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SNS時代だからこそ「衣食住」とあえて「非効率」を大切にしたい

花森安治の本を町の図書館で読んだ。
たまたま電車の待ち時間に時間があったのでふらっと久しぶりに図書館に入ったことがきっかけだ。

私は時々こういうアナログな感じで図書館で当てもなくフラフラ気になる本を読むのが好きだ。
これは大学生になって図書館や本屋で身に付いた癖。
知らない世界が自分の中で広がっていくのが楽しい。

図書館は大学生の時に卒論を書くのに集中できるから良く通った。
それから雑誌を見るために本屋で立ち読みは悪いから図書館で時間を気にせず流行りのファッションをチェックしていた、思い出のある場所。

暮しの手帖の編集長だった「花森安治のデザイン」という本の一節に、以下のような言葉があった。

「戦争に突っ込んでいったのは、一人一人が、自分の暮らしを大切にしなかったから」

そう、衣食住を軽んじないことは案外見落としがちだけどとっても大切なことなんだ。
首が取れそうなほどウンウンと頷いた。
これ程文章に心を動かされたのは久々だった。

生活を大切にできる人は平和な状態を維持できる心を備えているのではないか。

そう深く共感したのは、前に付き合っていた人の記憶があるから。
あの人はあまり衣食住を大切にしない人だった。

いけない、忘れようと思うのにまた思い出して書いてしまう。
この書く作業も一種のセラピーだということにしておこう。
しばしお話にお付き合い下さい。

食事は殆ど外食か、家ならカップラーメン。
それよりもSNSにニュースやYouTube、お笑い、本など自分の知識を深めることに夢中。
もちろん悪いことではない。息抜きには大切なこと。
けれど野菜は食べないし、全く健康的な食事の人ではなかった。
若いのに大学の健康診断で引っ掛かっていた覚えがある。

少し同棲していた時、私は毎日野菜をたっぷり使った食事を作っていたが、彼は肉が少ない、栄養バランスが野菜ばかりだと悪いと良く私を批判していた。

それが性格に直結しているというと少し乱暴なのは承知だが聞いてほしい。

ある日ニュースや新聞の政治に対して良く批判していた。

テレビの前で「いつまで国は旧優勢保護法の話し合ってんねん!」とキレていた。

「別に間違ってなかったんやから、今さらまたそんなこと」

私は耳を疑った。
悲しさと怒りが込み上げてきた。

「昔は今よりも生まれる人が多かったから、命の価値が今より低かった。だから当時は人工を減らす意味でも有効だった。旧優性保護法は間違ってなかった」

命の価値が低かったとは何。
命の価値に高いも低いもない。
私は悲しくて彼の前で激しく泣き、あり得ないと何度も言った。
それでも彼はWikipediaでちゃんと読んでみろ間違ってないからの一点張り。
キレる内容が内容なだけに私は泣きながら大喧嘩した。
この時彼が言った差別発言がショックで悲しくて、その晩は泣いて眠れなかったことを覚えている。

知識人ではあったと思う。
けれど思いやりに欠ける人だった。

そ服も着れたらいいという感じで、洗濯を干すときにシワシワでも構わず、着るときもシワシワ、靴はボロボロでも気にしない。
スニーカーは1足しか基本的に持っていない、シャツや靴下は穴が空いていても着ようとする人だった。
せめて靴はもう1足増やした方が、雨で濡れた時に履き替え用があっていいよ?と言うと、靴は1足でないと管理できないと喧嘩になった。
同棲していた時は服の管理を私がしていた。
(今考えるとこれじゃ完全にお母さん)

住環境にも気を配らない人だったように思う。
一人暮らししていた時は、部屋は2週間掃除機かけなくても平気で、ペットボトルの飲みかけがベッドの下から出てくる有り様。
同棲してもそれは変わらず家事を頼んでも、仕事が私よりも忙しいから無理と言う。

好きになった人とはいえ、正直ここまでの人は初めて見た。

知識は良く知っていて賢い人でも、基本的生活習慣が身に付いている人の方が性格的にも結婚には向いているとようやくここに来て理解した。


私とは合わない人だった。それが分かって良かった。

そして話は変わるが、SNSはとても便利だけど最近のXやインスタなんかを見ていたら閲覧数やいいね稼ぎの為の投稿に思えて仕方がない。

おすすめに出てくる投稿だって正直見るのがしんどい。
「これやってる人、ダメです!」
「人材価値が無くなる行動とは」
みたいな謎に不安を煽る刺激の強い言葉で心が乱されるように感じる。

そんな刺激の強い言葉を見ていると、自分の暮らしである衣食住が荒れたり雑になってくるように思えるから、あえてそういう見出しは見ないようにしていた。
それでも最近はSNSを開くと必ずそういう見出しが出てきてしんどい。

noteはそういう人を脅すような見出しがあまり無いから、安心して自分の意見を言うことができるような気がする。

言葉を大切にすることと、衣食住を大切にすることは同じこと。
ひいてはその発言や行動は自分を大切にすることだと思う。

ところで衣食住の順番について、色々な説があるが私は人が興味を持っていく順番だという説が一番好きだ。

子供の頃から思春期になるにつれて自意識が発達していくから、服に興味を持つ人は持つ。
そして食べ物、大人になるにつれてインテリア等の住環境にこだわるようになる。

それらに自分なりの生き方が反映されて、生活が形づくられていくことで、人はそれぞれの価値観を持ち、心の拠り所、安心できる場所を作っていくのではないだろうか?

