アーサー王伝説 (「知の再発見」双書)
ヨーロッパのアーサー王伝説について、解説した本です。
物語としてのアーサー王伝説を読みたい方には、向きません。伝説が成立した過程を、解説した本だからです。物語を読みたい方は、他の本をお選び下さい。
アーサー王伝説について、基本的なことは知っている方に向いた本ですね。初級者を脱して、中級者以上を目指す方に、向いていると思います。
アーサー王といえば、英国の伝説だと思う方が、多いでしょう。それは、むろん、間違いではありません。
けれども、英国以外のヨーロッパの国でも、アーサー王伝説(の一部)が伝えられています。主に、フランスに伝わります。
なぜ、英国の王の伝説が、他の国にも伝わっているのでしょうか?
それは、アーサー王伝説の複雑な成り立ちと、関わっています。
アーサー王伝説が生まれたのが、英国であることは、確かです。しかし、他の国―主に、フランス―からの要素が入ることで、より豊かな伝説になりました。
本書は、フランス人が著者だけあって、フランスの伝承も、しっかり押さえています。
この点は、類書より抜きんでたところですね(^^) 日本のアーサー王伝説の解説書では、珍しいです。
なぜ、英国という国で、アーサー王伝説が生まれ、広く受容されたのでしょうか?
これについて、本書は、興味深い答えを提示してくれます。私は、読んで、「なるほど」と膝を打ちました(^^)
図版が多いのも、嬉しいところですね。大部分のページに、図版があります。アーサー王関連で、有名な絵画作品は、ほとんど載っていると思います。
文章を読むのがつらくても、図版とそのキャプションを見るだけで、楽しめます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
日本語版監修者序文
第1章 アーサー王と歴史
第2章 伝説の創造
第3章 アーサーの生涯
第4章 封建制と騎士道
第5章 花咲くアーサー王文学
資料篇
(1)12世紀文学に描かれた様々なアーサー像
(2)中世フランス文学におけるアーサー王
(3)円卓と聖杯の探求
(4)アングロ=サクソン諸国でのアーサー王の成功
(5)20世紀フランス文学におけるアーサー王
(6)アーサー王伝説の地を訪ねて
(7)アーサー王物語の映画化
INDEX
出典
参考文献