異界と日本人―絵物語の想像力
妖怪研究で有名な、小松和彦さんの著書です。
「異界」をキーワードに、日本に伝わる絵物語を、読み解いています。
小松さんの著書の中でも、たいへんわかりやすいほうだと思います。絵物語を題材にしているためでしょう。難しいことを考えずとも、絵を見れば、わかりますからね。
文章も読みやすいです。絵物語に惹かれて進むうちに、さらっと読めてしまいます。
「異界とか妖怪とか、好きだけれども、よくわからない」方は、とりあえず、本書から読み始めてみるのが、いいかも知れません。
具体的には、以下のような絵物語が、取り上げられています。
・鬼がくれた美女は、なんと、秘術で作られた人造人間だった――『長谷雄【はせお】草紙絵巻』
・金毛九尾の狐が、宮廷を舞台に陰謀をめぐらす――『玉藻前【たまものまえ】草紙絵巻』
・浦島太郎が行ったのは、龍宮ではなかった?――『浦嶋【うらしま】明神縁起絵巻』
・東北で死ななかった源義経が、「馬人島」や「裸島」をめぐって、ガリバーばりの大冒険――『御曹子島渡【おんぞうししまわたり】』
・中国からやってきた天狗が、日本で呪術合戦――『是害房【ぜがいぼう】絵詞【えことば】』
どうです、面白そうでしょう(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
異界論のすすめ
序章 異界をめぐる想像力
第一章 反魂【はんごん】の秘術――『長谷雄草紙絵巻』
第二章 源頼光【みなもとのらいこう】と酒呑童子【しゅてんどうじ】――『大江山【おおえやま】絵詞【えことば】』
第三章 妖狐の陰謀――『玉藻前草紙絵巻』
第四章 龍宮からの贈り物――『俵藤太【たわらのとうた】絵巻』
第五章 龍宮の逆説――『浦嶋明神縁起絵巻』
第六章 天界への通路――『天稚彦【あめわかひこ】草子絵巻』
第七章 義経の「虎の巻」――『御曹子島渡』
第八章 天狗と護法童子――『是害房絵詞』
第九章 狐の「浄土」と異類婚姻――『狐草紙絵巻』
第十章 百鬼夜行のパレード――『付喪神【つくもがみ】絵巻』
第十一章 幽霊の近世――『死霊解脱物語 聞書【ききがき】』
終章 異界観の変容と妖怪文化の娯楽化
あとがき