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そのサッカーを疑え!

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最終ラインの枚数と同じぐらい注視すべき人の数とは。日本サッカーに足りないもう一つの視点

最終ラインの枚数と同じぐらい注視すべき人の数とは。日本サッカーに足りないもう一つの視点

 サッカー中継は105m×68mのピッチを横長に描く。正面スタンドに設置されたカメラから送られてくる映像をもとに進行する。ゴール裏からの映像が流れるのは得点シーンや雑感などで、メインではない。

 よってし、たとえば最終ラインの枚数は、画面越しのファンでも割と容易に識別できる。3バックなのか、4バックなのか、5バックなのか。3バックが5バックになりやすいメカニズムまで捉えることができる。

 盲点

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CLリーグフェーズ最終週を前に遠藤以上に心配になる日本代表の中心選手

CLリーグフェーズ最終週を前に遠藤以上に心配になる日本代表の中心選手

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 北中米W杯本大会まで500日。1年半弱に迫ったわけだが、もしW杯が1年早く行われるなら、日本代表はよい成績が残せないのではないかと考える。その9割を占める欧州組でいま現在、調子がよさそうな選手が少ないからだ。

 今季開始前、欧州のトップ10クラブに所属する選手が3人に増えたことを喜んだ。遠藤航(リバプール)、冨安健洋(アーセナル)に加え、伊藤洋輝がバイエル

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CLリーグフェーズで苦戦するマンC、レアルマドリードから森保Jが学びたいサッカー的思考法

CLリーグフェーズで苦戦するマンC、レアルマドリードから森保Jが学びたいサッカー的思考法

チャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第7週、一昨季の覇者マンチェスター・シティはパリ・サンジェルマンに敗れ、プレーオフ進出(24位以内)を確定できなかった。最終週を前にした現在の順位は25位。ひとつでも順位を上げないと敗退が決まる。

 最終戦の相手はクラブ・ブリュージュ。ホーム戦でもあるので、番狂わせを食う可能性は低そうである。しかし、2-0とリードしながら4連続ゴールを許し、2-4で大逆

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「これまでお世話になったサッカーに恩返しがしたい」と言うけれど。日本の浮沈のカギを握る“元選手”

「これまでお世話になったサッカーに恩返しがしたい」と言うけれど。日本の浮沈のカギを握る“元選手”

 日本のサッカー進歩を語る時、いちばん外すことができない要因は選手の成長である。その国のサッカーのレベルは、サッカー界を構成する様々な要素の平均値になる。それは言い換えればその国のサッカー偏差値であると、筆者はこれまで自著の「日本サッカー偏差値52」等々で述べてきた。

 選手、監督、ファン、メディア、審判、協会、各クラブ、国内リーグ、代理人、テレビ解説者、スタジアム……が、その主な構成要素になる

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優れた選手が優れた監督を大きく上回る日本サッカー界は監督受難の時代に突入。上下関係の概念が破綻する

優れた選手が優れた監督を大きく上回る日本サッカー界は監督受難の時代に突入。上下関係の概念が破綻する

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 選手と監督の関係は競技によって異なる。サッカー選手にとってよい監督とは、自分を使ってくれる監督だ。サッカーは選手個人の優劣を示すデータが少ないスポーツ。選手の出場が叶うか否かは監督との相性がカギになる。ユルゲン・クロップには重宝がられたが、アルネ・スロットに監督が代わるやベンチを温める時間が急増したリバプールの遠藤航を見るまでもない。

 出場時間に恵まれな

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自らの素性を明らかにしない守備的サッカー監督との対峙法を誤り「超攻撃的3バック」に翻弄された日本

自らの素性を明らかにしない守備的サッカー監督との対峙法を誤り「超攻撃的3バック」に翻弄された日本

写真:Shigeki SUGIYAMA

 今年1年、取材活動を通して最も違和感を覚えた台詞は何かと言えば「攻撃的3バック」になる。ウイングバックにサイドバック系の選手ではなく、三笘薫、堂安律ら4バックでウイングとしてプレーした選手を据える3バックを、多くのメディアは攻撃的3バックと称した。ご丁寧に超まで付けて超攻撃的3バックとする見出しや原稿も目に止まった。

 攻撃的サッカーと守備的サッカー。

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森保監督と大岩監督はサッカー的には水と油。一貫性を欠く日本代表強化策

森保監督と大岩監督はサッカー的には水と油。一貫性を欠く日本代表強化策

 パリ五輪で指揮を執った大岩剛監督が、ロサンゼルス五輪を目指すアンダーカテゴリーの監督の座に再度、就くことになった。

 A代表の森保一監督も2026年W杯まで計8年の契約である。2人の代表監督が2大会続けてその座に就く姿は、池田太監督からニルス・ニールセン監督に首をすげ替えたなでしこジャパンとは対照的である。

