還暦の母へ。手料理は思い出とともに
母の味がわからない。母の作った料理のような味がするなと思うことはあるが、それは大体、薄味の和食料理で、確信をもって母の味だと断定できるわけではない。
思い出は不思議だ。日常の大切な風景や楽しさ、非日常の中での愛おしさ、一生覚えていたいと思ったようなことも意外と忘れていたりする。友達と学校にいくときに腹を抱えて笑ったことや、付き合っていた彼女とのデートとか。「楽しかった」という感情とともにいくつかの記憶があるのに、思い出話をすると意外と忘れていることに気づく。そして覚えようと意識していないことを覚えていたりするものなのだ。
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