ハンブルク観光といえばエアバスの工場見学
私、飛行機によく乗るんですが、いままでどんなことをやってたかというと一年間に35回飛行機に乗ったり、一か月の間にドイツと日本を2往復したりしてました。
でも基本的に乗ったり、展望デッキで眺めるたりするだけで、作られる過程を見たことはなかったんですね。なので今回はエアバスの工場見学でそんな自分の欲を満たして家に帰りたいと思います。
この記事は計2日間のハンブルク旅行の2日目です。
もしよかったら1日目も見てみてください。
AIBUS(エアバス)
日本で飛行機に乗るとなると大体はボーイングの飛行機でしたが、最近はJALがA350、ANAはA320系列などを導入していたり、多くのLCCがA320を使用したりと段々と日本国内でエアバスに乗る機会が増えてきました。
個人的にはボーイングとは違って大きな窓や垂直尾翼・前輪の機外カメラなどがお気に入りです。
あとJAL350はRolls-Royce Trent XWB84エンジンを使用していることもあり、かなり静かです。
ANAだとA321neoにも機外カメラが搭載されているので、おススメです。
A320
さて今回のお題はA320です。1987年から製造が開始されたいわばエアバスのロングセラー商品です。
https://www.airbus.com/en/products-services/commercial-aircraft/passenger-aircraft/a320-family
そのためA320といっても一括りには出来なく、機体の素材やシステムなどはアップデートされ続けています。
お菓子で例えるとカントリーマームが小さくなったり、内容量が少なくなったり、パッケージが変わったりみたいな更新が入っています。
(むしろエアバスのA320は大中小のカントリーマームを作って、いっぱい食べる人、普通の人、少食の人みたいに上手くターゲットを拡げていますが...)
加えて航空会社のニーズなどによってエンジンや胴体の長さ、内装などは各航空会社によって変わります。(もちろんこれはボーイングなどにも言えますが...…)
その航空会社の要望に応えるために最終組み立てをするのが今回の目的地のエアバス ハンブルグ工場です。
Hamburg werktouren
最終組み立てが行われる工場への見学はここハンブルグに加えて、フランスのトゥールーズでも行われています。
この2つでの違いは大きく2つ、製造機種の違いと言語設定の違いです。
ハンブルグではA320の組立がメインで、A350の胴体等の製作も行っています。ツアーの言語はドイツ語に英語です。
トゥールーズではA350の組立に加えて、エンジンパイロンの製作を担っています。ツアーの言語はフランス語に英語です。
ドイツ国内のエアバス工場見学
エアバスの工場見学はドイツ国内では3つ。ハンブルクにブレーメン、シュターデ、主にNiedersachsen(ニーダーザクセン州)周辺となっています。
Hamburg(ハンブルグ)ではA320の最終組み立てと機体後方部の製作
Bremen(ブレーメン)ではイギリスから来た主翼にフラップの取り付け
Stade(シュターデ)は垂直尾翼を担当
今回のハンブルクの工場は1人当たり24,90€となっており、学生は21,90€で参加可能です。他の工場はこれよりも少し安いですが、あくまでも最終組み立てではないので納入前の飛行機などは見ることが出来ません。
なので今回はA320の最終組み立ての過程やあわよくばベルーガを見れたらなと思いハンブルクの工場見学へ参加しに行きます。(ブレーメンはベルーガを見るのは出来そう)
尚、所要時間は2.5時間を予定しています。
ハンブルク市内からエアバスへ
基本的にはSバーンとバスを利用して工場まで向かいます。今回はHbfから向かったため一時間かかる予定でした。そう、予定だったのです。
丁度この時ハンブルグではSバーンの改修工事の関係で今回乗るS2は慢性的に遅延をしていました。そのため見事にバスに乗り遅れ次のバスは30分後という完全に詰みの状態になりました。
ということであきらめて今回はAltona駅からタクシーで行くことにしました。
周りの同僚と話しているタクシーの運転手にお願いすることにしました。
「なるべく早くエアバスまで行ってくれるか?」
と人生で二度と言わないようなことを発することが出来ました。できればスーツを着て言いたかったですが……
足元を見られたのか50€と少し袖がついた額を”現金で”請求されましたが、仕方がないです。
工場見学スタート
工場見学はエアバスの門の横にある建物の中の受付の中でチェックインをします。この際パスポート等が必要なので忘れずに。
このチェックインの時に音声受信機と片耳ヘッドホンを受け取ります。
基本的にツアーガイドさんがこの音声受信機を通して案内していきます。敷地内ではカメラや電子機器の使用が禁止なためここで電源を切らされます。
