と漢との関わりには、多くの逸話が伝えられています。
漢の将軍なのに、匈奴に投降した李陵【りりょう】や、漢の宮廷から匈奴へ嫁入りした王昭君【おうしょうくん】など、悲哀のこもった逸話が、珍しくありません。
でありながら、匈奴について、まとまった資料は、極めて少ないです。
日本語で読める匈奴の資料として、本書は、欠かすことができません。
匈奴について知りたいなら、まず、本書をお勧めします。
ただし、匈奴は、自分たちについて、文字で書いた歴史を残しませんでした。ですから、本書で引用されたり参考にされたりしている文献は、みな、漢の側のものです。
敵方の文献によって、語られているわけです。そこには、どうしても、偏見が入っていることは、避けられないでしょう。
それを頭に入れていれば、本書は、良い入門書だと思います。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
なお、以下の目次には、一部、環境依存文字があります。お使いの環境によっては、正しい文字が見えない場合があります。御了承下さい。
まえがき
第一章 匈奴の登場
一 匈奴の源流
モンゴル高原の暮らし/北方異民族の系譜/匈奴の登場/
など
二 匈奴の勃興
匈奴の戦法/匈奴と始皇帝/万里の長城
三 匈奴遊牧国家の成立と発展
冒頓【ぼくとつ】の登場/前三世紀の北アジア情勢/冒頓の雄飛/
など
第二章 匈奴と漢の攻防
一 漢との対立
武帝の即位/張騫【ちょうけん】の遠征/伊稚斜【いちさ】単于【ぜんう】の登位/
など
二 匈奴内の漢人と匈奴の内紛
匈奴内の漢人/李陵【りりょう】と蘇武【そぶ】/衛律【えいりつ】の暗躍/
など
三 匈奴の東西分裂
日逐王【じつちくおう】の投稿/五単于【ごぜんう】の並立/
など
四 異域に送られた女性たち
和蕃【わばん】公主の始まり/烏孫公主【うそんこうしゅ】細君【さいくん】/
など
五 匈奴の中興期
長城の和平/匈奴と新【しん】の対立/匈奴の最後の黄金時代
第三章 匈奴の文化
一 匈奴文化の特質
匈奴文化の編年/綏遠【すいえん】青銅器文化/匈奴の鉄器文化/
など
二 経済と産業
遊牧と狩猟/農業/商業と手工業
三 匈奴人の衣食住
匈奴の衣類/匈奴の飲食/匈奴の住居
四 匈奴人の風俗、習慣
貴壮賤老/婦人の地位と嫂婚制【そうこんせい】/匈奴の葬礼/法律/祭祀
五 匈奴の文字
漢字借用説/文字か? 記号か?
第四章 匈奴の社会
一 匈奴の部族組織
種【しゅ】の意味/匈奴という名称/部の概念/部の構造/氏の性格/
など
二 政治権力の発生
冒頓【ぼくとつ】のクーデター/竜城の会議
三 行政の仕組み
行政機構は軍事組織/二十四長
四 匈奴君長権の性格
単于【ぜんう】の称号/単于位と攣鞮【れんてい】氏/単于権の限界/
など
五 中国侵入の真相
掠奪に関する諸学説/掠奪の実態/人民拉致の意図/掠奪品の分配/
など
六 匈奴遊牧国家論
従来の匈奴遊牧国家論/匈奴遊牧社会の歴史的規定/
など
第五章 匈奴の分裂とその後
一 匈奴の南北分裂
烏桓【うがん】の興起と匈奴の飢饉【ききん】/単于位争い/
など
二 北匈奴の動静
交易と掠奪/車師【しゃし】経営/班超と班勇/北匈奴の西移/
など
三 匈奴・フン同族説
匈奴とフンは同族か/ド・ギーニュの提唱/匈奴・フン同族説の展開/
など
四 五胡の動乱と匈奴
後漢末の南匈奴/南単于権の崩壊/南匈奴の五部分割/
など
あとがき
匈奴史年表
参考文献