見出し画像

お寺に税務調査がやってきた〜経緯・準備・調査結果まで【全話収録・追記込】

令和6年(2024年)8月上旬。税務調査がようやく終わったので経緯を記しました。途中から読み物のようになっていますが、過去帳の取り扱い、準備するもの、税務調査の進まれ方などなど、一連の経緯は記してあります。

不安で夜も眠れないお寺さま、どうぞ気楽にご笑覧いただきながらホラー映画を見るが如くひんやりとしてくださいませ。後半は有料記事になりますが、応援のつもりでぜひ課金いただけるとさいわいです。ログインなしにゲストでPAYPAYなどでもご購入できるのでどうぞ気軽に。

というより実のところ、これらは私の憂さ晴らしに他ならない。


うちのお寺の現状

私が勤めるお寺は浄土真宗のお寺である。そのお寺に生まれ育ち僧侶の資格をいただきお寺で勤めはじめてから約20年になる。

とはいえその時、私はまだ20代そこそこで父である住職も現役だった。また僧侶ひとりいれば法務が間に合うお寺であったため私自身は宗教期間へ数年間の研修いったりきたりいったり。または他のお寺でお手伝いのような勤めもさせていただき、研鑽をさせていただいていた。

事情が重なり6年前にお寺に骨を埋めることになる。

令和が始まった丁度その年だ。

会計は2年前から正式に私に変わった。まだ2年目である。先代から顧問税理士さんに会計をお願いしているのもあるがこれからいろいろと学んでいくという時期であった。正直、お寺の会計、運営に関して右も左もわからない。そんな状況でやってきたのだ。

「税務調査させてください」と。

ちなみに年間のお寺の収入は余裕で一千万円以下だ。

こんな零細寺院になんの用事があるというのだろうか。

税務調査は突然に

6月上旬に突然、税務署から電話がかかってくる。丁度、顧問の会計事務所さんがお寺に来てもらっていたので電話を代わってもらった。

1ヶ月後の7月中旬、2日間税務調査したいと。

丁度予定が空いていたので了承することにした

会計事務所さんがうちに来ていたのはお寺のトイレの修復についてどういう風に会計処理をしていったらいいか、今後同じようなことがあったらどうしていくかという事を相談中であった。その最中に税務署からの電話だったので、

「盗聴でもされてるのか!?」

と、ふたりで辺りをありもしない盗聴器を探し見渡していた。

税務署の中でも「源泉課?」というところから連絡で、税理士さん曰く給与に関して源泉を逃れている所得を探すための部署だそうな。

ちなみに母曰く税務調査が入るのは15年ぶりだそう。
母も父住職も会計には疎く前回はずいぶん絞られたそうだ。。。

今回は会計2年目の新米中に新米の私が対応することになった。

もう不安しかない。

税務調査に入る理由

居合わせた税理士さんと「なぜ税務調査が入ったのか」という話になった。

・父から私へ代替わり(厳密にはまだ)
・給与の変動
・庫裡のリフォーム
・永代供養墓の建碑
・母が園長するこども園にも税務調査が二日間入った
・保育園から寺 寺から保育園 へと何か目をつけているのではないか

その5点。うち母が園長の保育園を運営している。といっても社会福祉法人なのでお寺とは全く別運営で、住職は理事長をしているも私自身は全く何も関わっていない。税務署はそれを知らないので、寺と保育園になにかお金の出入りがあるのでは?という狙いなのではという見立てもあった。

加えて私が数年前、お寺に帰ってきてから会計からお寺の運営までとりあえず数年にかけて徐々に父から私にシフトして行っている途中であった。

私自身はこのタイミングで税務調査があるということはこれからお寺の運営をやっていく身でなかなか勉強になるのではないか?とプラスに考えでいたのが

それは甘い考えであった。

税務署から用意しておくものをリストを聞いた、

・給与明細
・講師料の領収書

以上それだけだった。 帳簿や出納帳は出さなくていいと。税理士さんとクエッションマーク状態であったが、念の為それ以外の資料は全部用意した。

結果的に当日には、あれ出してこれ出してほしいと資料手当たり次第お願い出さされた。なので事前準備は入念にしたほうがいい。これは要注意事項である。

用意しておく資料

税務署からは「5年分調べる」と言われたので自ら用意した5年分の資料がある。

・給与明細
・源泉なんとか表
・年度会計決済
・総勘定元帳
・出納帳 帳簿
・経費の領収書
・レシート
・お布施等の領収書
・お寺の通帳
・個人の通帳
・念の為置いておいたお布施袋
・年会費の運営資料
・お参りのスケジュール帳

