だから, 遠い未来も人はアナログに旅をする. 〈前半まとめ〉
音楽業界(某レコードメーカー)で、約20年、ディレクターをしているボクが書く––––〈音楽業界に興味のある方向け〉+〈DXやxRに興味のある方向け〉マガジン––––
「だから、遠い未来も人はアナログに旅をする」
––––から、音楽業界(を目指す方)向けの内容をキーノートにまとめました。画像中心となるため、どうしても「PC推奨」となっております。
もし、お時間許せば……以下のリンクから第1章/第1部(1−1)だけでもお読みいただければ、より深くお伝えできるやもです。
そもそも、A&R(ディレクター)とか、プランナーとか、販促とか、マネージャーとかって、名前に囚われて欲しくない。
社会や会社から与えられる役割範囲は形骸化していたり、無意味なことが多い。
ボクらの仕事は、音楽にまつわる感動体験をつくるコト。
あなたが好きなコトも、あなたが好きでい続けたコトも、音楽そのモノだけじゃなく、音楽にまつわる体験(感動)だったはず。
だから、音楽業界で裏方として働く人は、音楽をつくるプロじゃなくて、音楽体験から生まれる感動をつくるプロを目指すべき。
音楽で感動し続けてきた人生だから、音楽業界に入った/入りたいはず––––
結局のところ、ナラティヴの具体的な効果は、2次創作の活性化です。
「歌ってみた」や「踊ってみた」––––昔からある「カラオケ」や「ジュークボックス」など––––志向性としては、そんなに目新しい発想ではありません。
それを促すためには、かなり根元(余白だらけの初期段階)から、顧客へ権利開放(EMPOWERMENT)を行う必要があります。
従来、2次創作の素材になり得ず、特権階級 (音楽業界で言えば、レコードメーカーこそが決定権者)のみが保有していた中央集権的な権利を、民衆に譲渡する=民主化するという意識が大切です。
次に、コンテクストを生み出す源(PURPOSE)を提示する必要があります。
これには「意義(僕は「正義」と言ってもいいと思っています)」と「制限(コンプラ)」が重要になります。
正義は、人々が語るモチベーションに繋がります。適切な制限は、人々が創作をするためのインスピレーションになります。
ただ、「面白い話をして!」というのではなく、最近、元気のない祖父母を元気付けるために「家族の面白い話を教えて」という感じ。
この2つをもって、まずは、感度の高い発信型のファン = イノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる人たちの共感を得なければ、ナラティヴなプロセスは成立しませんし、その後に生まれる多方向のコミュニケーション(SNS上のカキコミ拡散)も、熱狂的なコミュニティ(ファンダム)も、生まれません。
つまり、新人アーティスト(新商品)が、キャズム越えできない可能性が高まります。
NARRATIVEは、キャズム越え = 新人アーティスト(他の業界であれば新作や新商品)をヒットさせるため、最低限なくてはならい(少なくともあった方がいい)法則と言えます。
そのために行うべきは、まず、企業=特権階級のみが保有しているプロセスから「民主化できる部分」を洗い出すこと。
それは、かつて、封建社会の中で王様や貴族が決めていたコトを、次々と民衆にエンパワーメントしていった自由民主運動に似ています。
日本では、政治そのものは選挙によって民主化されていますが、総理大臣を選ぶコトは直接的な民主運動にありません。一方、アメリカの大統領選はダイレクトに国民が選び方ます。
(どちらが政治的に良いという話ではなく)だ後者の方が、イベントになりやすく、熱狂的なナラティヴ・プロセスを生みやすいことは確かです(そもそも、選挙は、ナラティヴが起こりやすい対立構造も持っている)。
米大統領選では、始まる前から、多くのプロセスが開示されており、選挙戦の初期からSNSへのカキコミが多数散見されていきますが、日本の総理選定の過程では、結果が出たときのみ拡散されるイメージです。
プロセスの民主化 = 参加型 = つまり、イベント(お祭り)は、当事者意識を増幅させ、結果、カスタマーが干渉できないまま経過していく鑑賞や傍観に、干渉(インタラクション)や没入(ジブンゴト化)体験を与えてくれます。
没入することでコンテンツはイベントとなり、傍観者であったカスタマーは、セカイの登場人物の一人として、共謀者へと意識移行していきます。
もっと言えば、主人公視点にまでなる『マニア』や『オタク』も生まれます。
そうなると、3人称視点(TPV)の俯瞰型の鑑賞は、さながら、1人称視点(FPV)の没入型ゲームプレイへと変貌するのです。
そういう面で「no+e」は、今もっとも、ナラティヴなSNSと言えるかも知れません。
音楽業界であれば––––
––––オーディションという新人開発プロセスの民主化。
––––オーディションにハマり難いバンドやシンガーソングライターでも、楽曲制作のプロセスは(作家からの提供を受ける)アイドルやダンスグループよりもナラティヴ化しやすかったり。
––––アイドルのSNS運用は、だから、ファンへの問いかけ(質問やアンケート)に満ちています。「今日の髪型どう?」や「何食べたらいい?」など––––自身のプライベートを民主化し、ナラティヴ・プロセスとして活用している例です。
マーケットリサーチ上のエビデンスとして、X(旧:twitter)上のアンケート機能は、通常の「いいね!」や「RT」の何倍ものリアクションが集まるコトが多く散見されています。
自分の好きなアーティストの作品を鑑賞するだけではなく、「あらゆるプロセス(創作活動、ともすれば、その人の人生そのもの)に干渉したい!」という心理が、コミュニティを熱狂的なコト(ファンダム)に押し上げます。
【 ナラティヴ・マーケティングを詳しく知りたい方は↓ 】
プロセスを民主化するために、企業が保有するコンテンツならび権利を正式に素材として開放するコト = オフィシャルな許諾をきちんと明言化するコトが非常に重要です。
素材化(MATERIALIZE)という発想です。
創作活動のあらゆる場面を民主化している新たなスタンダードと言えます。
たとえば、楽曲のタイトルや衣装を、未完成や不確定な状態のまま、ナラティヴ・プロセスの素材として公開していく––––
これは、アンケート型(投票型)のマテリアライズと言えます。
あるいは、ミュージックビデオを、ただ公開するのではなく、スクショ自由にして(肖像権を解放し)、Xに上げてもらうコトで、ファンにカメラマンという役割を与えて一人称化(当事者あるいは主人公化)し、今らしいクチコミ = SNSのカキコミを増幅させるようなコト––––これは、コンテスト型(インセンティブ型)のマテリアライズです。
あとは、シンプルに、2次創作を促すためのコークリエイション型のマテリアライズ。
我々の業界であれば、音源のリスナーではなく、音源を使って遊べるアプリのユーザーが、企業が持つコンテンツ(音源や映像)を活用して、自身が主人公として遊ぶための素材として、未完成なモノ(編集可能なデータ)の公開を求めます。
カラオケという歌の入っていない未完の音源(インスト)のリリースも、ミュージックビデオから映像素材のみを分離して使用してもらうのも、この手法の一環です。
【 ↓ もっと詳細は ↓ 】
第1章 だから, 遠い未来も人はアナログに旅をする.
