生の短さについて(著 セネカ)
このタイトルにもかかわらず、著者は生は十分に長いと説く。その理由について溜飲が下りました。他にも疑問に思う事柄に対して的確に記述しており人生の指南書のようでした。第一章の「生の短さ」に続いて第二章では「心の平静について」説いていました。これは端的にいったら、人間の怒りのコントロールです。2000年以上も前にこのようなことを考えていた人がいたことに畏怖の念を抱きました。恐らく似たようなことを考え上梓してきた人は多くいるのでしょう。しかしながら、本書が淘汰されず脈々と出版され読み続けられているのはその内容が人間の普遍的かつ本筋を捉えてるからなのでしょう。私は本書を読み終えましたが、読み逃している箇所や理解しきれてない文脈があると思うので、また読み返す必要がある本だと感じました。
難易度60
- 畢竟(ひっきょう)
- つまるところ。結局。
- 蕩尽(とうじん)
- 財産などを使い果たすこと。
- 生殺予奪(せいさつ-よだつ)
- 生かすも殺すも、与えることも奪うことも自分の思うままになること。絶対的な権力を握っていることをいう。
- 伺候(しこう)
- 貴人のそばに奉仕すること。
- 懶惰(らんだ)
- めんどうくさがり、怠けること。また、そのさま。怠惰。らいだ。
- 颶風(ぐふう)
- 強く激しく吹く風。暴風。旋風。烈風。
- 吝嗇家(りんしょくか)
- けち 金銭や品物を惜しんで出さないこと、また、そのような人。
- 涵養(かんよう)
- 水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てること。
- 閑暇
- することが何もないこと。ひま。
- 拐(かどわ)かす
- 人をだまし、または力ずくで他へ連れ去る。誘拐する。
- 儀鉞(ぎえつ)
- 束
- 一日一日を、あたかもそれが最後の日ででもあるかのようにして管理する者は、
明日を待ち望むこともなく、明日を恐れることもない。
- 彼は長く生きたのではなく、長くいただけのことなのだ。
- 生きることによっての最大の障害は、明日という時に依存し、今日という時を無にする期待である。
- 逍遥(しょうよう)
- 気ままにあちこちを歩き回ること。そぞろ歩き。散歩。
- 彫心鏤骨(ちょうしんるこつ)
- 心に彫りつけ骨に刻み込む意で、非常に苦心して詩文などを作り上げること。また、単にたいへんな苦労をすること
- 常住坐臥(じょうじゅうざが)
- 日常、座っているときでも寝ているときでも、いつも。ふだんの生活で。四六時中。
- 追従(ついしょう)
- 人の意見に従うこと。追随。
- 悠久
- 果てしなく長く続くこと。長く久しいこと。また、そのさま。
- 落涙(らくるい)
- 涙をこぼすこと。泣くこと。また、その涙。
- 溌剌(はつらつ)
- 生き生きとして元気のよいさま。
- 切歯扼腕(せっしやくわん)
- 非常にくやしがっているさま。歯ぎしりをして自分で片方の手首をつかむという意味。
- 牢固(ろうこ)
- がっしりしていて崩れないさま。
- 先蹤(せんしょう)
- 前の人、昔の人の事業の跡。前例。先例。前蹤。せんじょ。
- 阿諛追従(あゆついしょう)
- 気に入られようとして、おもねりへつらうこと。▽
- 放縦(ほうしょう)
- 何の規律もなく勝手にしたいことをすること。
- 誣告(ぶこく)
- 故意に事実を偽って告げること。
- 放擲(ほうてき)
- 投げ出すこと。捨ててかえりみないこと。
- 社会との交わりをいっさい断ち、人類と決別し、自己のみに眼を向け、
自己のためにのみ生きるなら、すべての熱意を欠いたその孤独のあとに続くのは、
なすべき(価値ある)ものの完全な欠如だからである
- 自分は死人のように生きるよりは死人でありたい
- 自分のまわりにあるどんな小さな長所をも見逃さずに捉えるよう努めねばならない
- 自分自身さえも、運命に許されて与えられたものとみなし、
自分はそれらを貸与されたのであって、求められれば悲観することなく
