三つ子の魂百まで 〜アップデートはままならない〜 『タガヤセ!日本』を読んで
今年の「青少年読書感想文コンクール」高校の部の課題図書『タガヤセ!日本』を読みました。
子どもが小6の時、図工『未来のわたし』で農業してる自分を作りました。
そして今年、高校の部の課題図書とはいえ河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズですから、中1の子どもも頑張れば読めるんじゃないかと思って買ってみました。
隗より始めよでまず私が読みました。
帯には「現役官僚YouTuberが全力で“推す”農業の世界!」の文字が踊っています。
日本の農業について、世界からも高評価な農作物やスマート農業など素敵なところも、食料自給率や耕作放棄地など心配なところも書いてあります。
推しの良いところしか語らない依怙贔屓ではないところはさすが「公」平だなと思いました。
また、著者の白石優生さんがどんな環境で育って農業に興味を持ったのか、農業に携わる仕事の中でも農水省職員を目指したのはなぜなのか、そして農水省で実際にはどんな仕事をしているのかという観点で読んでも面白い読み物だと思います。
白石さんは祖父母が農家だったので、小学校の社会科の授業で「農薬は悪」という雰囲気の中、ただ1人「農薬を使った野菜を食べたい」と手を上げたエピソード、そして今そこにタイムスリップして農薬の有用性と安全性を同級生や先生に伝えたいというお話は興味深かったです。
おそらく、当時の教室だけではなく、現在の日本社会にも同じことを伝えたいと考えていらっしゃるのではないかと思いました。
今回あらためて感じたのは、自分が知ってる『日本』や『世界』って、自分が子供の頃に学校で習ったことが土台になっているということです。
今ここにある現実が教科書という書物になるタイムラグを考えると、半世紀近く昔の話が私のベースになっているのではないでしょうか。
当時ですら♪燃える男の赤いトラクター♪が活躍してたわけですから、現在では自動走行のロボットトラクターが無人で働いていると書いてあるのを読んで、驚きとともに「然もありなん」と納得する自分がいました。
バラエティー番組でよく見る「手植えの田植え」は、言い方は悪いですが「見栄えの良いノスタルジックな自己満足」だと思いました。
その見栄えの良さにまんまと息子もハマっているのですけどね。
伝統的な日本の風景を残すために努力されている方を否定するつもりはありませんが、現代的な諸々を排して近代以前のやり方をなぞっているのを見て「わー、たいへーん、すごーい」と我々視聴者が楽しむ向こう側には、とっくの昔に別次元に進化した専門家がいるんですよね。
ドローンを使って遠隔で安全に農薬を散布できるようになり、半日がかりの農薬散布が10分で済むようになったという話も印象的でした。
3ちゃん農業とか3Kは今は昔の物語のようです。
農家さん以外も、私のイメージとは全然違う進化を遂げている人がたくさんいるんだろうと思いました。
実際、著者の白石さんご自身が国家公務員YouTuberという進化系の方です。
しかも国家公務員YouTuberは彼一人ではなく、3年も前から何人もの農水省職員が『BUZZ MAFF』というチャンネルを運営していたのです。
(一番上に『白石の本売れてるの?』という動画がありました)
官庁がYouTubeで情報発信する時代なんですね。
もちろん、農業系、林業系、漁師系YouTuberさんもたくさんいらっしゃるし、YouTube以外のSNSで思いや技術を発信している方もたくさんいらっしゃいます。
私の知らないところで世界はどんどんレベルアップしていました。
おばさんも怠けず諦めずアップデートを頑張らないといけないですね。
本書では都市部の消費者が国産品を買って生産者を応援する『農林水産系推し活』が紹介されています。
消費者は美味しく安全なものを食べることができる、生産者は自分への評価を実感できる、自給率が上がり一次産業が活性化することで国土が保全される、消費者はその恩恵を受けることができるという好循環が生みだそうというのです。
いやこの物価高騰の世の中お金も無いし、理念はわかっても、良いものだ美味しそうだと思ってもなかなか国産に手が出ないのよと言い訳しながら読みました。
普段はスーパーで「ここで私が動かなければ彼は処分されてしまう…」とか言って赤札コーナーで牛乳やはんぺんを買って節約に励んでいる私です。
やっぱり今ある自分を打ち破りアップデートするって難しいです。
でもこの文章を書きながら、近所の八百屋さんで不揃いキュウリを買ったり、地元のお米を買ったりしてるじゃないかと気がつきました。
この前スーパーで買った枝豆に貼ってあった生産者さんの名前を検索してみたら、農水省に表彰されていることが分かりました。覚えておいて今度見かけたらまた買ってみようと思います。
よーし、今度海水浴に行ったら帰りに少し頑張って直売所まで足を伸ばそう。
〜・~・~・~
読書感想文なので、本文400字詰め原稿用紙5枚を目指しました。
普段短い文ばかり書いているので、2000文字って大変だなぁって思いました。
が、途中からどんどん長くなり削るのが大変でした。
がんばれ、読書感想文に挑戦する子どもたち。
~・~・~・~
直売所に行ってきました。