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「抵抗権」について 【慶應法学部論述力テスト対策】日頃からの情報収集が大切

慶應義塾大学法学部の2011年度論述力テストでは、「抵抗権」に関するものが出題されました。

抵抗権に関する読解資料を要約し、
「実定法を超えた、抵抗権」について具体例を交えて論じなさい
(1000字以内)

「抵抗権」については、法学上議論があり、
現実の実定法規範の中において認めるべきだとする「実定法的抵抗権(合法的抵抗権)」と、
現実の設定法規範を超越した「抵抗権(超越的抵抗権)」まで認めないと、抵抗権の実効性は失われてしまうとする説との対立があります。

ドイツ流の「国家学を伝統とする法実証主義」の立場からすれば、
国家秩序と法的安定性に最高の価値を置くので、抵抗権の範囲は限定的に解釈し、「実定法的(合法的)抵抗権」のみ認められることになります。
現実の実定法的法秩序を乱す抵抗権は違法となり、法秩序の破壊と国家統治に対する抵抗行為は「内乱罪」として処断され、「革命」は違法とされます。

それに対して、
フランス流の「人民主義原理に基づく市民社会の共和制原理を理想とする」統治体制においては
既存の統治体が、市民の権利を害し、不当な処断をするなら、その統治体を破壊しても良いとする現実主義が優先します。
その結果、「革命」は肯定され、「超実定的抵抗権」は当然の「市民の権利」として認められることになります。

民主主義原理を徹底すれば、共和制原理のもとに、市民革命は肯定されるでしょう。
独裁政治を許さない共和制原理から、権力者の不正と戦うのは「当然の権利」であり、「市民権の実行」と言うものは「超実定的抵抗権の行使」にもなり得るでしょう。
デモ行進や公務員のストライキは、市民の当然の権利なのです。

市民権行使の具体例は、現代でも見られます。
「香港の民主化運動」や「ミャンマーの軍事政権に対する反対運動」は、明らかに「市民権の行使」であり、「抵抗権の行使」であるとみなす事ができるでしょう。
当然、この「抵抗権」は「超実定的抵抗権」のカテゴリーに入るでしょう。

アメリカにおける「アジア人の暴力に対する反対運動」は、「市民権の行使」であり「抵抗権の行使」と言えますが、アメリカの統治体制に対する反対運動ではないので、「実定法的抵抗権」の一種と捉えることができます。

そのアメリカでも、統治体制に対する反対運動がありました。
19世紀の半ば、まだ州法が黒人差別を合法としていた時代がありました。
作家のH・D・ソローは、そのような黒人差別の法律に反対する意思表示として、納税を拒否しました。
そのことから、彼は、「納税義務違反」として投獄されてしまいます。
彼の書いた「市民の反抗」という著作は、後に行われるキング牧師の「黒人の公民権運動」や、ネルソン・マンデラの「アパルトヘイト反対運動」にも大きな影響を与え、インド建国の父と言われたガンジーの「非暴力、不服従運動」にも繋がりました。

小論文テスト」や「論述力テスト」では、書くための「素材」が大切です。日頃から情報収集をしていないと、何も書けません。
論述力の試験では、「How to write」(どのように書くか)ということより、「What to write」(何を書くべきか)が重要なのです。


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