キーエンス流 最強の営業チームの作り方
1. キーエンスの営業が最強と言われる理由
キーエンスの営業組織は、日本企業の中でも際立った成果を上げており「最強」と称されています。その理由には次のようなポイントがあります。
圧倒的な成果を生み出す営業手法:キーエンスは平均年収が2,000万円を超え、営業利益率も50%前後という驚異的な実績を誇ります
データドリブンな営業戦略:キーエンスの営業は勘や根性に頼らず、徹底した数字管理に基づいて動きます。営業プロセス上のあらゆる行動が数値化されており、過去の営業データがすべてデータベース化されています
高速PDCAの徹底:キーエンスは改善のサイクルを非常に短期間で回しており、日次レベルでPDCAを実践しています
2. キーエンス流営業チームの特徴
キーエンスの営業チームには、他社と一線を画す独自の特徴があります。その主なものを挙げると以下の通りです。
営業プロセスの徹底した標準化:キーエンスでは営業の進め方が徹底的にマニュアル化されています。代理店を介さず自社営業が直販する体制を取り、過去の成功事例(顧客の業種・課題・ニーズ別)を蓄積して専門部署が提案資料を作成し、タブレット経由で営業現場に提供します
高いKPI設定と徹底管理:キーエンスの営業は日々の行動目標値が非常に高く設定され、厳格に管理されています。例えば営業担当者は週に3~4日は外回り(訪問営業)に充て、1日あたり5~10件の顧客訪問を行うことが求められます
ロールプレイングと徹底した営業教育:キーエンスでは新人からベテランまで営業スキルを磨くための徹底したトレーニングを行っています。たとえば自社の商品プレゼンの台本やトークスクリプトが用意されており、営業担当者は日々・毎週のようにロールプレイングを繰り返します
マネージャーの強力なリーダーシップ:キーエンス流営業チームでは、管理職がメンバーの行動と成果に強くコミットし、リーダーシップを発揮します。営業担当者は外出先から戻るたびに**「外報」**と呼ばれる詳細な日報を提出し、その日のうちに上司と反省会を行います
3. 営業チームの強化方法(キーエンス流)
では、キーエンス流の考え方を取り入れて営業チームを強化するには具体的にどのような施策が有効でしょうか。キーエンスの手法から学べる強化のポイントを整理します。
目標達成への強い意識を植え付ける:まずチーム全員に「必ず目標を達成する」という強いコミットメントを持たせることが重要です。キーエンスでは、社員一人ひとりが経営者以上に会社の利益を意識して行動するとまで言われるほど高い目標志向があります
営業データを活用した管理手法:データに基づき営業活動を管理・改善する仕組みを導入します。キーエンス流では、電話件数・訪問件数・提案回数など成果につながるプロセス指標を数多く設定し、「良い成果につながる行動」を可視化して評価・育成に役立てています
商談の質を向上させるトレーニング:量だけでなく営業の質も高めるため、体系だったトレーニングを行います。キーエンスでは台本に基づくロールプレイやOJTを通じて、顧客の課題ヒアリング力や提案スキルを磨き上げています
インセンティブと評価制度の最適化:営業チーム強化には、やる気を引き出す報酬・評価制度づくりも欠かせません。キーエンスでは全社の営業利益の約10%を社員に還元する業績連動型報酬制度を導入しており、例えば営業利益が500億円出ればその10%に当たる50億円を全社員に分配しています
4. キーエンス流営業手法の実践例
キーエンス流の営業手法は実際のビジネス現場でどのように活かされているのでしょうか。製造業のBtoB営業での成功事例から、他業界への応用まで、いくつかの実践例を紹介します。
製造業(BtoB)における成功事例:キーエンス自身が主戦場とする製造業向けBtoB営業では、その手法が大きな成果を上げています。同社の営業担当者は工場の生産現場に足繁く通い、現場を直接見ることで潜在的な課題やニーズを徹底的に洗い出します
IT・その他業界への応用例:キーエンス流の営業手法は、製造業以外のBtoBビジネスやIT業界の営業チームにも応用可能です。例えばITソリューションの販売でも、キーエンス同様に短いサイクルでPDCAを回し、顧客フィードバックを素早く商品提案に反映させることで成果を上げた事例があります。実際に、とある企業ではキーエンス出身のコンサルタント指導のもと日次の進捗確認と改善を取り入れた結果、営業成約率が向上し業績アップに繋がりました(この企業では日次PDCAの導入後、売上が右肩上がりになり始め、今のところ例外なく成果が出ていると報告されています
