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「106万円の壁」撤廃がもたらすA型事業所の危機
今回のnoteは、訴求を強めるために、普段の穏やかな52歳のおじさんとは違う口調で書き進めます。
というのも、障害を抱えながら就労継続支援A型事業所で働く一員として、とても困った状況が世の中に起こりつつあるからです。
今回は、以下のリンクのニュースについて、就労継続支援A型事業所で働く一員としての感想をお届けします。
はじめに
最初に、以下のニュースをご覧ください。
【山形】県内最大規模・障害者217人解雇へ…新庄・天童などの「A型事業所」7カ所 2026年3月閉鎖
障害者の就労支援に取り組む新庄市の会社が、県内7カ所の事業所を2026年3月で閉鎖することがわかった。社会保険料の適用が拡大される、いわゆる「106万円の壁」撤廃に伴う負担増が要因だとしている。
就労継続支援A型事業所の閉鎖を決めたのは、新庄市の障害者福祉サービス「ユニオンソーシャルシステム」。
ユニオン社は、一般企業で働くことが難しい障害者と雇用契約を結び、硬式野球ボールの製造などを通して就労の場を提供する「A型事業所」を、新庄市・天童市など4市1町で計7カ所、「B型事業所」を4カ所のほか、グループホームなど福祉施設の運営を手掛けている。
会社によると、このうち「A型事業所」を2026年3月いっぱいで全て閉鎖し、障害者217人を解雇する方針だという。
県によると、200人を超える障害者の解雇は県内最大規模となる見通し。
厚生労働省が2024年12月、年収要件のいわゆる「106万円の壁」を撤廃する方針を固めたことで、社会保険料の企業負担の増加が見込まれる中、ユニオン社も年間6800万円余りの人件費の増加が避けられないとしている。
加藤翔社長は「負担に見合うだけの収益を上げるのは難しいと判断した。力不足であり、大変申し訳ない思いでいっぱい」と話した。
解雇する障害者については、ほかの「A型事業所」などへの転職を支援し、雇用先が確保できない場合は「B型事業所」での受け入れを計画している。
以上で、記事の引用は終わり。
2026年3月、山形県内最大規模の就労継続支援A型事業所が閉鎖され、217人の障害者が解雇される。
この決定の裏には、「106万円の壁」撤廃という、一見労働者にとって有利に見える政策変更がある。
しかし、現実はどうだろうか?
これは単なる一企業の問題ではなく、全国の中小企業や福祉事業所の経営を根本から揺るがす【社会の危機】だ。
そもそも 106万円の壁とは何だったのか?
「106万円の壁」とは、短時間労働者が年間106万円以上の給与を得ると社会保険の適用対象となり、企業が負担を強いられる、という仕組みだった。
これを撤廃することで、パートやアルバイトも社会保険に加入できるというのが政府の主張だ。
しかし、現実は異なる。
企業側の社会保険料負担が急増。
特に中小企業や福祉事業所は、ただでさえ厳しい経営環境の中でこの追加コストを負担しきれない。
結果として、労働時間の削減、雇用の縮小、さらには事業の閉鎖が相次ぐことになる。
就労継続支援 A型事業所に与える致命的な影響
就労継続支援 AA型事業所は、一般企業での就労が困難な障害者と雇用契約を結び、最低賃金を保証しながら働く場を提供する。
しかし、障害者の平均月収は約86,752円(年間1,041,024円)であり、106万円の閾値ぎりぎりの水準である。
【参考】令和5年度工賃(賃金)の実績について (厚生労働省)
このため、制度改正によってA型事業所の多くが社会保険料負担を強いられ、崩壊の危機に瀕する。
たとえば、今回閉鎖を発表したユニオンソーシャルシステムでは、記事によれば、人件費が年間6,800万円以上増加する。
これでは事業が立ち行かず、閉鎖は避けられない。
だが、このような事例は氷山の一角に過ぎない。
中小企業にも及ぶドミノ倒し
これはA型事業所だけの問題ではない。
飲食業、小売業、介護・福祉業界など、パート・アルバイトに依存する中小企業は、すべて同じ危機に直面している。
特に労働集約型の業種では、社会保険料の増加分を価格転嫁するのは困難であり、事業縮小や倒産が相次ぐことになる。
雇用を守るはずの政策が、逆に労働市場を崩壊させ、社会的弱者を追い詰めるという矛盾。
この現実を直視しなければならない。
障害者雇用の未来はどこへ?
A型事業所が閉鎖されることで、障害者は働く場を失い、社会的孤立を深める。
B型事業所への移行というが、B型の工賃はA型の賃金と比べて極端に低く、障害者の生活基盤は大きく揺らぐことになる。
このままでは、障害者は
「働きたくても働けない」
「社会とつながりたくてもつながれない」
そんな存在となる。
これは、日本が「誰も取り残さない社会」を標榜する中で、許されることなのだろうか?
制度改正が生む新たな【社会的格差】
本来、社会保険の適用拡大は労働者にとってメリットとなるはずだった。
しかし、企業や福祉事業所が負担を強いられ、結果として雇用が失われるのであれば、
それは「弱者切り捨て政策」にほかならない。
特に障害者のように、もともと雇用機会が限られている層にとって、A型事業所の閉鎖は「生きる場」を奪うに等しい。
制度変更がかえって社会的弱者を締め出す形となっているのは、極めて問題だ。
これからの課題と求められる対策
この問題を解決するためには、まず政府が福祉事業所や中小企業に対し、社会保険料の増加分を一部補助する制度を設けることが必要だ。
あくまでも、素人が考えた一例として挙げるが、一定の収益以下の企業や事業所に対して、社会保険料の負担分を国が肩代わりする仕組みを作れば、事業の継続が可能になる。
また、A型事業所が経済的に自立しやすくなるように、企業と協力して新しい仕事を生み出す仕組みも重要だ。
こちらも、あくまでも素人が考えた一例だが、大手企業がA型事業所に製品の一部組み立てや梱包を委託することで、安定した収益源を確保できる。
さらに、A型事業所で作られた製品を市場で販売しやすくするために、政府が販路の拡大を支援し、ECサイトや地域の商業施設での販売機会を増やす施策も有効だ。
加えて、障害者がA型事業所以外でも働ける環境を整えるため、企業に対して税制優遇や助成金の仕組みを拡充することが求められる。
すでに行われているかもしれないが、障害者を一定人数以上雇用する企業に対して、法人税の減免や補助金の給付をさらに推進することで、企業側も積極的に障害者雇用を考えるようになる。
福祉施設と企業が密に連携し、障害者が働く場を広げるための実践的な支援制度を作ることが、これからの社会には不可欠だ。
「弱者を切り捨てる社会」でいいのか?
「106万円の壁」撤廃は、表面上は労働者のための政策のように見える。
しかし、その負担を中小企業や福祉事業所が背負いきれなければ、結局のところ、最も弱い立場の人々が仕事を失い、社会から孤立する結果となる。
これは単なる「企業の負担増」の問題ではない。
「社会のあり方」が問われているのである。
日本は、すべての人が「働くことを通じて社会参加できる」仕組みを守ることができるのか?
それとも、社会保険料という名の重荷が、弱者を切り捨てる道具となってしまうのか?
今こそ、国民全体でこの問題について、真剣に議論しなければならない。
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