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Sales Tech(セールステック)のカオスマップから見えてくる営業の未来

セールステックのベンチャー企業から営業の未来が見えてくる

セールステック市場の学習のため、CB Insightsのブログ記事に掲載されているセールステック・カオスマップをチェックしました。
こちらの掲載企業は全てスタートアップのみで、過去 18 か月以内に資金調達をした、主VC が支援しているセールステック企業の市場マップです。

セールステック・カオスマップ

しかし、非常に残念だったのですが、国内の記事でこのセールステックのカオスマップを解説する記事のほぼすべてがSEO目的で、表面上の話しかしておらず、各社の詳細をまったく見ていないように思えました。

しかし、このマップ内で取り上げられているベンチャー企業のセールステクノロジーソリューションは、従来のセールステックと一線を越えています。日本で営業関連の仕事をするあらゆる人が知っておくべき内容です。

どの話を聞いても、営業活動の抜本的な改革、DXが期待される製品内容で、知るだけでワクワクするものだらけでした。

本記事では、下記の各カテゴリに添って、元のブログ記事内でも取り上げられ注目されている、革新的なセールステック企業とそのセールステック・ソリューションを紹介したいと思います。

  1. 営業能力のイネーブルメント(Sales Enablement & Acceleration)

  2. 顧客管理(General CRM)

  3. 顧客体験(Customer Experience)

  4. カスタマーサポート(Customer Support)

  5. コンタクト・連絡(Contact & Communication)

  6. インテリジェンス・データ分析(Intelligence and Analytics)

  7. 人材育成・コーチング(People Development & Coaching)

①営業業務のDX、自動化はますます発達する:営業能力のイネーブルメント(Sales Enablement & Acceleration)

セールスイネーブルメントは国内でも注目され始めている分野で、主にセールス活動を行うチームやメンバーの生産性を改善するためのものです。海外で有名なツールはoutreachとSalesloftで、大型の資金調達を行い、セールステックの代表格になっています。

また、元記事で紹介されているのはApttus(現在はConga)です。このCongaのソリューションは、まさに営業活動のトランスフォーメーションです。

Congaの製品を一言で言えば、「営業ドキュメントのAI作成ツール」です。
Congaから自動作成されるものは『レポート 、営業提案、契約、アカウントプラン、プロジェクトレポート、請求書、契約更新&ビジネス レビュー』など多岐にわたります。CongaはSalesforceと連携することができ、顧客のライフサイクルごとに自動で作成することが出来ます。
もちろん作成された資料は企業ブランドを反映したデザインが優れたものになっています。

congaの自動ドキュメント作成機能

電子契約機能もついているのでSalesforce内で自動でドキュメント作成→最新バージョン資料を配布→電子契約まで完結することができます。

congaの電子契約機能

これらのソリューションで資料作成と配布の手間がなくなり、見積もりの効率化や契約の自動化が実現できます。例えばカスタマーサクセス用途では、Salesforce内に入ってる過去の製品使用状況に基づいて振り返りレポートを作成して配布するようなことも可能です。

CongaはSalesforce AppExchange で最も人気のあるドキュメント生成アプリであり、AIによる自動の資料作成と配布は、これまでにない新しい概念だと思いました。

②あらゆる企業で顧客管理/CRMが使われる世界へ:顧客管理(General CRM)

こちらはいわゆるSFAで、国内でも海外でもSalesforceが最も有名です。

記事で紹介されていたのはProsperworks(現copper)です。こちらは一言で言えば、『GoogleWorkplaceにCRMの機能を付け加える』製品です。
実は米国のGoogle Workspace 統合アプリとしてはランキング第 1 位の製品を取ったこともあります。

具体的に何が出来るかといえば、「顧客の連絡先情報がGoogleWorkplaceの各ソリューションで管理・利用できる」ようになります。GoogleWorkplaceとは、例えばGmail、Googleカレンダー、Google Drive、Googleドキュメントなどです。

copperでGoogleWorkplaceがCRM化する

わかりやすいメリットとして、Gmailでメール送信をする際に、連絡先から簡単に顧客情報を参照することができます。

copperによりGmailにCRM機能が付与される

また連絡先を見れば、これまでやり取りしたメールやドキュメントの内容が履歴で残るようになります。提出した資料も紐づいているので、この顧客にどのような提案書や契約書を送付してきたのかの管理もできるようになります。主にGoogleスライドやGoogleドキュメントを活用しているビジネスマンのコミュニケーションが非常に便利になります。

