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#建築 記事まとめ

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建築系の記事を収集してまとめるマガジン。主にハッシュタグ #建築 のついた記事などをチェックしています。
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2020年2月の記事一覧

日土小学校、建築家・松村正恒、そして日土小学校の保存再生  [0]その概要

花田佳明(神戸芸術工科大学教授)  現在、東京のパナソニック汐留ミュージアムにおいて、「子どものための建築と空間展」が開催されている(2019年1月12日(土)〜3月24日(日))。明治時代から現代までの幼稚園、小中学校、公園など、子どもたちのための学びと遊びの場について考えようという企画である。小さな子どもたちが登場する写真や図面や模型などがたくさん並び、楽しくしかも見ごたえのある展覧会だ。そこに、八幡浜市立日土(ひづち)小学校という学校の白い模型が展示されている。 「

美しくて、感動したサインデザイン

「完璧なサインなんて存在しないと思っているんですよ。」 確か、青森県立美術館のサイン計画を担当した菊地敦己さんは、そうおっしゃっていた気がする。 行くぜ、東北。1年ほど前にこちらの本を購入して、青森県立美術館を知りました。菊地敦己さんのページに唯一、青森県立美術館のサインが掲載されていたのです。 それまで、青森県どころか東北地方に足を踏み入れたことがなかった私が、この本をきっかけに、青森に興味を持ちはじめました。 なんて美しいサインなんだろう。 いつか青森県立美術館

『点・線・面』に読む新国立競技場のストーリー

2019年12月にいよいよ開場した新国立競技場は、どうにも評判が良くありません。予算の都合から建築コンペティションをやり直した経緯もあって、小さく纏まってしまったようにも見える隈研吾氏のデザインは、その意図が社会にうまく伝わっていないのかも知れません。このタイミングにて同氏が書き下ろした著書『点・線・面』を読み解くと、全く同じ対象をデザインしたにも関わらず、当初のザハ・ハディッドのものとは正反対の思想が見えてくるから面白いのです。  隈研吾氏の新著のタイトル「点・線・面」は

「トリノ通信5 幻視都市-キリコとトラム」

入江正之(建築家/DFI フォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授) ;イタリア、近代の画家といえばジョルジョ・キリコ Giorgio Chiriko があがるだろう。時代の新しい運動であるシュールレアリズムの先駆者との評価である。彼は「囘想録」(原書名は “Memorie della mia vita” 邦訳書名『キリコ回想録』である。)を残していて、そのなかで絵画作品の評価は画商と評論家という画家になれなかった者たちが連携して作り上げているに過ぎない。何がシュール

TOEIC350点だった僕が海外の大学院に進学した話

僕は大学3年の後期に海外の大学院に進む事を決意しました。ですが、大体の海外の大学院はIELTS 6.5以上(TOEIC850程度)がほとんど。 今行っているインドの大学の基準もIELTS6.5以上でした。 建築学部は卒業制作があるので、4年生の時に英語の勉強をガッツリなんてしている暇はありませんでした。 “卒業して一年間英語の勉強をしてから大学院受験をする”  そのような目標を立てていました。 卒業制作が終わり具体的に留学ついての情報を集めていた時、ふと思いました。

コンクリートの歴史

コンクリートが現代社会でどのような立ち位置にあるかは前回の記事で述べました。 今日はそこに至るまでのコンクリートの変遷を振り返ってみたいと思います。 先にまとめてしまうと、コンクリートの起源は非常に古く、確認されている範囲で最も古いものはなんと9000年前につくられたと言われています。 とはいえ、このコンクリートが先史時代に主要な材料とならなかったことは皆さんが世界史で習った通りです。 コンクリートが工業材料として最初に普及したのは今からおよそ2000年前のイタリア・ローマ

9.2.6 宮廷文化 世界史の教科書を最初から最後まで

17〜18世紀のヨーロッパ文化は、各国君主の統一的支配強化を背景として、彼らのすごさを見せびらかすための、”ゴージャス“な美術・建築が流行した。 バロック様式の建築・美術まず、17世紀のイタリア、スペインやフランスでは、バロック美術が栄える。バロックとは「ゆがんだ真珠」つまり「出来損ないの真珠」という意味で、もともとは悪口だ。ゴシック様式も「ゴート族のように野蛮な」という意味だったよね。様式の名称というのは、もとをたどると悪口であることが多いんだ。 バロック様式の建築は豪