それぞれ5年分だ。これが探すのになかなか苦戦したが税理士さんの協力もあり数日で終わる。

税務調査は一ヶ月後だが資料の準備は数日で終わった。なにもやましいことはないのだから焦る必要はない。だが根掘り葉掘りお金を調べられるというのは気持ちが良いものでない。税理士さんから連絡が入る、

「調査員は3人くるそうです。ふたりはベテランで特別国税調査官。いわゆるトッカンです」

その日から私は夜眠れなくなった。。

お世話になってるお寺さんに相談すると、

「この界隈じゃコロナ明け記念すべき一発の目の税務調査じゃない?傾向と対策教えてくれよな!」

と、気楽に声をかけてくださった。チックショー。

税務調査に向けて資料の準備以外何をしたらいい?心構えは?必要なものは?対策は!?

会計事務所から特に連絡はない。
そんな構えることはないということだろうか。
いやいや、じっとしておれない。
先ずはYouTubeで情報が始めるが見れば見るほど不安しかない。
病気を安易にネットで調べる時に似てる。
行き着く先は最悪の状況だ。
結局、素人には全くわからない。

とはいえ信用できそうな税理士YouTuberが何人かいらっしゃった。同じ三重県出身となんと元国税のお坊さんとか!これは心強い!!おふたりの税務調査に関する動画ひたすら見た。

ところがやはり見れば見るほど緊張感がますばかり。
これはオススメに値しない。顧問の税理士さんにちゃんと相談するのが良いというのが結論だ。

もっとも恐るべき重加算税とは

とはいえ税理士YouTuberお二人に共通していたのは、

「絶対にウソをつかないこと」

ウソ=意図的な仮そう隠蔽 バレれば即、重加算税決定だそう

追徴課税は大きく過小申告税と重加算税に分かれていて、 前者はうっかり計上が漏れたものに課せられる税。

後者は意図的なのでいわゆる「脱税」と同義語だそうな。

これは聞き逃せない事案だ。私の耳から離れない言葉になった。

重加算税は過小申告税に加えて35%以上課されることになるとか。延滞税など多いと例えば100万の計上漏れがあるとそれ同等の追徴課税が課させるとか!こわいよ重加算税こわいよ。他には税務署のブラックリストにのったり。税務調査が頻繁に増え調査期間ぎ七年間になったり。

デメリット満載でこわいよ重加算税。

税理士YouTuberの動画はあくまで会社に追徴される法人税や個人事業主などへ注意喚起である。

そう、うちはお寺で宗教法人だから当てはまることはないんじゃないか。と思っていたが例外ではないそうだ。もちろん法人税はないが、どうやら個人に対して地方税に重加算税が課せられることがあるのである…ひぇ〜…

重加算税を免れるには絶対にウソはついてはいけない。
そして、意図的を認めてはいけない。

さらに税務調査の最終、調査員が直筆するレポート「質問応答記録書」にはサインしてはいけない。サインすれば意図して所得隠滅を認めたことになり重加算税決定だそうで、そんな時は「税理士に相談する」が正解なんだそうだ。

という動画を夜な夜な目にしていたせいか私は、
「重加算税だけは絶対に免れるべし」
という洗脳にかかってしまっていた。といっても意図して計上漏れなんてないし顧問会計士さんもいるしお布施袋もあるし資料はぬかりなく用意できるし。完璧だろうと思っていた。

ところが、後に税務調査の恐ろしさを知ることになる。

税務調査に対策はない!?