KPI管理とフィードバックの仕組み(実践例):キーエンスの営業現場で実践されているKPI管理とフィードバックの仕組みは、他社が取り入れる際の参考になります。例えばキーエンスでは、営業担当者は1日の訪問活動を終えて帰社すると5分刻みの詳細な日報を作成して上司に提出します
成果を最大化するための工夫:提案から受注までの成果を最大化するために、キーエンス流には独自の工夫があります。その一つがスピーディーな試用提案です。キーエンスの営業術の特徴的な点として、通常であれば時間をかけて慎重に検討されるような導入プロセスであっても、可能な限り「まず一部で試してみる」形に顧客を誘導する手法があります
5. 最強の営業チームを作るためのチェックリスト
最後に、キーエンス流から学ぶ「最強の営業チーム」を作るためのポイントをチェックリスト形式で整理します。自社の営業組織づくり・改善の参考にしてみてください。
採用基準と理想の営業パーソン像を明確にする:まず、どんな人材が自社の「最強の営業パーソン」になり得るかを定義し、その基準で採用することが重要です。キーエンスでは新卒採用時に20秒自己PRや説得面接などユニークな選考を行い、初対面の印象や説得ストーリー構築力をチェックしています
営業チームのモチベーション管理:採用した優秀な人材が最大限力を発揮し続けるには、モチベーションの維持向上が欠かせません。キーエンスでは高水準の報酬や明確な評価制度によって、社員が常に高い意欲を持てる環境を整えています。前述のように全社業績連動の賞与により会社の成功が自分たちの報酬に直結するため、社員は会社全体の目標達成に強い当事者意識を持ちます
データを活用したパフォーマンス分析:チームや個人の営業パフォーマンスを客観的に分析する習慣を持ちましょう。キーエンス流では詳細なKPI管理により行動が可視化され、育成や評価に直結しています
継続的な改善のための仕組み:営業チームを強くするには、一度きりではなく継続して改善し続ける仕組みを作ることが重要です。キーエンスでは日々のPDCAこそ全ての起点であり、毎日の振り返りと改善が営業組織を強くすると考えています
6. まとめ
キーエンス流営業組織の強みは、データと仕組みに裏打ちされた圧倒的な営業力にあります。徹底した標準化と数値管理、高頻度のPDCAサイクル、そして人材育成とインセンティブの巧みな設計――これらが歯車のように噛み合って、他社の追随を許さない成果を生み出しています。
最強の営業チームを作るためのポイントは、「再現性のある成功パターン」を組織で築き上げることに尽きます。個人の属人的なスキルに頼るのではなく、誰がやっても一定の成果を出せる仕組みを用意し、その上で各メンバーが成長できる環境を整えることが肝要です。具体的には、高い目標設定と進捗管理、データに基づく改善活動、継続的なトレーニング、公平で意欲を引き出す評価制度など、本記事で述べたポイントをチェックリストに沿って実践してみてください。そうすることで、「どこへ出しても通用する」ような営業チーム
に一歩ずつ近づけるはずです。
最後に、営業力向上のために今日からできることを一つ提案します。それは「毎日の営業活動を振り返り、学んだことを記録する習慣」をチームで始めてみることです。たとえば営業日報や日次ミーティングで、うまくいった手法や失敗から得た学びを共有しましょう。小さな改善の積み重ねこそが大きな成果に繋がります。キーエンス流のエッセンスを取り入れつつ、自社に合った形で実践し、ぜひ貴社の営業組織を最強チームへと育て上げてください。成功への第一歩は、PDCAを回し始めることです
。今日から早速、できることに着手してみましょう。
References:
【9】 東洋経済オンライン『キーエンス「2000万円営業マン」を育てる極意』
【12】 ジーニアスラボ『『キーエンス』最強営業組織の秘密。営業利益率55%超...』
【4】 東洋経済オンライン『キーエンス「2000万円営業マン」を育てる極意』
【14】 ジーニアスラボ『『キーエンス』最強営業組織の秘密。...メカニズム。』
【23】 プレジデントオンライン『平均年収2000万円キーエンスの「スゴい報酬戦略」』
【21】 人事コンサルティングPeach『キーエンスから学ぶ人事制度・仕組みの作り方』
【16】 PRESIDENT Online『キーエンスの「スゴい報酬戦略」』
【26】 アレグリア『あなたの会社に最強の営業チームを!』
【2】 東洋経済オンライン『キーエンス「2000万円営業マン」を育てる極意』