祖母のネックレス
最近、祖母にもらったネックレスをつけている。祖母はレースのカーディガンにロングスカート、フリルのついた真っ白いエプロンをいつも身につけていた。
洗面所の鏡の前でヘアスタイルを整える様子を何度か見たことがある。
庭仕事が大好きだったので、日焼けが気になるかもしれないと思い、祖母の誕生日にガーデニング用の花柄のリボンがくるりと巻かれた可愛い帽子を送った。
真夏に実家に帰ってもガーデニング帽子は使われておらず、母に理由を聞くと、「髪が潰れるから嫌なんだって」と言う。熱中症やシミの心配よりも、今のヘアスタイルを気にするとは。あとでシミを気にしたりするのに…と思ったが、とにかく昔から家族の中で一番美意識が高くて可愛い人だった。
私が中学生の頃まで八百屋さんをしており、聞き上手な祖母のところに話にくる人が多かったらしい。家族で会話していても、相手の話を否定したりせず「そうだねえ」と相槌をよく打っていた。もういっそのこと、『あなたのお話聞きます』と書いた看板出して商売したらいいんじゃないかと思った。そうしたらきっと行列ができただろう。猫の猫村さんを見ると祖母を思い出す。
祖母がまだ元気な頃に、ネックレスと手紙が入った荷物が送られてきた。細かな細工の入ったプラチナのネックレスが光を反射して美しかった。祖母がブローチ以外の装飾品を身につけているところは見たことがなかったのでちょっと意外でもあった。手紙には達筆な字でこう書かれていた。
「マリちゃんへ、これをマリちゃんに伝授いたします。頑張ってね。おばあちゃんより」
祖母のお守りを受け継がせてもらえる栄誉をありがたく思ったし、気遣ってくれる気持ちが嬉しくて、たくさんたくさん「ありがとうね、おばあちゃん大好きだよ」と伝えた。祖母も「おばあちゃんも、マリちゃんだーいすき」と可愛く返してくれた。
今でもあなたは私の憧れで、こうなりたいと思うひとです。つけたネックレスがキラキラ光った。