そのため今回はネット上にある資料や動画を基に個人的に興味深かった点をピックアップしていきたいと思います。
エアバスファミリー(機種)の説明
今回は主に旅客機についての言及でした。
A380、A350、A340、A330、A320、A220という現状それを飛び続けている飛行機についての説明でしたが、今回のツアーガイドのおばちゃんがA380が好きなのか半分くらいA380について話していました。
ちなみにこの際、日本語ではA350(えーさんごーまる)といわれていますが、ドイツ語ではA350(あーどがい、ふんふちっひ)のようにA3、50と分けて発音していました。英語でいうとA350(えーすりーふぃふてぃ)のような感じです。
他にもFの付いた貨物機への言及もありましたが、次はサプライチェーン(以下SC)についてでした。
エアバスのSCM
上資料はキャセイパシフィック航空のHPより。エアバスのSCは主にヨーロッパ内であり、基本的にサプライヤー企業はスペイン、フランス、ドイツ、イギリスにあるとのことですが、上記表には記載は無いものの細かいサプライチェーンメーカーはバルト三国等にもあるらしいです。どこが何をやってるのかは忘れましたが...…
それぞれで出来上がったパーツを上のベルーガで運び、ハンブルクもしくはトゥールーズにて組み立てるというものです。
ハンブルグではA318、A319、A320、A321の4機種の製造を担っているとのことです。
加えて米国や中国にあるエアバスの最終組み立て工場についても言及されました。
去年ラインの増設が発表されるなど、エアバスにとっても中国市場は顧客としてもSCとしてもかなりのパイを占めてきているようで、中国にもエアバスの最終組み立て工場があります。
ここからは補足ですが、
例えば日本の帝人は胴体のCFRP素材(カーボン)をエアバスに卸していますが、これはこの上の表でいうとTier2に属します。
ある中国企業が例えばフランスのSafranへ中国の企業がTier2としてEU内へ納品していたり、中国国内ではTier1として現地サプライヤーとして組立へ参加したりなど、エアバスは地域に沿ったSCMの適正化を行っています。
2009年から中国ではA320の製造を行っていましたが、最近ではA350の組立を行うなど年々製造数や種類が増えています。
ただ、機体などの大部分はヨーロッパからの輸入に頼るというのが現状とのことです。
さてそんなわけで、現状のエアバスの製造拠点などについて座学を受けたら次は組立現場へ向かいます。
ハンブルグはA320ファミリーのアッセンブル工場
さてここからは丁度良い動画(WELTというドイツの大きなメディアのもの)があったので、これを参考に話したいと思います。
既に話したようにハンブルクにはこのようなパーツが集まってきます。
工場敷地内はバスで移動するのですが、途中途中に胴体などのパーツが留置されています。
と言っても基本的には機体後方部のみ、要はハンブルクで製造したものが大半で、そのほかの大きなパーツ(例えば翼など)は留置されている様子はありませんでした。
いわゆるIndustrie4.0(ほぼドイツがメインだけど...…)のように、さすがSCM改革を掲げているヨーロッパはすごいのかと思っていましたが、胴体の留置が多いように見えました。
もちろん昨今の対中国への船の影響などやはりどうしても遅れとか関係あるのかわかりませんが、ハンブルグの生産調整はうまく機能しているようには見えなかったです。
むしろ生産が偏って、アッセンブル工場に在庫が多めにたまっている状態です。カバーなどを付けてはいますが、在庫管理とか大変そうです。
若干ほかの工場はどうなっているのかが気になりますが...…
機体の組立
まず、左側にある白いマンションようなものを見てもらえればわかると思いますが、天井までは6階相当の高さがあることがわかります。
ほんとうにめちゃくちゃ大きいです。自分たちは3Fにある見学用のコンコースから見たのですが、この上のスクリーンショットの後ろからパーツを付けて行って、手前では胴体に主翼や尾翼、垂直尾翼などがついた状態へと完成していきます。
機体後方部の製造
次にハンブルクのサプライヤーたる機体後方部の製造です。残念ながらもう丸まったところからしか見れませんが、それでも面白いです。
ちなみにですが、視力がマサイ族並みに良い友人と工場見学に行ったのですが、機体手前などに納入予定メーカーの名前等が書いてありいろいろと面白かったようです。自分は眼鏡をかけても見れませんでした。
ここでは納入先メーカーによってオプション設定の違いがあるのかもですね。
移動中
この尾翼のそばをバスで通ったんですが、これクソでかいです。約5階相当の高さもあることもあり、めちゃくちゃに存在感がすごいのですが、周りの工場の大きさで中和されています。
ベルーガおる!!