連絡先情報にこれまでのコミュニケーションや資料送付、カレンダーなどの履歴が紐づく

「copper」はGoogle 自体も CRMソリューションとして推奨していており、 Chrome Enterprise パートナーとして存在感を示しています。

③デジタルツールをデジタルで解説する:顧客体験(Customer Experience)

こちらはいわゆるWEB接客の領域です。
元記事で紹介されている1社はWalkMeです。

WalkMeは一言で言えば「マニュアルいらずのデジタルガイダンス」製品です。主に企業の情報システム部門が、会社内のシステム活用をサポートする目的で導入されることが多いです。
機能としては「社内で導入しているシステム内に操作ガイドを出す」ことが可能になります。加えてデータ入力時の補助も可能です。

WalkMeにより社内システムをガイド

この機能によりマニュアルレスになり、デジタル製品の企業内活用が増える、ということをWalkMeは提唱しています。
また、WalkMeの導入により、各社内システムの操作状況が利用ユーザーごとに計測することも可能になり、自社の社員がシステム活用のどこでつまづいたかわかるようになります。

社内システムの操作状況が利用ユーザーごとにわかる

WalkMeはジャパンクラウドがアライアンスを組んで日本法人を設立し、日本においても積極的に販売しています。

④ソーシャルを含めたあらゆる顧客接点をカバー:カスタマーサポート(Customer Support)

カスタマーサポートに関する製品は問い合わせのチケット管理ツールが中心で、zendeskが有名です。
元記事の中で紹介されているのはSparkcentral(現Hootsuite)という製品です。こちらはSNSマーケティングツールで有名なHootsuiteに買収されました。この買収により、Hootsuiteは従来のチャネルを超えた「よりスケーラブルなソーシャルカスタマーケア」が可能になりました。

現在の製品コンセプトは「顧客がいる場所で顧客に会う」です。つまり、カスタマーサポート活動として、ソーシャルメディアも含めたコミュニケーション管理ができる製品に進化しました。
TwitterやFacebook Messengerなど含むあらゆるSNSツールでの顧客との会話を統合管理出来るようになったのです。これにより、多岐にわたるソーシャルチャネルの会話内容を、1つの画面の中で管理し、優先順位を付けて対応できるようになりました。

SNSコミュニケーションとCRM、コンタクトセンターを統合する

これらの企業のSNSコミュニケーションのデータは、CRMデータやコンタクトセンターのデータと統合することで、より顧客のコンテクストに沿った会話が可能になります。

⑤顧客との会話もAIで自動化される:コンタクト・連絡(Contact & Communication)

顧客への連絡ツールは、新型コロナウイルスによるリモートワークの普及にてzoomやteamsが一気に普及しました。
元記事で取り上げられているのはConversicaです。
こちらの製品は一言で言えば「AIによる会話自動化ソリューション」です。とうとうAIもここまで来てるのか…という画期的なサービスです。

Conversicaは10年以上、数十億名分の会話情報のビックデータを持っています。このビックデータより、特許を取得している自社の自然言語処理技術を通じて、チャット、メールなどで動的に自然な会話文を吐き出すことができます。

AIが自然な会話文を生成する

このConversicaはカスタマージャーニーごとや、マーケ~営業~カスタマーサクセスごとなどの豊富な会話文データを有しており、メールやチャットのやり取りで、人間が行うような意味ある文章をレコメンドすることが可能になります。
MQLに対してパーソナライズされた会話を生成することでインサイドセールスの効率を高める、フィールドセールスの提案を助け受注率を上げる、相手に合わせた会話を一貫することでカスタマーサクセスの関係を深める…こういったコミュニケーションを助けるのです。

カスタマージャーニーのあらゆるフェーズでパーソナライズされた会話を助ける

Conversicaはチャットボットとは違います。チャットボットは事前に準備したスクリプトを定義されたロジックに添って吐き出すだけです。一方、こちらのConversicaはAIで応答内容を理解して適切かつ自然な会話文を出すため、まるで人が行っているようなコミュニケーションが出来ます。

