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五島列島で春に行われる伝統行事お大師さん

私の地元、長崎県五島列島では、真言宗の開祖、弘法大師(空海)を祭る伝統行事「お大師さま」が毎年命日の旧暦3月21日に開催されます。


私の周りでは「お大師さん」と呼ぶことが多いので、このnoteでもお大師さんと呼ばせていただきます。

その、お大師さんについて、私の体験記を書こうと思います。


空海の像を置いた祭壇を花や果物で飾り付け、家庭によっては季節の野菜を使った煮しめなどの郷土料理を提供する「お接待」や、子どもに菓子を与える「ふるまい」などもあります。

お弁当が用意されていて参拝後に渡されるところもあります。


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(祭壇の様子。とっても豪華です。動物園のゾウくらい大きいです。)


私が、小学生のころは、お菓子がもらえるのが嬉しくてハロウィンのような感覚でいろんなところを回ってお菓子をもらっていました。


これがお大師さんという伝統行事とはつゆ知らずに、もはやハロウィンだと思ってお菓子をもらっていました。


さらに、家庭料理の振る舞いもあるため、沢山のご家庭に上がって、(突撃!隣の晩ごはん!を勝手にイメージしていました。)ご飯をもりもり食べていました。



お菓子を貰えばもらうほど喜ばれて、ご飯を食べれば食べるほど喜ばれる。そんな不思議で幸せな日でした。



そんなことをふと、一昨年の春に思い出したのです。

一昨年の春、私は一人暮らしを初めて2年目になった高校2年生でした。

100円の、ドデカデニッシュで腹を満たすというひもじい生活を送っていてふと、色んな意味で温かい料理をたらふく食べたい。
という気持ちに駆られて、そんなときに小学生の頃に参加していたお大師さんのことを思いだして、このときはそれがなんの行事だったかも知らなかったので、

いろんな家の、美味しいものがたらふく食べれて、お菓子ももらえるイベントあったけどなんだっけ?


と、祖母に聞いて初めて「お大師さん」を知りました。 

いつまでもいつまでも、地域とそのつながり、ご先祖様を大切にする素敵な行事です。

思えば、長崎や五島では、お盆のときもお墓で花火をしたり、何時間もお墓の前で談笑したりと、ご先祖様を毎年豪華に彩る風習が根強く残っているのです。

しんみり。ではなく、とにかく豪華に楽しく。

なので、お大師さんでも祭壇は腰を抜かすほど豪華であり、料理もとても手が込んだ数々ばかりです。

お大師さん当日は準備は早朝4時頃から始まる、だけでなく何日も前から打ち合わせをしたり、いろんな準備をするようです。




「お大師さん」という行事だということを知って初めて、お大師さんに参加した一昨年の体験談を書きます。

去年の春も参加したかったのですが、新型コロナウイルスの影響で残念ながら開催中止となりました。仲間内で食事はなしに、参拝だけ行ったところもあるようです。

この春やりたいこと。というnoteのイベントを見て、まっさきに「お大師さん」が思い浮かびました。

私にとって、春といえばお大師さん。

一昨年の経験は、それくらい強く印象に残り、楽しくて一生分の温かさと幸せをもらった時間でした。

今年はまだ開催されるか不明だそうですが、開催されることを願って書きたいと思います。



一昨年の春。

私はワクワクしながら地元に帰りました。

お大師さんは、旧暦の3月21日に開催される。とありますが、自治体や地域によって微妙に日にちが違っていて、私は計2日間、約10箇所の家庭や集会所を回りました。

70歳の祖母の同級生仲良し女子会チームに入れてもらって、一緒に参拝し、たくさん話も聞くことができました。

厳密には、祖母たちも、毎年美味しいご飯目当てに行っているので、お大師さんについてほとんど知識がなく、接待してくれる方々からお話をたくさん聞きました。 

お大師さんをやる家庭が特にここ何年かで一気に減少してきているらしく、個人で祭壇を飾るだけ。という方が多いようです。

やはり、当時開催していた方々も「今年が最後かも、、」と思いつつ、やっているようで、それでも、一年の集大成として、この日はみんなが張り切って、参拝者の私達に豪華なおもてなしをしていただきました。


参拝者である私達も、そのお礼としてみんな500円玉を机の上に置いて帰ります。

どこにいっても、500円で申し訳ない。。といつも思ってしまうくらいのおもてなしをされるので、(ましてや、いらない。と言われることもあります。)

お金は、お地蔵さんや祭壇の一年の維持費のためです。なので、提供される料理やお弁当やお菓子はすべておもてなしなのです。


特に、大きな会場だと、近所中のおじいちゃんおばあちゃんが集まってきて、年に一回、地域で集まって話す場所になっていて「お大師さん」はお大師さん(空海)のためだけの行事ではなく、市民みんなにとって幸せな行事なのです。


私のことを話します。

ハロウィン感覚でお菓子を貰ってすぐ帰る小学生くらいの子はちらほらいるものの、

私のような高校生は本当に誰一人としておらず(30代40代もあまり見かけない)、しかも、わざわざ「お大師さん」に参加するために県外から来たと知って、それはそれはもう、チヤホヤされました。

