MZM野外ライブ「白の陣」ライブレポート――”縁”と”掛川”に呼ばれた一夜
VTuberのコーサカさん、アンジョーさんからなるユニット・MonsterZ MATE(MZM)は、10月26日(土)に静岡県掛川市で開催されたイベント「掛川百鬼夜行」とコラボし、初の野外音楽ライブ「白の陣 MZM music day」を開催した。
当日は「東海の名城」とも呼ばれる掛川城を望む、三の丸広場に設置された特設ステージで公演。動画では準レギュラー組となっている天開司さん、佐藤ホームズさん、歌衣メイカさんも共にパフォーマンスを繰り広げた。
今回は筆者もこのイベントに専門学校の同期の友人と参戦したので、レポートしていきたいと思う。
後半ではなぜ筆者が掛川に行くまでに至ったのか、そのエピソードを記していく。ぜひ最後までご覧いただきたい。
※アーカイブは11月5日まで公開中。LIVE Blu-rayも受注受付中。
What's 掛川?
そもそもなぜMonsterZ MATEが、今回静岡県掛川市で開催された「掛川百鬼夜行」とコラボし、公演したのか。これには少し解説が必要だろう。
MonsterZ MATE・コーサカさんは、以前より作家活動をしており、加えてTRPGのプレーヤー(PL)やゲームマスター(GM)としても活動をしてきた。
一方の会場となった静岡県掛川では、株式会社あらまほしを主体に地域と密着した企画「掛川TRPG先進都市化計画」が進行している。
掛川を舞台にしたシナリオ「掛川シ録」、シナリオコンテンスト「掛川百鬼紀行」、TRPGオンリー同人誌即売会「掛川シ場」などを通してTRPGの新しい遊び方を生み出し、地域やTRPGをさらに盛り上げようと奮闘している。
そして、そうした取り組みはコーサカさんらの耳にも入り「俺らもシナリオコンテストに送っちゃう?」「じゃあ掛川に行っちゃう?」といったノリに発展。
これをきっかけに、コーサカさんらと株式会社あらまほしの戸田佑也さんとの間に縁ができ、日本4都市を舞台にしたエモクロアTRPGシナリオアンソロジー「日本シ集」のリリースや今回のライブ開催へと繋がった。
掛川城を望む舞台
会場となった、大日本報徳社・掛川城公園で開かれた「掛川百鬼夜行」ではライブ開場前から飲食などのお店の出店、参加者による仮装が行われ、催しではシール集めやお面作成、謎解きなどのアクティビティも用意されていた。
また、開場前に三の丸広場では物販や特典チケットのグッズの交換が行われた。
物販や特典チケットを求めた参加者がステージの様子や、ステージ脇に設置されたメンバーのパネル、メンバーが作ったと思われる、てるてる坊主の写真を撮っていた。
開場待機列にはお馴染みのコスプレも
ファンたちは開場1時間前には相当数が並んでおり、お互いに番号を聞き合い入場するなどマナー良く佇んでいた。
開場時間になるころには、夕日も暮れ、あたりは暗くなっていた。
「まもなく開場いたします」とのアナウンスで次第に列が前へ進んでいく。
開場から入場するまではとても早く、列に並んでいる際、周りからも「オペレーションが早い」「すごすぎる」「野外だから入り口が広いおかげかもしれない」といった声が聞こえた。
前方を見ていると、「事前にチケットの画面をご準備ください」と言われなくとも、その画面を用意しているオーディエンスも多く、少なくともこうした入場の速さは相互の協力があってこそ実現したものだったのではないだろうか。
やはり、中には仮装イベントということもあり、仮装のまま参加するオーディエンスもおり、会場内の目を惹いていた。こうしたオーディエンスがいることも今回のコラボ開催の特徴だっただろう。
中にはMonsterZ MATEのふたり(女の子の姿もいた)、MonsterZ MATEの動画ではおなじみの面々のコスプレがおり、コスプレ可能なライブが珍しいということもあり、各々力が入っていた。
入場口で画面を見せる先には、先ほどまで開場脇に設置されていたパネルがこちらを向いてお出迎えをしていた。
コスプレあり”ならでは”の開場前アナウンス
