累計販売約2000万缶売り上げた檸檬堂の3つの成功要因とは?
17本目の企業分析(マーケティングトレース)は、コカ・コーラの檸檬堂です。
檸檬堂は、コカ・コーラが出しているレモンサワーのブランドになります。コカ・コーラが自社でアルコール飲料を販売するのは、世界でも初の試みで、その成功はグローバルコカ・コーラのモデルケースにもなっているそうです。
そんな檸檬堂は、2018年5月に販売を開始して以来、約2000万缶(約790万ケース)を販売し、1年でレモンサワー市場でシェア1位を獲得しました。(売れに売れすぎて、一時期は販売を中止していたほどです。)
そんな急成長をした檸檬堂の成功要因は、以下3つに集約されます。
①既存の競合との差別化を意識したプロダクト
②カテゴリー集中することでコスパ良く認知を獲得し、購入数を伸ばす
③地域を絞って販売をスタートしたことで、口コミが伸びた
詳細に説明していきましょう。
コカ・コーラボトラーズジャパングループの概要
檸檬堂を販売している企業は、誰もが知っているコカ・コーラの日本法人です。
・会社名:コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
・代表:カリン・ドラガン
・設立:2001年(平成13年)6月29日
・全体売上:8,726億円
・企業理念:すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造します
・事業内容:清涼飲料水の製造、加工および販売
成功要因を解説していきます。
成功要因①既存競合との差別化を意識したプロダクト
檸檬堂は、競合がひしめくアルコール市場では後発の商品になります。だからこそ、競合と比較をしながら理想の味を目指して実現しました。
そのこだわりを伝えるために、日本の居酒屋文化をベースに、「檸檬堂という居酒屋がこだわりのレモンサワーを提供している」という世界観で商品の魅力を消費者に伝えています。
その結果、これまで他社が爽快感やコスパの良さなどで、しのぎを削るなか、「居酒屋で出てくる少しリッチでこだわりのレモンサワーが飲める缶」という位置付けを獲得することができました。
価格の面でも20~30円競合よりも上乗せし、その分顧客が納得するおいしい味とプレミアムな価値を提供しています。
成功要因②カテゴリー集中することでコスパ良く認知を獲得し、購入数を伸ばす
また、小売店の棚に並べた際に他社のお酒に埋没しないように、以下のような工夫があります。
・競合ブランドによくあるメタリックなシルバー感やシズル感をなくし、落ち着いたお店のようなプレミアム感があるデザイン
・同一カテゴリーで5つの商品を出すことで、棚を占領する
・「檸檬堂という居酒屋」をテーマにCMや店頭ポップのトンマナをあわせることで、店頭で思い出して手にとってもらいやすい
・コカ・コーラの既存プロダクトで培った技術を転用し、おいしさを実現(ビールやウィスキーなどの技術がいらない)
販売ブランドを檸檬堂に絞ることで、マーケティング費用を抑えつつ効果的にブランド認知度を獲得することができます。
さらに、様々なアルコール度数・甘さのレモンサワーを5種類出すことでより広いニーズ(アルコールが苦手な人、アルコールが好きな人、食事で飲む人・・)に対応することも可能です。
成功要因③地域を絞って販売をスタートしたことで口コミが伸びた
発売初期は、九州での限定販売になっていました。しかし、コカコーラという誰もが知っている大企業が初めて製造しているアルコール飲料だけに消費者の興味関心度は高かったです。
味自体もおいしかったため、口コミが広がり消費者の期待値を高めることができました。
九州のお土産用に檸檬堂を買う人やメルカリで購入する人もいるほどだったとか。
エリアを絞った限定販売による口コミ効果で檸檬堂の認知度と期待値を上げることができ,全国販売を始めてから一気に販売量を伸ばすことが出来ました。(売れすぎて2020年1月に一時販売停止をするほど)
檸檬堂の売上を伸ばすアイデア
最後、檸檬堂の売上を伸ばすアイデア仮説を出します。檸檬堂のKPIを分解すると
売上=客数×単価×購入頻度
でわけることができます。それぞれを伸ばすアイデアを出すと、
①客数アップ施策
◯業務用の檸檬堂を提供
→客数だけではなく、購入頻度アップも期待できる
→一杯目はビール。二杯目はビール以外という層に届ける
◯檸檬堂が作ったレモンスカッシュ(ノンアルコール)でお酒を飲めない層も狙い撃ち
→居酒屋でアルコールを飲めず清涼炭酸を飲む人
→檸檬堂は好きだけど、健康が心配でアルコールを控えている人
→平日アルコールを控えている人
に檸檬堂訴求
②単価アップ施策
◯レモン果汁・果肉入りのプレミアムな檸檬堂をオンライン限定販売
→檸檬堂が好きなファンのみにリーチし、単価と利益率を上げる
◯現在350mlの缶しかないので、500mlのお徳用を提供
◯レモンサワーの製造工程を動画でまとめる
→より檸檬堂の商品作りに関して共感をしてもらいファンを増やす
③購入頻度アップ施策
◯食事のオトモメニューの提案
→檸檬堂と一緒に食べるとおいしいメニューレシピを提案。
より檸檬堂を楽しんでもらうための仕掛けをする
などなどを上げてみました。
今回の分析を通した学びの抽出
今回の学びは以下です。
①既存の競合を研究し、既存の競合が満たしていないニーズを見つけ、消費者とのメッセージで競合との違いを強調(ホワイトスペース戦略)
②ブランドを絞り、同じブランド内で商品を分けることで、リソースを集中させ認知度を上げる
③口コミを広げるためには、限定感が効果的。販売初期は、販売対象やエリアを絞ることで、限定感を演出する。
檸檬堂は、プロダクトを提供する企業としての前提である品質へのこだわりをしながら、そのこだわりを今の世の中で消費者に適切に伝える方法を考えて実行しているのが印象的でした。
檸檬堂の裏側が理解できたので、早速檸檬堂を飲みたいと思います...w