1−1「送る」について。だから、遠い未来も人は旅をする
1−2 すでに起こった未来
1−3「音楽」と「音源」にまつわる産業史
1−4「音楽が売れなくなった」という嘘と本当のところ
1−5 どこでもドアが発明された! 鉄道会社はなくなるだろうか?
第2章 悪くなれば, 悪くなるほど, 良くなる存在.
2−1「脆い」の正しい反意語
2−2 最高/最大/最新のテクノロジーは必ずしも体験の上質さと比例しない
2−3「音楽」と「文学」におけるデジタライズの違い
2−4 変化に対する反応速度は狙って出せる
第3章 ○○○○○ - 誰がそれを行うべきか?
3−1 新たな価値❶:回帰的だが新たな価値
3−2 新たな価値❶ を別視点から考察する
3−3 新たな価値❷:ENTER-TECHという最先端価値
3−4 新たな価値❷ を別視点から考察する
3−5 ○○○○○・マーケティング
3−6 音楽業界は、なぜ、変化が激しい(変化に脆い)のか?
3−7 音楽だから(だけが)不利なコトは、
音楽だから(だけが)できるコト
第4章 古い記録が新たな記憶を創る魔法.
4−1 オープンソースの時代
4−2 古いモノを新しいコトにする魔法
4−3 コンテンツというのもマテリアルな用語なのかも知れない
4−4 新世界
【 ↓ 主にVRやARについて書いた後半は ↓ 】
第5章 未来は常に始まっている.
5−1 VUCAや突然変異を歓迎する性質
5−2 多重世界の在り処
5−3 夢は4種類
5−4 コンテンツを終息させるかもコンテクストの収束
第6章 昔から世界の約半分は想造で出来ていて,
未来の世界の半分以上は想造で出来ていく.
6−1 昔から世界の約半分は想像で出来ている
6−2 アートと記録に関するパラダイムシフトの歴史
6−3 未来の世界の半分以上は想造で出来ていく
6−4 非物質化する社会が解く呪い
第7章 新たな法治を行うのは誰か?
7−1 何度でも巻き戻しが効く可逆的未来
7−2 進化と問題という双子
7−3 違法な行政と正しい無法者
7−4 新たな法治
7−5 2つの “超” 現実
第8章 いつかこの世界はこの世界ではなくなる.
8−1 永遠に完成しない未来のオブジェクト
8−2 ① 形と動きと声でつくるミカンの話
8−3 ② オーディエンスがいなくなった話
8−4 ③ 或る高校生と愉快なアバターたちの話
8−5 ④ 誰しもがサーファーになれる時代の話
8−6 ⑤ 空想上の地下にある反転都市での話
8−7 ⑥ 行動を定量化して循環させる社会の話(未完)
8−8 常新性の希望
跋 好きこそ物の上手なれ.
【 マ ガ ジ ン 】
(人間に限って)世界の半分以上は「想像による創造」で出来ている。
某レコード会社で音楽ディレクターとして働きながら、クリエティヴ・ディレクターとして、アート/広告/建築/人工知能/地域創生/ファッション/メタバースなど多種多様な業界と(運良く)仕事させてもらえたボクが、古くは『神話時代』から『ルネサンス』を経て『どこでもドアが普及した遠い未来』まで、史実とSF、考察と予測、観測と希望を交え、プロトタイピングしていく。
音楽業界を目指す人はもちろん、「DX」と「xR」の(良くも悪くもな)歴史(レファレンス)と未来(将来性)を知りたいあらゆる人向け。
本当のタイトルは––––
「本当の商品には付録を読み終わるまではできれば触れないで欲しくって、
付録の最後のページを先に読んで音楽を聴くのもできればやめて欲しい。
また、この商品に収録されている音楽は誰のどの曲なのか非公開だから、
音楽に関することをインターネット上で世界中に晒すなんてことは……」
【 プ ロ ロ ー グ 】