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源氏物語「帚木巻」を読む

 源氏物語シリーズの記事ばかりになりそうだが悪しからず。

 今回は、「帚木巻」である。古文が苦手であるという人に興味をもってほしいという思いで、内容の面白さの例として挙げられるのが、この「帚木巻」に記された「品定め」の話である。数人の男の人が集まって、恋愛について語り合う場面であり、クスッと笑ってしまう内容であることが特徴であろう。

 紹介したい場面に付箋を付けながら読み進めていたところ、付箋が10枚にも及んでしまったので、その中から抜粋して紹介する。

 品定めの際は、源氏は積極的に話す側ではなく聞き手であることに注意したい。また、この際には葵上のことを頭に浮かべながら、女性の評価について考えていく。


 左馬頭の弁が中流の女のおもしろさを述べた場面で、源氏の様子をこう記す。


いでや、上の品と思ふだにかげなる世を、と君は思すべし。


「いでや」とあるように、左馬頭の弁が述べることに疑念を表しているのだが、この時には葵上を想像していたのだろう。葵上はたいへん美しく、申し分ない存在であるが、あまりにも隙が無く近寄りがたいと悩んでいた。源氏の苦労も想像できる。


 左馬頭の弁が紹介する「指喰いの女」と「浮気な女」については、その言葉からも、興味のわくような女であるため、ぜひとも読んでいただきたい。それをなぜ示したかと言えば、この二人の女の話を聞いた後の源氏の言葉に注目したからである。


「いづ方につけても、人わろくはしたなかりけるみ物語かな」


 左馬頭の弁の話を受けて、最後に源氏がこう言い放つのだが、その鋭さが実に面白い。左馬頭の弁はいろんな嫌な女の話をするもののそれはすべて実体験に基づく。だからこそ、結局は「間の悪い身の上話」だと源氏は述べ、笑いを誘ったのである。まさに高校生の修学旅行かのような雰囲気で、楽し気な対談である。


 ほかにもいろんな女の話が出てくるが、それはお楽しみということで。

 

 エピソードにツッコミを入れるような展開で進められるというこの場面はやはり、古文を読むきっかけになりそうなものだ。ネタバレにはなるが「品定め」で出てくる話はただの滑稽話ではなく、実は今後の展開にも影響する。やはり構成のしっかりした面白さもあるのだと感心するばかり。しかし、これだけで「帚木巻」は終わらない。次の巻につながる空蝉と源氏の話につながるのである。空蝉の話は次回の「空蝉巻」にとっておこう。



季節の変わり目となり、風邪でも引かないか不安になってきました。日中は日差しが強いところが本当に困ったもので。




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