会場の三の丸広場は、やわらかい芝生が生え、LEDと照明がまぶしく我々を照らしていた。LEDの画面には、今回のライブタイトルである「白の陣」と注意事項、ファンからのデジタルフラワースタンドが交互に映し出されていた。
開場を待つ中、コーサカさんによる声入れをきっかけに、会場案内がはじまった。
オーディエンスは注意事項が読み上げられる度に、「は~い」の声をあげる。
バトンタッチしたアンジョーさんによる注意換気では、「被り物を外すよう」にという、あまりライブでは聞かない注意事項が。これもコスプレができる、グッズに被り物があるからこその注意事項だっただろう。
天開司さん、佐藤ホームズさん、歌衣メイカさんと次々にバトンタッチをし、歌衣メイカさんの際には「この様にこのライブは声出しありです 声出せる準備できてますか?」とオーディエンスをあおり、会場に一体感が出た。
白幕が上がり、いざ出陣 「Live your life!!」
時間になると会場内に流れていたBGMが絞られ、会場内に開幕を知らせる如く、壮大なオーケストラ調のBGMがなりはじめ、オーディエンスからどよめきが聞こえる。
画面が暗転し、画面上でライトが動くような演出がされ、じわじわと「白の陣」と大きく文字が浮かび上がってくる。この演出にオーディエンスも歓喜。喜びの叫びが聞こえた。
背景が色とりどりに、移ろい、ドラムの音をきっかけに「白の陣」の文字舞台と客席を区切る緞帳がゆっくり上がるように、画面の上へと動くと、そこには後ろを向き、白いスーツをまとったアンジョーさん、コーサカさん、天開司さん、佐藤ホームズさん、歌衣メイカさんの姿が。
アンジョーさんの「行くぞ、掛川!」の合図で、5人はこちらを向いて会場を鼓舞する。
オーディエンスもそれに応えるように、大きく手を上げ、声をあげていた。1曲目はMonsterZ MATE 1stアルバム『MZM』でも1曲目を飾った「Live your life!!」からスタートした。
本来であればMonsterZ MATE2人によりリリースされた楽曲ということもあり、5人の登場には予想外だったオーディエンスもいるようで、2人以外のメンバーも「Crazy for you, Be crazy for you All Love」と声を合わせて歌うよう様子を見たオーディエンスが「え!? 5人で歌うの!?」という心から漏れた声も聞こえた。
また、そこにさらに会場を一体に声を合わすように一緒に歌うオーディエンスも少なくなかった。
アンジョーさんは「Why don't you go?! Live your life!!」に声を合わせるように「いっしょに!」と煽り、「白の陣へようこそみんな、一緒に楽しもうね」といい、コーサカさんの安定したラップと交互に各ゲストソロパートも挟まった。
アンジョーさんの本来ハイトーンに追いつこうとする天開司さん。
佐藤ホームズさんが歌うと、普段歌には慣れないことからオーディエンスから「頑張れ!」という歓声や驚く声が聞こえた。
アニキこと、歌衣メイカさんが歌うと、一瞬で熱量が高まり、再びの「Why don't you go?! Live your life!!」のコーラスにはもうすでに会場が一体になっていることを感じた。
まさかの2曲目? ざわつきと興奮収まらない「Quest」
曲が終わり、ライトが半暗転。アンジョーさん、佐藤ホームズさん、歌衣メイカさんが開場袖へと捌けて、コーサカさんと天開司さん2人になると、会場がざわつきはじめた。
そして、再度明転すると、歌い始めたのは、コーサカさんではなく天開司さん。MonsterZ MATEが今年(2024年)にリリースした「Quest」を共に歌う。
「Quest」が生まれたきっかけは、昨年末開催されたライブイベント「MZMカウントダウン2023→2024~あなたのおかげです~」の慰労ロケが発端だ。
コーサカさんの裁量で決められた内容で旅行が出来るという素晴らしい企画だったのだが、2泊3日には全員分の予算が足りず、3人まで行けるという事態に。
5番勝負で勝った3人が天国ロケ、負けた組は修行ロケに行くことになった。
