古代エジプトの神々―その誕生と発展
題名どおり、古代エジプトの神々について、解説した本です。
一九八八年に出た本ですが、基本的な内容は、古びていません。
二〇一一年現在でこそ、古代エジプトの神々を解説した本は、多いです。
けれども、一九八八年当時には、日本語のそういう本は、ほとんどありませんでした。本書は、貴重な本でした。
現在は、多くの類書が出ていますね。それらと比べても、読みやすいです(^^)
図版が多いのが、良いですね。
上下二段組みで、下段に文章があり、上段に文章と関係する図版が付いています。これが、たいへん理解の助けになります。
ただ、「エジプトの神々事典」的なものを期待すると、ちょっと違います。
数多くの神々を羅列するより、主な神々について、詳しく解説するスタイルを取っています。
ナイル川を擬人化した神ハピ、古代エジプトでは例外的な唯一神アテン、悪神とされることが多いセトなど、解説されることが少ない神々についても、詳しいです(^^)
古代エジプトだけでなく、西アジアなどのオリエント全体の動きを見通して、解説されています。
これは、著者の三笠宮崇仁【みかさのみや たかひと】さまの御専門が、古代オリエント史だからでしょう。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
一 ナイルの恵み「ハピ」
ナイルの源流を求めて 「月の山脈」を発見 白ナイルと青ナイル
「ナイルの賜物」 ナイルの水を飲む者はエジプト人 古代エジプト暦
ナイルの恵み「ハピ」 大河と永遠性 ナイル讃歌
二 来世の王「オシリス」
神話はどうして生まれたか? 「オシリス」神話 日本の穀霊
穀霊「オシリス」 穀霊と祖霊 霊力の更新
三 現世の王「ホルス」
エジプト史のあけぼの 宗教心の芽生え ハヤブサの都市「ヒエラコンポリス」
ナルメルの化粧板 「ホルス」の誕生 「ホルス」現世の王となる
ホルスの目「ウェジャト」 「ロゼッタ石」 シャンポリオンの勝利
南エジプトとハヤブサ
四 太陽の都「ヘリオポリス」の神々
自生の「アトゥム」 天地創造 お日さま「ラア」 タマオシコガネの活動
神になったタマオシコガネ 護符になったタマオシコガネ 不死鳥の祖「ベヌ」
歴史家マネト
五 「ラア」とピラミッド
第一王朝の諸王 メンピスの神「プタハ」 神々の南北戦争の結末
階段ピラミッドの建設 医神「イムヘテプ」 「切頭ピラミッド」と「屈折ピラミッド」
クフ(ケオプス)の大ピラミッド ピラミッドの建造法 カフラアとスフィンクス
「ラア」の栄光
六 「アメン=ラア」の出現
ピラミッドの主たち 『イプエルの訓戒』 思想の変革 「パピルス文書」
古代エジプト人の死生観 テーベ地方の神々 「アメン」天下を制す
七 セム語族の神々と印欧語族の神々
中王国の国内情勢 古代オリエントの言語 「ヒクソス」の侵入と支配
ヒクソス時代の意義 セム語族の神々 太陽・馬・船 新王国の軍事帝国主義
八 「アテン」一瞬の輝き
エジプトの神官制度 メムノンの巨像 アテン信仰のきざし
アメンとアテンの争い 「アケトアテン」への遷都 アテン讃歌
アメン信仰の復活 「死者の書」第一二五章 無罪の告白
九 神助と神罰
「セト」頭角を現わす 神々の出陣 カデシュの激戦 神の和平
神殿の大増築 イスラエルの出現 アッシリア軍の進攻
アッシリア・新バビロニア・ペルシア 「アピス」の神罰 エジプト王朝の終末
十 神とあがめられた鳥・獣
イヌ トキ ネコとライオン ウシ ハゲワシ コブラ
クレオパトラとコブラ
むすび
謝辞
古代エジプトの神々一覧表
参考文献