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次に取り出したのは

 「これ、誰の字?」
見ると、見覚えのある文字。何年も前に亡くなった祖母の字だった。
 所用で実家に行き、母と話していた所だった。一緒にきていた子供が、それを見つけたのだった。畑仕事をしていた祖母は、引き出しにタネを何種類か入れていた。ただ、それはもう使っていないと思われ置いたままになっていた小さなタンス。置いたままだったようだ。祖母の持ち物はほぼ処分していたのだが、そのタネの存在は母も知らなかったらしい。ビニール袋の中にタネと小さいメモが入っていた。メモには収穫した年と、何の種なのかが書かれていた。亡くなる前年のメモもあった。
 誰も気づかないままでいた祖母のタネ。それをひ孫が見つける。その瞬間、祖母が近くにいたような気がした。祖母、母、私、子供の4世代の交流が、久々に生まれたように思えた。祖母が引き出しに入れたものを、次開けて出したのはひ孫だった。このようなことは、特に珍しいことではないのだろうが、私には興味深い出来事になった。

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