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ブレイディみかこ「両手にトカレフ」感想~片手にピストル心に花束~
♪片手にピストル
心に花束
唇に火の酒
背中に人生を
アアア アアア~♪(「サムライ」より)
心に花束を持ち続けるためにピストルという物騒なものに向き合う...強い思いを歌っているのかな、ジュリー よ💋
その一方で、
♪なぜ生まれた それがすべてにサヴァイヴァルチェリーのマイミは人間やめて とうに死んでる血だらけの赤いタイルの風呂場 黙って立っているもうちょっと 泣くとか怒るとかあるだろう両手で銃をかまえて立てよ自分の銃をかまえて立てよ♪ミアのリリック(本文より)
大正時代に無戸籍で生まれ壮絶な人生を送ったアナキストのカネコフミコ(金子文子)の自伝を読み、獰猛な欲望が喉の奥から言葉に出てリリックとして刻む、イギリスに住む14歳のミア。
ミアもまた、ツラい現実を生きているから...。
★☆★
読みやすいのに甘くない作品でした。
過酷な生活を余儀なくされた時代を超えた若い二人の少女の物語。
ドラック中毒の母親の代わりに弟の面倒をみながら今日の食事のことを考えなければいけないミア。
ヤングケアラーとして一家を支えるミア。
過酷な状況下にいることを同級生には知られたくない。
わかる、わかる、知られたくない気持ち。
大人の私でもわかるのだからティーンにはよりミアに寄り添えるのではないかな。
フミコを近くに感じるミア。
過酷な状況に追い込まれてもフミコはまだ知らないたくさんのことを知るまで、まだ出会っていない人々に出会うまで....。
ここじゃない世界をいまここにあり、
ここから広がっている。
と、考えることができる文子に惹かれるのはミアも私もだ。
少し前まで、「ここではないどこか」を軸に描かれた作品が多くみられたが、本書で広がりのある強さを知る。
強さは弱さでもあり優しさでもあるからね。
人間はわからないことをわかるようになりながら生きているものだよね?だから僕がそうできるように助けてくれないかな。もちろん僕も助ける、両手にトカレフを握って立つ君を、トラックで支援する。必要なときには、君の後ろからリボルターだってライフルだって撃つ(本文より)
援護射撃的な人がいるって心強い。
ひとりじゃない。
片手にピストル心に花束ってことだよね。