【八犬伝】映画感想‐空想の世界と現実の江戸
■空想の世界と現実の江戸
八犬伝の世界と現実の江戸の世界を行き来する映画。最初は八犬伝が面白く、まさに物語の世界で今で言う特撮に近い。だから観ていて楽しかったが、徐々に馬琴と北斎のパートが面白く感じるようになる。
■役所広司と滝沢馬琴
役所広司さんの演技が素晴らしかった。勧善懲悪の物語を書きながらも、虚と実の狭間に苦しみながら葛藤して物語を紡ぐのが印象的だ。年齢を重ねていく演技がよく、最初は威勢があり、北斎とギャグのような関係だった。それが目の病気を患ってからはどんどんシリアスになり、北斎が馬琴に言った言葉が記憶に残る。役所広司さんだからこその強くも儚い、それでいて物語に執念を燃やす馬琴が見れたのだと思う。
■役所広司=滝沢馬琴と内野聖陽=葛飾北斎のリアリティ
役所広司さんの滝沢馬琴と内野聖陽さんの葛飾北斎がすごく良かった。二人の掛け合いが面白く、毎回挿絵を頼む馬琴と絵は描くがすぐに捨てる北斎のシーンが和む。八犬伝の空想的な特撮パートと八犬伝を実際に書く現実パートの対比の中で、リアルな生活感と人間関係が描かれている。最初は空想パートが観たく、現実パートは早く進めと思っていたが、徐々に老けていきながらも八犬伝を完成させようとする姿に現実パートの方に魅力を感じるようになる。