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●散文、雑記、詩っぽいの。

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ギンフルマの青いやつの延長とか
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#日記

日記 2024.4.29

 数値がリアルタイムでグラフ化され、数秒おきに更新される。
 それは実体世界の何かの観測結果を示しているのだけど、表示されるのは数学Iのテストの問題用紙みたいな、シンプルな白と黒の画面。繰り広げられる微妙な変化に、規則性や意味を見出そうとしたけど、ほんの1日見ただけでは全く何もわからない。
 そのまま新しい1日が終わった。
 無力さを感じた。

 池の鯉を眺めているのとほとんど変わらなかったなぁ、

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2024.4.4

 きのう。
 やる事がなかった。
 家にも居られない日だった。
 映画館へ『52ヘルツのクジラたち』を観にいった。
 原作が小説なのは知っていたけど読んだことはなく、あらすじも知らずに行った。

 これは映画の感想や評価を述べるものではない。
 日記で、ちょっと虚構も混じっている。

 上映館はよく行くにぎやかなシネコンではなく、行き慣れない古い映画館のほうだった。
 電車に乗って、駅で降りた。

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ダンゴムシの死んだ部屋。

ダンゴムシの死んだ部屋。

 3月9日。

 自分の部屋で掃除機をかけていたら、床の真ん中に黒くころころしたものが落ちていた。近眼なので最初はよく分からなかった。床に頬をつけるほど屈んで、やっと、それがダンゴムシの丸まったやつだと分かった。虫は苦手じゃない。指先でつついてみた。動くようなら窓から外に出してやろうと思っていた。でも動かなかった。

 スマホで軽く調べたら「ダンゴムシはよく物陰にいて、乾燥に弱く、湿った土を好む」

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音で耳を塞いでいただけだった。

音で耳を塞いでいただけだった。

 ゲームのBGMを切るようにした。
 作業中に音楽かけるのをやめた。
 散歩にイヤホンを持っていかなくなった。
 寝る前に聴くでもないのにラジオつけるクセやめた。
 音の無い時間を増やすために。

 自分の考えは独り言のように声として頭の中を流れている。だから自分の声を聴きたいときも、周りは静かな方がいい。
 一定のリズムを刻み続ける音楽にはつい、乗せられてしまうものだなと思う。出来上がった他人の

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雑記 2020.4.24

 5秒以上記憶が保てない身になったら、同じ杭の周りをぐるぐる回るだけでも毎分新しい発見ができる充実した人生を送れるようになる。

「毎夜同じメンツで飲んで、同じような話をして、次の朝には何も覚えていなかった」
「あの人ツイッターでいっつも同じ話してる、まるで初めて思いついたみたいに」

 話は自分で忘れるから再び話したくなるんだ。
 記憶してるものを再び話す必要はない。
 5秒前にした話を覚えられ

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雑記 2019.03.04

「今居るのは今の自分だけで、過去の自分は今の自分にとっては他人と同じだよ」

と告げて、泣いて縋る過去の自分を振り払うイメージ。
心苦しい。
置き去りにされた過去の自分が、寂しさを押し殺した表情をして、それから背を向けて、とぼとぼと闇に飲まれて行ってしまうのではないかという気がしてくる。
それは決定的な離別。
「君の命は救えない」と宣告してしまったような罪悪感。

けど冷静に考えたらそうはならな

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永遠に新鮮な気持ちのまま「旅」の快楽をしゃぶっていられたら最高なのに。

永遠に新鮮な気持ちのまま「旅」の快楽をしゃぶっていられたら最高なのに。

 ひとり小旅行をして思った。
 見ること、知ることはそれ自体が快楽だ。
 初めて見る景色。
 初めて知る事物。
 自分が今までに持っていなかった知見や記憶を新たに得るということには、それ自体に快楽の性質が伴っている。
 ただ快楽は快楽でしかない。それだけで全てが満たされるわけではない。

 小旅行は好きだ。
 ひとり旅が好き。
 けれど年々、旅を重ねるほど、旅だけでは埋められない感覚のほうに心が向

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もえろよ、もえろ。

 落ち葉の集め方が下手だったのか、それともマッチ棒を長く持っているのが怖くて適当に放り投げてしまったせいか、葉くず枝くずの中に点きかけた種火はやがて光を失って冷たい炭になってしまった。僕はその始終をじっと見ていた。炎は徐々に消えていく。夕陽と同じで名残がある。

 火が消えていくことと、感情が消えていくことは似ていると思った。
 最近、自分のうちに湧き上がる感情を、自分自身が否定してかき消してしま

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雑記 - 2017.6.21

 「どうして自分は誰からも理解されないんだ」

 という思い込みが
 いや決してその当人にとっては思い込み等ではない完璧に立証され得る現実にしか見えないものなのだけれど
 そういう

 「どうして自分は誰からも理解されないんだ」

 という思い込みが
 いや決してそれは思い込みばかりとは限らず実際誰からも理解されない感性や考えを持つ人というのもこの世には少なからず存在はするのだろうけど大半はそうで

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合わせる。

 「人に合わせることが必要だ」
 「相手に想像力を働かせなさい」

 そんなようなことを言われた。
 今日は疲れる1日だった。

 ほのかに湿った土の匂いが薫るこの季節特有の軽やかな風は、夜に入って街の空気が動の音から静寂の音へシフトするに従ってよりいっそう心地良く感じられるようになった。
 その夜風に誘われるまま、ベランダへと歩みだす。

 夕暮れ時はiPhoneで写真を撮り歩いたんだ。
 人に

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散文。

 『青少年育成なんちゃらセンター』と書かれた白い乗用車が通った。頭にスピーカーを載せていた。そこからあらかじめ録音されているらしい女性の声が自動で流れ続ける。

 「21世紀は皆さんが主役です。明るい希望を持ちましょう。心と心のふれあいを持ちましょう。」

 車内ではシルバー人材からきっと時給なんぼで雇われているのであろうおじいさんが、なんの感情もなさそうな表情でハンドルを握っている。

 明るい

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