花と昆虫がつくる自然 (エコロジーガイド)
花の解説図鑑、といえる本です。
ただし、そこらの図鑑とは、一味違います。
題名どおり、花と昆虫との関係に主眼を置いて、解説が書かれています。
花の形が、昆虫を呼び込めるよう、うまくできていることが、理解できます。
細密に撮られた写真も、理解を助けてくれます。何より、写真が美しいです。
解説を読むのが面倒でも、写真さえ見れば、かなりの部分が理解できます。
例えば、この本には、「ミツバチの視覚を再現したカメラで、撮った花の写真」が載っています。こんな写真は、見ること自体、珍しいですね。
これらの写真を見ると、ミツバチが、ヒトとは、まるで違うものを見ているとわかります。
花(植物)は、ミツバチにわかりやすい方法で、蜜のある場所を示しています。
なぜ、そんなことをするのかと言えば、花(植物)にとって、ミツバチは、「大切なお客さん」だからです。
ミツバチは、たいへん効率よく、花粉を運んでくれます。ですから、植物としては、ミツバチに親切な設計にしておいたほうが、得をします。
すべての花が、ミツバチに都合よく、できているわけではありません。
この本では、ハナアブに都合のよい花、スズメガに都合のよい花、チョウに都合のよい花なども、取り上げられています。
中には、甲虫に都合のよい花や、鳥―昆虫ではなく―に都合のよい花もあります。それらの花も、この本で、紹介されています。
植物の中には、変わった形の花を付けるものがありますね。
例えば、トリカブトです。「鳥兜」の名のとおり、風変わりなヘルメットのような形をしています。なぜ、こんな花の形なのでしょうか?
その答えは、この本に載っています。
本書を読み通せば、身近な花に対して、新しい目が開かれること、間違いありません。
以下に、本書の目次を挙げておきますね。
花粉の移動と昆虫
花の構造と受粉
花粉は原始の餌
蜜はどこに
昆虫の形態と習性
昆虫の視覚
ハチ・アリが訪れる花
ハナバチたち
ハナバチの腹に
下向きの花
スズメバチのために
アリとの知恵比べ
チョウ・ガが訪れる花
チョウを招く花
チョウを嫌う花
夜の客スズメガ
ハナアブ・ハエが訪れる花
黄色は食べ物のサイン
白い花
多様な受粉方法
変わりものによる送粉
甲虫を招く
ブラシのように
鳥がつくった花たち
労働の搾取
植物と昆虫のきずな
固いきずな
花のバトンタッチ
きずなを断つ
農作物の虫媒受粉
花と昆虫の世界へのガイド
花の性表現
虫媒花の花型
日本産野生植物の受粉方法一覧表
さくいん