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Photo by
yabougekijou
百人一首にまつわる想い出
お正月のテレビに飽きると
父が百人一首やるか?と聞く。
百人一首をやると言っても
父が読み手で、とり手はわたしと母
なんと、寂しいカルタとりだろうか。
それでも毎年毎年、父は読み手を
やりたいと無言で視線を送り、
私に誘いをかけてきた。
客人がきて、とり手がふえると
父は笑顔になって読み手を楽しんでいた。
中学高校になると
国語の授業で百人一首が出てきた。
でも、解説するのは一部の有名な句のみ。
それでも、なじみある歌は耳に心地よく
言葉を好きになったのもこのころかもしれない。
穏やかお正月の遥かなる思い出。
あのカルタは
和室の天袋に、たしか、しまってあるはず。
しかし、私は持ってこなかった。
父との思い出のものを
父がこの世を去った寂しさで
囲い込んで自分の懐にいれることを
躊躇してしまった。
なぜなら、実家には
兄夫婦が同居していたから。
変な遠慮があったのかもしれない。
今年は、無性に
父のよんでくれた百人一首が気にかかり
本を買った。
カルタを求めても良かったが、
それこそ読み手もとり手もいない。
歌の背景や意味をもっと
知りたいとも思った。
きっと、昨年の「光る君へ」の影響だろう。
古典の言葉の美しさに魅了されていたのだ。
父がこの世を去り、数年が過ぎたのに
折々にふとやってきては
心を波立たせる。
特にお正月は・・・。
今年のお正月も
この本を見ながら、父の読む百人一首が
遠くから聞こえてきた。
会いたい・・・
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