又、対策としては「余計なことを話さない」経営者はしゃべりたがり。調査員は何気ない会話から根掘り葉掘り計上漏れがないか探るそうなのだ。
坊さんもしゃべりたがりが多い。私もしかり。だからこれも注意せなば。

そんなことをネットで調べながら前日を迎える。そして会計事務所の社長と税理士さんがおこしくださった。

税務調査前日。顧問の会計事務所の社長と税理士さんと打ち合わせ。それがうちの税理士さんなんにも教えてくれない!用意した資料ものを報告すると、「これで大丈夫です」くらいで、はじめての税務調査の予行練習とか何を聞かれるとか全然教えてくれない。そうなんだ。うちの税理士さん税務調査専門じゃないくて会計事務所なのだ!もうやっぱり不安しかない!

というのも見るからに社長も税理士さんもクタクタだった。なぜならうちの税務調査前日まで母が園長を勤める保育園に税務調査が入っていたからである。その様子を聞くと、

「細かかった。とにかく細かかった」

の一点張り。

例えば、神社から獅子を呼ぶらしくそのお礼は神社のものか個人かわかる書類を用意せよ。など聞いた事もない資料要求されたりあったそうだ。

要は税理士さんも、

「よくわからんけど今回の調査員はとにかく細かいから覚悟するように」

といった感じであった。心構えもいいけど対策を教えてくれよ〜と、私は最大の味方に対して不信感と苦笑いで税理士さんを見送った。でも大丈夫、実際に会計担当してくださるのは税理士のAさんだ、Aさんに頼るしかない。

税務署曰く、調査中の最初(10時)と最後(16時前)以外は立ち会いは必要ありませんのでお仕事くださいと言われていた。が結局、私は2日間ともほぼ付きっきりであった。

はじめまして特別国税調査官

税務調査当日、午前10時前。顧問会計事務所の税理士さんと担当社員がこられた。税務調査の立ち会いは本人と税理士でなければできないそうだ。

部屋は庫裡の仏間だ。五年分の布施袋をはじめ必要であろう資料を並べた。こんなものが必要なのかといったくらいに。

10時。ピンポンがなるとドアのすりガラス越しに三人の姿が現れた。お互いに丁寧な挨拶を交わし仏間へ案内した。季節は真夏、気温は三十度以上でむさ苦しいがさわかやで好印象な三人だ。

一人づつ名刺をいただいた。30代前半の男性だった。名刺には「特別国税調査官」バリバリ仕事に熱がはいる年頃だろう。この人は要注意!と、肌感でわかるほど目が鋭い。もう一人は50代後半白髪混じりの男性。名刺には同じく「特別国税調査官」いかにも本物のベテラン調査員だ。落ち着いた様子。

3人目は…20代の女性調査員、名刺がなかった。先日異動されました感で入署間もないご様子。

ご挨拶もそこそこに、ベテラン調査員が、

「暑いですねぇ」

と世間話をしかけるが私はそれを無視した(笑)

もうそんなことに気を裂く余裕なんかないからである。

30代調査員が、

「調査にあたって少しお話をお聞かせ願いますか」

「まずはどのような行事が年間で行われるか教えてください」

てっきりはじめのヒヤリングでは私の趣味など私的なことを聞かれるのだろうと準備したいたので驚いた。「YouTubeでお坊さんの法話を聞くことです」という準備が不発に終わる。例えばドライブとこたえてしまうと、ガソリン代や車のことなど、経費にならなくなるという事態になるそうで要注意だからだ。

慌てて「年間行事表があるのでもってきます」と、寺務所走る。年間行事を調査員と見ながらひとつひとつ丁寧にどんな行事か説明をする。同席している税理士さんはその様子を事細かにメモすることが仕事のようだ。