私は天皇一族か。というくらいのおもてなしと歓迎の言葉。

それに加え、もともと「美味しい料理をたらふく食べること」を目的に来ていたので、フードファイターのごとく食べる私を見て、さらに喜ばれて、

同級生からはうるさくて煙たがられるほどおしゃべりな私もこんなに話してくれる♡とすごく喜ばれて、


スマホでバシャバシャ写真を撮る姿を見てさらにさらに喜ばれました。


とにかく、ただ、若くてスマホ持っててたくさん食べるってだけで、この先、一生褒めてもらえないんじゃないかというくらいの褒め言葉の連続でした。


クラス一、地味で、なんの取り柄もなければ勉強もスポーツもできないマヌケな私が、ここまで称賛されることは初めてで、褒められられてないのもあって戸惑いもありましたが、もう一生ないであろうこの喜びを存分に噛み締めていました。 

そして、お目当ての料理。


これがもう、どこにいっても何を食べても美味しくて美味しくて、一口ごとに

「おいしー!!!!!」

と絶叫していました。絶叫です。

どこにいっても、既製品という文字が一切見当たらない、

地元で取れた新鮮野菜の数々と、近くで取れたたくさんの山菜。初めて食べるようなものばかりでした。

伝統料理や地域ならでばの料理もたくさんいただいて、作り方まで教えていただきました。

昔話でしか見たことがないような山菜おにぎりや天ぷら。

とにかく山菜は初めて見るものばかり。
よもぎの天ぷらは衝撃的でした。葉っぱの中で最高級だと思います。

見たことないくらい太い切り干し大根や、自家製の漬物もとっても美味しかったです。

漬物って普通、少量で飽きちゃうですが、あまりのおいしさに箸が止まらず個人の年間漬物消費量到達するのではないか。というくらい食べました。

大きな鍋でたかれたあつあつほかほかの赤飯は、地元の、おばあちゃんによそってもらってわんこそばのような勢いで食べました。


自分では絶対に作れない、お店でもなかなか食べられないそんな最高の料理をサウナくらい温かすぎる雰囲気の中で食べれて本当に幸せでした。一生分の家庭料理食べました。

こんなに食べて、さらにお弁当も何個もいただきました。どこのコンビニにも、高級スーパーにさえも絶対ないようなお弁当。

学食で「田舎のおばあちゃん特性郷土料理定食」があれば絶対頼むし、お弁当も「田舎のおばあちゃん弁当」があれば大ヒット商品になるだろうななんて、ビジネスにしたいほど感動しました。

お弁当になっても、なお、愛情と手間ひまが強く感じられる料理の数々。

美味しくいただきました。



ここまで、私が、この穏やかな地域の伝統行事を壊す爆食モンスターのようになっていますが、みなさま、安心してください。

食べても食べても料理があるのです。

それほど用意周到に仕込まれていて、尊敬でしかありません。


そして普段こんなに大勢のおばあちゃんたちと会話する機会もないので、とても貴重な体験ができました。

だからといって、昔の教訓など言われるわけでも、伝統行事を事細かに説明するわけでもなく、女子高生がマックで話しているのと何ら変わりのないたわいもなさすぎる会話で盛り上がりました。

ですが、ここで最大の問題点。盛り上がるのはいいのですが、盛り上がれば盛り上がるほど方言が強くなって、地元の私でも聞き取れなくなります。

途中、祖母にこっそり通訳してもらいながら話を聞いていました。次参加するときまでに耳を鍛えなければ行けないと思いました。

地元から出てきたばかりのとき、方言をいじられて、恥ずかしくてたまらなかったのですが、ここまで方言ネイティブになると逆にかっこよさを感じました。

市外の方々や観光で来る方々は翻訳機が必要かもしれません。


スマホでバシャバシャ食べ物の写真などを撮っていると、私達もとって〜!とおばあちゃんたちがそれぞれポーズを取り出して、撮影会が始まりました。

写真を取るだけで(しかもスマホで)とても喜ばれました。

プロカメラマンになった気分でした。

私も、ここまでたくさん良い経験をさせてもらったので、お礼として街の写真やさんに行って、スマホの写真を現像してみなさんに配りました。

こんな素敵な伝統行事。お大師さん。

私が参加した一昨年は、今年が最後。とおっしゃっている方も多くいました。

通常ならば、これを引き継いでくれる方がいたりして代々受け継がれるらしいのですが、それがどの地域も引き継ぐ方がいなくて、高齢化が進んで体力的にも難しい方がどんどん増えていて泣く泣く行事を辞めてしまう方が多いそうです。

私はこのお大師さんをこれからもずっと大切に守っていきたいと強く思いました。

そのため、次の年はやり方や準備やマナーを詳しく聞いて自分も運営できるようになろう。と思った矢先、コロナウイルスで行事が中止となりました。

もし、今年も中止になって、お大師さんが開催できるようになったころにはもう開催する地域がなくなって教えてくれる人とも会えなくなったらどうしよう。

そしてそのまま、お大師さんが途絶えてしまったらとても悲しいと思いました。

今とりあえずできることは、お大師さんについてインターネットや本を使って調べて学ぶことだと思い、私は勉強をはじめました。

祖母を使って連絡が取れる人と連絡をとって、電話で、お大師さんについて聞くこともできました。

今やれることはお大師さんについて私から積極的に学ぶことで、やらなきゃいけないことは、この行事を途絶えさせてはいけないこと。

そして、この春やりたいことは、お大師さんに参加することです。

もちろん、市民や地域の方々の健康最優先ではありますが、どうか開催されることを願っています。 


それとともに、伝統行事にも少し変化を加えて、コロナ渦や人口減少にも対応できるような仕組みも考えていこうと思います。


どうか、全員が安心してお大師さんを開催できますように。








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ぼんのう
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