インカの食卓
題名は、『インカの食卓』ですが、インカ文明の話ばかりが、書いてあるわけではありません。
インカ文明が栄えた地、南米ペルーの、現在の先住民の食事について、書かれた本です。
インカ文明について知りたい方には、ちょっと期待外れかも知れません。
このために、評価の星を一つ減らしました。
しかし、本書が貴重な本であることは、間違いありません。
日本語で、アンデス先住民の食事について、読めるからです。文章は平易で、読みやすいです。写真も多いです。
類書は、皆無に等しいです。
インカ文明を担った人々の子孫は、現在も、先住民として、アンデスに生きています。
気候の厳しいアンデスでは、今も昔も、ジャガイモが主食です。他にできる作物が、少ないからです。
現在の先住民の食事は、インカ文明時代の食事と、つながっています。本書をじっくり読めば、インカ文明について、食の面から知ることができます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
第一章 アンデスで体験した食生活
ボリビアへ向かう/最初のころの醤油料理/覚えはじめたチューニョの味/
青菜やキヌアの味/村人のトウガラシソース/朝昼夕のジャガイモ/
すばらしい小さなイモ類/貴重な山のキノコ/棟の中のテントとカマド/
村人からの肉類調達/ティティカカ湖の浮島で/野営生活で得たクレソンや魚/
果実との出会い/胃を満たしてくれた果物/山の幸を見つける
第二章 高地から霧の谷間、海岸の砂漠へ
アンデスという言葉/大昔のアンデス/高地から下方の世界へ/
霧に包まれたバージエ/ジュースからチッチャに/豊かな砂漠状の原野/
豊富なイモ類/ジャガイモの保存食加工/窯【かま】とジャガイモ食/
繊細な古典種系ジャガイモ/変化に富む小さなイモたち/
乾燥トウモロコシと採りたてトウモロコシ/商品化しやすいトウモロコシ/
キヌアなどの穀物と豆類
第三章 インカ時代の食生活
高地から谷へ、谷から高地へ/皇帝も飲み続けたチッチャ・デ・ホラ/
リュウゼツランのチッチャ/トウガラシと塩/昔からの干し肉利用/
森林地帯から得た野生の味/ティティカカ湖の魚
第四章 遺跡から知る食の世界
海沿いのタンボと円形遺跡/干物に加工されていた海藻や貝類/
インカの海と漁法/食事の基本だった「擂【す】り石」/太陽の処女たちの粉ひき/
宮殿の薪や食器類/インカ皇帝の食卓/皇帝アタワルパの食事風景
第五章 古典種系作物の探索
はじめて知ったジャガイモへの驚き/野山で探すパパ・ナティーバ/
出会った総数は約二一〇種/興味深い名前と形/千差万別の味/
ほかの作物も品種が豊富/インカが残した大きな遺産/段々畑アンデネスの効果
第六章 現地料理の美味を求めて
インカ時代からのトウガラシへの嗜好/村や町のトウガラシソース/
自分でつくったトウガラシソース/粥【かゆ】状のラワ系スープ/
クスコ県地方の種類豊かなスープ類/チュペやカプチというスープ/
伝統のポタージュ風料理/広がるシチュー風料理の世界/
肉や野菜を詰めたレジェーナ/窯【かま】焼きが多い肉料理/
文明が交錯する魚介サラダのセビッチェ
あとがき