中学受験の理科 夏至と天文学者エラトステネス
今年の夏至は6月21日(月)です。夏至は一年で1番昼の長い時ですが中学受験の理科では太陽の南中高度が問題となります。日本ではどんなに高度が高くても90度になる事はありませんが、北半球で南中高度が90度になるところがあります。それは北緯23.4度の地点となります。
これは地球の地軸が太陽の周りを回る公転面に対し23.4度傾いていることが原因です。そのため、北極では太陽が24時間沈まないいわゆる「白夜」となります。
一方、南半球では冬至となり、今一年で最も昼の時間が短く夜が長いのです。真冬の寒さに震えるのがこの6月なのです。今この瞬間、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルは真冬であると日本の小学生はどれだけ実感しているでしょうか。
紀元前3世紀の古代エジプトでエラトステネスという人がいました。アレキサンドリアの天文学者です。もうすでに地球の全周囲の長さがわかっていたのです。アレキサンドリアから南へ約900キロメートルのところにシエネという町がありました。
夏至の時に井戸の底に太陽が映るのです。つまり南中高度が90度になるのです。南中高度が90度になるのは北緯23.4度の地点だけなのです。この地点は線上にあるために地図の上では北回帰線といいます。
アレキサンドリアでは南中高度が82.8度なのでシエネの90度の差7.2度が900キロメートルに当たるので360度、地球1周が約45,000キロメートルと計算できるのです。これは、小学生でもできる単純な比例計算なので中学入試ではよく見かけます。
しかし、こういう緯度と南中高度の関係、季節と南中高度の関係や実際の距離の問題など、考える要素が多様になるとついていけない子供が多いのです。だから入試に出すのでしょう。
数列や規則性のような同じ次元の均質な数の繰り返しでしか学習していないと、数の意味が異なる演算に頭がついていかないのです。このような同じ次元の演算の繰り返しばかりしていると、現実の複雑な社会に適応できないと思うのです。我々が力を得るところでもあります。
この種の思考を持つ子供には天球図による幾何学的練習が有効です。アリストテレスの天動説をモデル化したもので、現代でも高校の学習教材に普通に載っています。これを教科書に、天の北極・天の赤道、黄道などを記入し、緯度によって動的にどう変わるか演習させるのです。
夏至の時は、北緯23.4度地点で黄道が天頂を通るのです。北極星が天の北極にあるので、地平線との角度が緯度になります。昔の船乗りが北極星との角度を測って位置の確認をしたことを追体験させるのです。
今の入試はさらに発展して南緯23.4度や南半球の場合を問題にします。つまり6月の今頃、南半球は冬至に近くなり太陽の南中高度は低くなりますが、12月の20日ごろに夏至を迎えるので南緯23.4度の南回帰線地点では太陽の南中高度が90度になるのです。
つまりサンタがサーフィンに乗ってやってくる頃、一番暑い夏を迎えるのです。天球図で今、冬の季節をいくらでも学習できるのが科学の醍醐味でもあります。文学の季節感とは異なる科学的季節感なのです。