営業打ち合わせのスケジュール調整、追加の製品/サービス購入の関心測定、延滞金の回収など様々なシーンごとに会話データを有しており、日本語版がないのは残念ですが、英語版であればすぐに利用することが可能です。

⑥商談データは可視化され合理的な営業活動に:インテリジェンス・データ分析(Intelligence and Analytics)

データ分析の領域は、国内ではSFAのレポート機能がこれを兼ねていることが多いです。最近では、電話やウェブ会議の文字起こしツールも流行りだしました。
元記事で紹介されているのはChorusです。

Chorusは、WEB会議のやり取りの会話データを取得し、例えばトップパフォーマーとそうでないものの会話内容の違いは?など分析できる製品です。トップパフォーマーのほうが会話でよく質問をしている、のように、営業組織に示唆を与えます。

商談データを蓄積し、営業組織に示唆を与える

顧客との会話履歴が録音されているので、セールスからカスタマーサクセスへの引き継ぎにも活用ができます。
また、商談データをモニタリングしてメンバーを育成・コーチングするといった育成用途にも使われています。

商談データをもとにした育成

また、商談内容を分析するAIを活用した予測やシュミレーションの機能が豊富です。

  • 商談内容からこの商談の受注率シュミレーションが出来る

  • Salesforceと連動させてどのような会話内容がパイプラインを前進させているかを分析できる

  • 会話のやり取りから取引のポジティブな機会やネガティブなリスクを予測する

  • 取引リスクが高い会社TOP10のようなリストの洗い出しをする

といった、AIを活用した商談の成功確率の予測や、商談を前に進めるもしくはリスクになる点の発見に活用できます。

⑦スマホを軸にマイクロラーニングが進む:人材育成・コーチング(People Development & Coaching)

最後に紹介するのはQstreamです。こちらは「マイクロラーニング」を実現するソリューションです。
マイクロラーニングとは、1日3~5分の短時間で出来る学習を繰り返し実施する手法です。

マイクロラーニングは、従来の「1 回限り」「短期集中型」のトレーニング方法と比較して、知識保持を最大 170% 向上させると科学的に証明されています。
営業力強化、社員のオンボーディング、製品知識の教育、コンプライアンス強化などのシーンで活用されています。スマートフォンでも視聴可能で、短時間のスキマ時間に業務の学習を進められます。

1日3~5分の短時間で出来る学習を繰り返し実施するマイクロラーニング

またQstreamの特徴は、米国で有名なセールストレーニング/コーチング研修とパートナーアライアンスを組み、マイクロラーニング形式に転換して実践的な学習ができることです。
例えば、Sandler Training、RichardsonのConnected Selling Programなど米国のセールストレーニング研修がマイクロラーニング形式で受けられるようになっています。
これらの研修の中で最も重要な概念を 1 日 3 ~ 5 分、週 2 ~ 3 回、全12 週間かけて行います。

加えて、日本でも聞き慣れた、SPINやMEDDICなどのセールス手法をケーススタディ形式で学ぶこともできます。
Qstreamの企業内にオンデマンドラーニングの専門家が在籍しており、企業のマイクロラーニング導入のためカスタマーサクセス支援をしています。

まとめ

今回紹介した製品サービス群から、私が感じたことは下記です。

  • AIで業務を代行することが起こり始めている(資料作成、会話、製品説明など)

  • AIがデータを活用して合理的な意思決定を助け始めている(契約更新、受注率、商談リスクなどのデータ判断)

  • SFA/CRMがより身近なものになり始めている。つまりあらゆる会社がデータを活用した営業が出来るようになってきている

  • SNSやスマートフォンも含めた仕事の設計が進み始めている

弊社はopenpageという法人取引のDXソリューションを展開しております。海外製品の進化を見て、弊社自身の2023年の開発もAI等の先端技術を取り入れ、米国に負けない製品つくりをするぞと身が引き締まりました。

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私が経営するSaaSベンチャー企業openpageにて、事業開発を進めるにあたってのカジュアル面談を行っています。また採用としては営業/マーケ/CS/エンジニアなど全職種を積極採用中です。弊社自身も自社のSaaS成長戦略を日々考えており、ぜひディスカッション出来ると嬉しいです。