返却する心構えで生を送るからである。
- 哀哭(あいこく)
- 声をあげて泣き悲しむこと。
- 危険がやって来てから危険に耐える準備をしても遅い
- 外貌(がいぼう)
- 顔かたち。顔だち。
- 招請(しょうせい)
- 頼んで来てもらうこと。招き迎えること。しょうじょう。
- 耽溺(たんでき)
- 一つのことに夢中になって、他を顧みないこと。多く不健全な遊びにおぼれることにいう。
- 豁然(かつぜん)
- 視野が大きく開けるさま。
- 漫歩(まんぽ)
- あてもなく歩きまわること。漫然と歩きまわること。逍遙。そぞろありき。すずろあるき。
- 措定(そてい)
- 何かをそれとしてたてること、事態や対象の存在を想定したり肯定したりすることをさす
- 茫洋(ぼうよう)
- 広々として限りのないさま。広くて見当のつかないさま。
- 唯々諾々(いいだくだく)
- 事のよしあしにかかわらず、何事でもはいはいと従うさま。人の言いなりになり、おもねるさま。
- 私は肉眼を信用しない。私には審議を識別するさらに確かで優れた心眼がある。
- 吃驚(きっきょう)
- 突然のことや意外なことに一瞬おどろくさま。
- 悖(もと)る
- 道理にそむく。反する。
- 幸福な生を手に入れるには、精神が第一に健全である、
その健全さを永続的に保持し続ける精神であること
次には勇敢で情熱的な精神であること、
さらに見事なまでに忍耐強く、時々の状況に適応し、
己の肉体と肉体に関わることに気を配りながら過度に神経質になることなく、
生を構築するその他の事物に関心を寄せながらも、
そのどれ1つをも礼賛することはしない
- 意気阻喪(いきそそう)
- 名誉あるものを唯一の善、爆ずべきものを唯一の悪
- 快楽に支配されたその日が、苦痛に支配される日々の初まりとなるのである。
- 安心立命(あんじんりょうみょう)
- 人力を尽くしてその身を天命に任せ、どんな場合にも動じないこと。あんしんりつめい。
- 幸福な人とは判断の正しい人のことであり現在のあるもので見ち足りている人。
今あるみずからの所有物を愛している、みずからの所有物の友である人のことであり、
理性の勧めに耳を傾け、理性の勧める、みずからが関わる物事のあり方を受け入れる人のこと。
- 屹立(きつりつ)
- 山などが高くそびえ立つこと。
- 生生流転(しょうじょうるてん)
- すべての物は絶えず生まれては変化し、移り変わっていくこと。▽
- 軋轢(あつれき)
- 仲が悪くなること。
- 珍味佳肴(ちんみかこう)
- この上なくおいしく、珍しい味のご馳走。
- 慫慂(しょうよう)
- そうするように誘って、しきりに勧めること。
- 桎梏(しっこく)
- 人の行動を厳しく制限して自由を束縛するもの。
- 日々、自分の過ちを責め、自分の欠点から何かを取り除くことができれば、それで十分なのである。
- 私の場合、冨は私の所有物であるが、君の場合、君が冨の所有物なのである
- 陶冶(とうや)
- 陶器を作ることと、鋳物を作ること。
- 眷属(けんぞく)
- 親族・同族。 • 従者・配下・家子・所従などの隷属身分の者。
- 大西英文
- ラテン語学者、神戸市外国語大学名誉教授。1949年愛媛県生まれ。京都大学文学部古典語科卒、同大学院博士課程中
退、神戸市外大助教授、教授。2015年定年退任、名誉教授。
- 中野孝次
- 日本の作家、ドイツ文学者、評論家。元國學院大學教授。
- キケロー
- 共和政ローマ末期の政治家、弁護士、文筆家、哲学者である。
- 懊悩(おうのう)
- なやみもだえること。煩悶 (はんもん)
- 淵源(えんげん)
- 物事の起こり基づくところ。根源。みなもと。
- 容喙(ようかい)
- くちばしを入れること。横から口出しをすること。差し出口。
- 角逐(かくちく)
- 互いに争うこと。せりあい。
- 生は「浪費」すれば「短く」、「活用」すれば「長い」
- 他人を難ずる前に我が身を省みよ