 だが男子の森保監督と大岩監督は、サッカー的には水と油の関係にある。森保監督は就任以

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ブライトン監督が披露した左右非対称な3-4-2-1。三笘はこの3バックの方が断然活きる

ブライトン監督が披露した左右非対称な3-4-2-1。三笘はこの3バックの方が断然活きる

 12月5日(現地時間)に行われた三笘薫所属のブライトン対フラム戦。開幕から4-2-3-1あるいは4-4-2で通してきたブライトンのファビアン・ハーツラー監督だったが、このフラム戦では初めて試合の頭から3-4-3を採用した。

 昨季まで監督を務めたザンクトパウリ(ブンデスリーガ2部)時代は、3-4-3をメインに戦っていたので本来の姿に戻ったと言うべきか。これを機に原点回帰するのか。次戦のレスター

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サッカー日本代表は砂上の楼閣。遠藤航について「まったく心配していない」という森保監督が心配になる

サッカー日本代表は砂上の楼閣。遠藤航について「まったく心配していない」という森保監督が心配になる

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 2026年W杯アジア3次予選グループCを独走する日本代表。27人のメンバーは毎度9割方変わらない。怪我人が入れ替わる程度である。予選落ちする可能性は限りなくゼロに近づく一方で、メンバーの固定化は進むばかりだ。W杯本大会に向け不安は募る。

 メンバーが固定化されることはなぜ問題なのか。1年半後に迫ったW杯本大会が心配になるのか。ここから整理したい。

 代表

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クリスマスツリー化するサッカー日本代表と悪化するボールを奪われる場所の関係

クリスマスツリー化するサッカー日本代表と悪化するボールを奪われる場所の関係

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 就任以来6年と数か月、森保一監督は目指そうとしているサッカーを具体的に語ろうとしなかった。

「臨機応変」。「賢くしたたかに」。「よい守備からよい攻撃へ」が精一杯。抽象的な表現でその場をやり過ごしてきた。たとえば欧州なら、それは代表監督として許されない振る舞いになる。代表監督のスタンダードが浸透していない日本だからこそ許される、ぬるま湯体質を象徴する事象にな

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八村塁不在の日本サッカー界。協会、監督に異を唱えるべきは誰なのか

八村塁不在の日本サッカー界。協会、監督に異を唱えるべきは誰なのか

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 サッカーは様々な価値観がうごめく混沌とした世界。他の競技の比ではない。W杯予選への参加国は210。国連加盟数(196)をも上回る。地球の津々浦々まで浸透している果てしない世界。加えて決め手となるデータが決定的に少ないというサッカーの特殊性も輪を掛ける。

 選択肢はほぼ無限。おのずと作戦も多岐にわたる。異論反論を含む様々な意見が巷に溢れることになる。サッカー

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日本サッカーの発展を妨げるベストメンバー至上主義と補欠文化

日本サッカーの発展を妨げるベストメンバー至上主義と補欠文化

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 インドネシア戦(15日)、中国戦(19日)に臨む日本代表。メンバーから漏れたのは冨安健洋、伊藤洋輝、上田綺世など怪我人のみ。新顔はもちろんゼロである。相手は全6チームで争われるW杯アジア3次予選C組の5位、6位チームだ。日本と2位以下との差も勝ち点5開いている。予選落ちの可能性は限りなくゼロであるにもかかわらず、森保一監督は例によってオールスターキャスト、ベ

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自らの5バックを「賢くしたたかな戦い」と自画自賛する森保日本代表監督の楽観主義を心配する

自らの5バックを「賢くしたたかな戦い」と自画自賛する森保日本代表監督の楽観主義を心配する

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 2026年W杯アジア3次予選でサウジアラビアに勝利し、サウジアラビアに引き分け、勝ち点を快調に伸ばしている日本。同C組の「死の組」という下馬評は何処へやら。予選突破は最終戦を待たず、早い段階で決まりそうである。

 日本が強いというより対戦相手に手応えを感じない。そちらの方を心配したくなるほどだが、5バック(3バック)サッカーに傾倒する森保サッカーを、超攻撃

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日本では何年経っても語られることがない5バックサッカーを観戦する上でのキーポイント2つ

日本では何年経っても語られることがない5バックサッカーを観戦する上でのキーポイント2つ

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 かつて4バックは中盤フラット型4-4-2と相場が決まっていた。中盤ダイヤモンド型や日本でも流行したブラジル式の4-2-2-2など例外もあったが、8割方は中盤フラット型の4-4-2だった。

 1990年代前半頃までの話である。中盤フラット型4-4-2が、当時流行し始めたプレッシングサッカーの定番布陣であったことも輪を掛けた。2トップ全盛時代。言い換えればそう

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