私は衣食住が好きだ。
一番初めに興味を持ったのは衣。
けれど中学生の頃から衣である衣服、そして衣服を取り巻く環境に疑問と悲しさを持っている。

衣類はここ30年のうちに大量生産が進み、品質が落ちているのだ。
改めて考えると本当に悲しい。
両親が若い頃に買って今も大切に着ている90年代の服は、量販店で買ったものでもまだ品質が良かった。
80年代の服なんか、バブルで景気が良かったのもあるけれど兎に角縫製もいいし、生地もいい。
当時これをいくらで買った?と聞くと大体5000円くらいという。
いま5000円で服を買うとなると、せいぜいユニクロとかのちょっといいファストファッションが買えるか否か、といったところだろうか。

服の品質だけではない。
衣類を取り巻く環境も、私たちの衣服に関する基本的な知識も何もかも質が落ちている。

10代から30代の若者は、良い服をあまりにも知らない。ファストファッション全盛期で育ってしまったから、いい服は裏まで綺麗に処理されて美しいとか、柔らかいウール100パーセントの快適な着心地とか、知らない人が多い。
トレンド性と価格を重視する。本質的な着心地や質の良さは二の次だ。

昔あった素晴らしい技術を持った縫製工場や衣類にまつわる工場たちは、製造費の安い海外の工場に奪われて、数が減っていった。

ここまで今の世の中の人が服に対する知識が薄くなったり、服の良し悪しを見抜けなくなって、使い捨ての様になってしまったのは、生産性や効率性、利益を重視しすぎた成れの果てだと思う。

トレンドをどんどん生み出すことはファッションの宿命ではあるけれど、あまりにも大切な資源を無駄にしているし、それと同時に私たちの良いものを知る、伝えていくということがおざなりにされている。

だから、非効率ってただ一方向の価値観なのではないか?と思う。
無駄って、ある一つの物差しで見たらそう見えるけど、違う物差しを持ってきたら、それは途端に無駄ではなくなる。

効率性や利益追求だけでは、人が今まで作り上げてきた技術や文化、大切な心まで奪われてしまう。

トレンドは確かにキラキラしていて、楽しいし、気持ちが高揚するのはわかる。
けれどその代償で資源を無駄にしたり誰かを犠牲にしていないか?と一度立ち止まって考えることが大切。

極力無駄にしない為に、できることを考える。
持っている服の丈を変えたり、刺繍を施したり、染め直したりとリメイクすることで新鮮さを楽しむことだってできる。
どうしても着ないなら、誰かにあげるか、フリマサイトやユーズドショップに持っていき、なるべくゴミにしない。

個人的にはリメイクが一番いいなと思う。
刺繍や染め直しは自分でしてみるととても愛着が湧くものが出来るし、素敵な趣味にもなる。
アイデアを実践して楽しむことは一種の高揚感だ。

それからいい服を売っているお店に実際に言って、手に取って裏まで造りを見ることもいい。
出来れば無理のない範囲で品質がよく、丁寧に作られた服を購入出来ればいい。
セレクトショップに行くのが気が引けるのなら、古着屋で年代物の服をじっくり観察してみると、造りが良いことに気が付ける。

そうやってじっくり吟味して買った服は愛着が湧く。


服を買うお金が無いなら、自分で作ってしまうのは凄く素敵なことだと思う。

真っ白のTシャツに布用のペイントを施してオリジナルのアートTシャツを作ってもいい。
ニットの編み方を勉強して、冬のセーターやマフラーなんかを作れば良い。
シャツやブラウス、ワンピースだって自分で作ってみれば、一着の服を作る大変さが分かるから、布や服という資源をより大切に出来るようになるのではないか。

そうやって自分で一生懸命手を加えた服は愛着が湧いて、大切に出来るように思う。

実際に私は大学生の被服実習で作った膝丈スカートを大切にしている。

最近はデニムパンツの上にレイヤードして着ることもある。要は着こなし次第だ。

世の中の服に関心がある皆に言いたい。
服を自分で作ってみることでその大変さを知り、資源と作り手に尊敬の気持ちを持とうよ!

暮らしを大切にすれば、物を大切にすれば、自分のことも、人生も大切に出来ると思う。


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