すると調査員が「永代経法要とはどのような法要ですか?」と狙ったように聞いてきた。

「ああこれか」と思った。30代の若い兄ちゃんがお寺のことを興味もって聞いてくれるなんて嬉しい!となって、ついついいろいろ話してしまう。

「そうなんですね。永代経軸をかけるんですか。それには何がのってるんですか?」と調査員。

「しまった」と思った。やましいことは何もないがこれかーと。

嘘もつきようもないので、

「永代経軸には永代経懇志をあげてくださった方の名前と、そのご縁となった方の法名が書かれています」と言うと、

「ほうほうなるほど」と手持ちのファイルに何かメモをしている。

本堂に貼ってある永代経懇志リストがあるがその存在はは知らないのだろうか、と思いながら話を聞いた。

気になったのは調査員3人共が持っている「◯◯国税庁ファイル」という赤色のファイル。ここには何があるのだろう。お寺や私何の情報が握られているのだろう。と怖いファイルだった。

結果何も無かったが、途中チラチラと他人の免許証のコピーや
明らかに怪しい感じの書類が見えたのでただただあのファイルは怖かった。

すると30代調査員が女性調査員に「それじゃあ後でその永代経軸チェックしてもらっていいですか」と、指示を出す。やっぱりか!ここでもう余計な事いうのやめようと決めた。ヒヤリングで1時間半を要した。

他には「大きな寺の修復はあるか」「なぜあなたが会計担当しているか」「院号はどうなっている」などなど…根掘り葉掘り聞かれた。

余計な事は言うまい!と決めたけど、「嘘はつかない」を鉄則にしていたので、まあバカ正直にいろいろ話してしまった。後に調査員的には私の姿が好意的に調査に協力してくれる姿勢だったということでお褒めの言葉をいただきましたが、そんなんいらん(笑)

けど、相手も人なので反抗的な態度は取らない方が吉だろうと思う。

ヒヤリングの後は、現金残金の確認だ。寺務所に調査員ふたりをいれる。仏間に残るベテラン調査員は税理士さんとやりとりをしていましたがわからない。私は現金残金チェックに手一杯。札と小銭一枚一枚ひとつひとつ丁寧に数えた。

そういえば30代調査員は色黒で「お金がない」の時の織田裕二に似てる。白髪のベテラン調査員は孤独のグルメの松重豊に似ている。以降、そう呼ぶことにする。

女性調査員と私は残金をチェック。織田調査員が寺務所をキョロキョロと見渡す、「そこの引き出しにみえてる小銭はなんですか」と。お賽銭が見つかる。
「計上されてないなら残金で数えてください…あっその袋は?」まだ計上してないお布施が見つかる。「同じく数えてください」織田調査員がやばい!

織田調査員「この棚に積んであるお布施袋の束はなんですか」と、何かの時に使える慶弔用に置いてある新品の布施袋ですと説明すると納得してくれた。
目は厳しいが筋の通る説明をすると納得してくれるようだ。そんなこんなで初日の午前は残金チェックでタイムアウト。

「13時にまたきます」と、一旦解散。

1日目後半戦

立ち会いの税理士さんふたり、「やっぱりかなり細かいですね」と一言。
いやーそんなことよりとにかくストレスが半端ない!ヒヤリングだけでこのストレス。これからリアルな会計税務調査が2日続くとか、まさにまだ序ノ口であった。税理士さんふたりもお昼ご飯へいかれたが私は食も喉を通らない。

13時。会計事務所の税理士さんと担当Aさんが到着。すぐに調査員三人の再来。 「早速、調査再開いたします」「七月の出納帳ありますか」

私らお寺のものが作る出納帳を担当のAさんにお渡しするとすべて入力しなおして「総勘定元帳」と言うものを作ってくださっていたらしい。5年分。これが今回大活躍だった!

しかし7月はまだ未提出だったため私が作った出納帳を手渡すとベテラン調査員が7月のお布施袋を手元にチェックし始めた。こんな直近から調べる事に驚き桃の木20世紀。 そして織田調査員がこちらを向いて鋭い目つきで聞いてきたのだ、

「過去帳はありますか」 ついにきたか…

過去帳は見せるのか見せないのか問題

「過去帳」とは葬儀の記録みたいなもので、往生なされたお方の法名、俗名、性別、喪主、住所、電話番号など。個人情報S級レベル。慎重に神経質に扱わないといけない取扱厳重注意ものでなのである。

ここから先は

16,004字 / 5画像

¥ 490

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?