自分たちが見たのは工場に首を突き刺したベルーガでした。残念ながら移動中だったため、一瞬ちらっと見えただけながら、車内はみんなベルーガに釘付けでした。
尚、ベルーガの突っ込んだ工場内部は見ることが出来ませんでしたが、WELTのYouTubeに下のようなシーンがありました。
これを見たかったのに...…となるものの、日本ではそもそもベルーガを見ることはかなり難しいためチラ見でも大歓喜です。
格納庫
このWELTが取材したときはA380の組立がされていた時ということもありかなりインパクトが大きいですが、A320ファミリーでも十分に迫力はすごいです。
自分たちは地上には降りることはできず、5階から6階相当の高台から飛行機を見ることに。
ちなみにここに登るとき、手すりを持って、一段一段飛ばさずに登ってねというお達しが来るほど若干頼りのない仮設の階段で登ります。雨の日はかなり怖いかもですね。
ここでは飛行前の各部のチェックを行っているようで、この時点で機体は塗装され、ドイツの国旗が一部の飛行機には垂直尾翼に張られています。
なんでドイツの航空会社じゃないのにドイツ国旗を貼るの?
ある人がなぜ垂直尾翼にドイツ国旗を貼るのかと質問をしたところ、ガイドさんはGute Frage!(良い質問だね!)とニコニコして答えます。
ドイツではよく聞いてくれたみたいなノリで使われますが、本当に知っている場合と、全く知らない場合がありますが、今回は前者でした。
ドイツ国内で登録される飛行機には基本的にドイツ国旗+機体番号が付与されます。
これはテスト飛行でも適用され、航空会社に納入される前に必ずこのテストをエアバスが行います。そしてこれはドイツ国外にデリバリーする機体でも同様です。
https://mediacentre.airbus.com/element?id=603053
このCondorという航空会社はドイツに本社を構える航空会社のため機体後方部にすでに国旗とドイツ国内で登録された機体番号がすでに印字されています。これはLufthansaやEurowingsなどの機体にもあるので国旗+機体番号は見たことがあると思います。
さて、その他はどうなるかはANAの納入前の写真を参考にしたいと思います
これを拡大してみると......
D-AZAK(10232)というシールのようなものが貼ってあり、垂直尾翼にはドイツ国旗が目立ちます。
これは現在日本でJA143Aと登録されている航空機ですが、納品前のテスト飛行ではこのようにシールを貼って現地航空法の尊守を行っているようです。
この話はおそらくこの工場見学で一番ほかのドイツ語話者(多分全員ドイツ人)にとって興味深かったようで一番感嘆のうなずきが大きかったのを覚えています。
見学終了
この格納庫の見学を終えて、すべての工場見学を終えました。
正直4,000円くらいでこの工場見学が出来ると思うとかなりお得というか満足でしかありません。
自分はドイツ語が出来たのでこういう工場見学を現地で割と楽しんでいる質ですが、その中でも飛行機という自分の趣味を話題にするとかなり良いですね。ちなみにですが、英語のコースとドイツ語のコースはほぼ内容には変わりないですが、ドイツ語グループのほうが先に見学出来たりと割と優遇されている気はしましたが、英語でも十分に楽しめると思います。
というわけで自分たちはフライブルクへ戻らなくてはいけないため、ハンブルク空港からEurowingsのA320に乗ってチューリッヒまで向かいます。
以下ダイジェスト
蛇足;Superdry極度乾燥のサングラス。ネタで買うか迷った(輸入禁止)
空港内の自販機よりも安い機内販売
チューリッヒ空港に到着
電車でチューリッヒHBへ
Dieser Zug hat keine IC Wägen !!!
この電車にはICの車両は連結されていません!!!といわれ、突如自分の予約した電車が欠航しました。勿論Webにも反映されません。
毎度のことなので自分は慣れっこですが、ドイツ初めての友人は最初は絶望した顔をしていました。他人の絶望は面白いもんです。
後に快速電車でフライブルクまで向かい、終電のトラムとバスで家に無事に到着しました。もうすでに1時を超えていましたが......
というわけでハンブルク旅行はエアバスの工場見学とSBBの突如IC連結なし運用などなかなかに面白い2日間で終わりました。
今度はトゥールーズに工場見学行きたいし、ボーイングの工場見学などに行ってみたいですね。
ではまた。
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