続・オーストラリアにみる都市木造の可能性

「低炭素社会への環境意識」への適合性の高さが都市木造の大きな魅力であり、林業関係者や一部の建築家だけでなく、事業主側から都市木造を建てたいというニーズが生まれる背景だと言えるだろう。今年は「木造化したビルの方が良いテナントがつき、家賃も高く取れる」というコメントも聞かれた。 日本では自然で素朴な表情の木造が多いが、200 Georgeに見られるようなエコロジーとゴージャスさが組み合わさったデザインは、新しい潮流を表しているのかもしれない。 2017年8月、2019年2月のオ

大学でデモ?インド人学生の行動力

数週間前の大学での出来事。 黒い服を着た集団が歌を歌いながら行進し始めた。 何が起こったんだ!とイタリア人の友達とびっくりしていたら、「protestだよ」とインド人が教えてくれた。大学の授業料が高すぎる事に、学部生が抗議していたらしい。 聞いてみると、インドの大学ではよく起こる事らしい。授業料だったり、施設がしっかりしていない部分があれば抗議する。 日本では大学の授業料が高くても、大体の人がそれは当たり前のことだと受け入れる。自分も大学に抗議しようとは、考えた事もなか

公共性は広場ではない、「ビルのような」公共性

01. 「ビルのような」公共性上述の通り筆者にとって、公共的空間とは「公園」や「広場」、ないしは「原っぱ」のようなものではない。 公共的空間は「ビルのようなもの」であると捉えている。 より正確に言えば、「公園や広場、原っぱも各層に内包した、高速エレベーター付きのビル」が公共的空間だと考えている。 本テキストではその「ビルのような」というメタファーで考える公共性について考えていく。 ※注1:ここで述べる「空間」とは、物理的空間だけでなく非物理的な空間(例えばネット)、もしくは

近代 未完の台所(1)

女性建築家リホツキーが開発したフランクフルト・キュッへ(キッチン)。1927年に一般向けに展示され、現代のキッチンの原型とされています。 日本では、山田守の自邸のキッチンに影響が指摘されています。実際、山田はCIAMに参加するため、1929年にフランクフルトを訪れています。 フランクフルト・キッチンと山田守自邸のキッチン (図版出典リンク:MAKおよびHouzz) 一方、アメリカでは、まったく異なる発想のキッチンが生まれていました。1890年のニューイングランド・キッチ

【ARCHITECTURE OF AESOP】 スキーマ建築計画の魅力

aesopを通じて建築を知る。そのような経験をしました。 <イソップ>は、オーストラリア・メルボルン発のスキンケアブランド。1987年に、美容師だったデニス・パフィティスさんが創業したブランドです。 2010年代はライフスタイル全般がファッション化した時代だったので、男女問わず石鹸や化粧水などについてもこだわる人々が多かったように思います。そして2020年代になり、モードファッションの世界でもサステナビリティが標準装備されるようになり、完全に時代はエコ/リユース/リサイク

ジブリのモデル。日本建築のインテリアに見るデザイン 江戸東京たてもの園

ジブリ映画監督,宮崎駿さんがインスピレーションを受けたとも言われる建物群を保存している場所があります。 江戸東京たてもの園。 例えばこの建物。明治初期創業の文具店,「武居三省堂」。たくさんの筆を取り扱っていたこの文具店は,いろんなタイプの筆を効率よくお客さんに紹介するため,小さな引き出しによって左の壁が構成されています。 小さな建築の中の無駄のないデザイン。 ジブリ映画,千と千尋の神隠しに出てくる釜爺が働くボイラー室のモデルになっています。 同じく明治時代の邸宅の襖の

「トリノ通信 4 ロッジアート loggiato 、三角形・円形ペディメントの機械」

入江正之(建築家/DFI フォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授) ;寄宿先 albergo の部屋 camera を出て、EVで下におり、中庭 cortile を通って木製の大扉を開けて外に出る。そこはカステッロ広場 Piazza Castello に近いポー通り Via Po の回廊 loggiato である。  夢の中にいるのではないか? 左右両方向、そして車道を介して前方にも回廊の軸が伸る。 夢ではないのか?  回廊を右側に歩いて行けばヴィットリオ