花の幻想
題名どおり、花の幻想譚です。ファンタジー小説といえますね。
フランス語からの翻訳作品です。原著は、十九世紀のフランスで出版されています。
フランスらしく、エスプリの効いた内容だと思います(^^)
本書には、まず、花の妖精が登場します。花の妖精は、一年中、さまざまな花が咲いている「花々の国」で暮らしています。
ある日、妖精のもとへ、「花々の国」のあらゆる花たちがやってきます。そして、こう言います。
「花の暮らしには、飽きました。私たちを人間にして下さい!」
妖精は、花たちの願いをかなえてやりました。
さあ、人間になった花たちは、どうなったでしょう?
本書は、短編集です。一篇一篇の小説は、一人の「もと花」の人間が、主人公になっています。例外的に、二人主人公の話もあります。
本書は、挿絵がとても素敵です。挿絵のほうが先にあって、文章は、それに合わせて書かれたそうです。
挿絵を描いたのは、J.J.グランヴィルという人です。この人は、本書のプロデューサーと言うべき人です。本国のフランスでは、幻想的で、風刺のきいた画家として知られます。
日本語で、グランヴィル氏の作品がまとめて見られる著書は、二〇一一年現在、本書しかありません。
一つだけ、気になったのは、植物の日本語名に、疑問に思うところがあったからです。
植物には、互いに似た種名のものがあります。取り違えやすいのはわかりますが、こういう本だからこそ、そこはしっかり訳して欲しかったですね。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
凡例
花の妖精
お茶の花とコーヒーの花
マーガレット―牧草地の小さな予言者
ふたりの羊飼いの娘とフランス王妃の物語
オレンジの花
ケシの花―夜想
キンセンカとマツムシソウ
椿の後悔
庭師ジェロームの娘
クワイの花―水の精
アザミの花―ライオンの皮を着たロバの話
トルコ皇帝の寵姫【ちょうき】チューリピア
口絵 水仙―河岸の漁師たちが語ってくれた話
サンザシと剪定ばさみ
カーネーション―侮蔑の花
葡萄【ぶどう】の樹の夫の話
薔薇の年代記
ジャスミン―オリエントの男の話
亜麻【あま】の花―糸紡ぎの娘たち
ドクニンジンの物語
シスター睡蓮【すいれん】
不滅花
ニオイアラセイトウの花
詩人ジャコブスと花言葉の物語
最後の首長の物語
花のデカメロン
フィナーレ、花たちの舞踏会
グランヴィルの花の世界
花言葉
変身幻想の画家 グランヴィル 荒俣宏
訳者あとがき