【SS】轍(わだち)
夏休みにオフロードのバイクを買った。昨日までの雨が嘘のように晴れ上がりいい天気になった。友達と二人で車が来ない広い場所でバイクに乗って遊ぼうというこというになり出かけた。
広場に着いて二人乗りでバイクを乗り回して遊んでいた。この場所はこれから何かの建物が建設される予定になっているかなり広い空き地だ。昨日まで降っていた雨のせいで、多くのトラックが入ってきたタイヤの轍が数多くできていた。まだ、乾いてもいない。轍は結構深くえぐれていて濡れている。滑りそうだなという感じはしていたが、二人乗りでのバイク遊びが楽しかった。
嫌な予感はしたが、轍を避けながら、そのまま真っ直ぐバイクで突っ込んでいった。そんなにスピードは出ていないと思っていたのだが、それなりに出ていたようだ。バイクの前輪がトラックの通った後のカーブになった轍の中に入ってしまった。ハンドルを取られ、コントロールが効かない。まずいと思った時にバイクの後輪までも轍に入ってしまった。スピードの勢いでタイヤが滑る。ハンドルは効かない。あっ、と思った時には前輪が沈み後輪が跳ね上がった。轍の壁に後輪が乗り上げそのまま跳ね上がったようだ。ブィーン、地面を失ったタイヤが空回りする音が聞こえて来た。まずい、こける。そう思った瞬間にバイクは後輪が上がったまま横滑りし始め、そして倒れた。後ろに乗っていた友達は後輪が跳ね上がると同時に空高く放り出され、僕の頭上を後ろから前に飛んで行き、僕より前に落ちた。僕も放り出されたが、バイクの少し前で前のめりに落ちた。
地面は雨上がりで柔らかかったため、二人とも怪我はなかった。一番遠くに飛んだのが後ろに乗っていた友達、その次が僕、そして轍の中で泥だらけになって横たわっている僕のバイクが一列に並んでいることが面白くて、泥だらけになったフルフェースをとり外して二人で目を合わせて笑った。
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