そして、その修行ロケに行った2人こそ、この「Quest」の天開司さん、コーサカさんの2人だった。この「Quest」の歌詞には、そのロケで味わった楽ではない修行の旅路が反映されている。
ライブでは天開司さんの飾らない男らしい歌い声と、コーサカさんによるあきらめずに前に進み続けるリリックにカッコよさを感じた。
また、「そろそろ休もうぜ」「ったく……しょうがないぜ」というお互いのセリフには、天開司さんが少し情けない声を演出。コーサカさんの突っ込みに合わせて、会場からは歓声が上がった。
せっかくだから(笑) 天国組に不貞腐れ、なお楽しむ「極楽旅yeah! 」
半暗転し、開場袖へと移ろうとするコーサカさん、天開司さん。しかし、「ちょっと、ちょっと、ちょっと」とアンジョーさん、佐藤ホームズさん、歌衣メイカさんの極楽組が止めにかかる。
「(流れ上)帰りますよ」と舞台袖に行こうとするコーサカさんを「いやいやいや!」「せっかくだから(笑)」と止めにかかり、「楽があれば?」「極楽があるじゃん!」となぜか息を合わす3人。
「極楽のドライブに一緒に乗ってみないかい?」とアンジョーさん。「マジで意味わかんない」と切り捨てるコーサカさんらを巻き込むように3人は「極楽旅yeah! 」を歌う。
歌う3人は楽しい旅の思い出を反映させたように、終始、ハイテンション。特にアンジョーさんは浮足立ったように、2人にマイクを向ける様子も見られ、その様子に「いや歌わんから」っていうように拒否する修行組。2人はずっと意気消沈したような様子でステージ上に座っていた。
しかし、最後の最後には「極楽旅yeah!」の歌詞に合わせて2人もジャンプで立ち上がり、場を盛り上げた。
個人勢など関係ない?
ここでMCパートで各メンバーが自己紹介。「すごかったよね~」と話題ふりから、野球の大谷選手が属するドジャースについて話すメンバーたち。話題が長くなり、オーディエンスが少し不安な様子を見せると「悪かった悪かった(笑)」と少し冗談が長くなったとコーサカさんがオーディエンスに少し謝った。
そして、トークは今回の衣装の話題へ。今回は白に統一されたジャケットが「白の陣」というにはふさわしい、カッチリとかっこいい姿にフォームをそろえている。
コーサカさんは「VTuberの会社のイベントで個人勢の衣装って変えられるんだって思いましたね(笑)」と、本来個人で活動している天開司さん、佐藤ホームズさん、歌衣メイカさんの衣装も含めて今回統一されていることに言及した。
この日、開始が18時からで、時間上長くなると終電や野外ということもあり近隣の迷惑になりかねないということで、巻いて進行しなくてはならなかった。そのため、コーサカさんは「今日はMonsterZ MATEにしては珍しくパパぱって、本当はドジャースの下りはいらなかった(笑)」と話した。
そして、この後はソロパートに移るということで、今回は名前の書かれた提灯が登場。提灯がランダムに光り、曲順をきめるという演出に。
メンバーも本当にどれが出るかわからない中、コーサカさんの「ルーレット」に合わせ、オーディエンスが「スタート」と言うコール&レスポンスで、まず歌うのはコーサカさんに決まった。
閑話休題: 映像の配慮がすごいと思った話
ここで蛇足的だが、この時に現地に居た中で特筆すべきだと思った映像ワークについても触れておきたい。通常、フィジカルに登場しないVTuberのライブはLEDスクリーンを1枚か2枚出して、そこにVTuberが登場し、演出を行うことが多い。
2枚を出す際は、1枚をメインステージ、2枚目をスイッチャーアウト(SW OUT)にし、席の関係などからメインステージでVTuberが見えにくい状況でも見えやすいようにする配慮がされることがある。
しかし、今回は野外ということもあり、2枚を設置するには場所、費用等の都合からも難しかったことだろう。そんな中で、LEDの右端・左端に歌っているメンバーのワンショットを映すことで、メンバーを見えやすくする配慮がされていた。
これに気づいた瞬間、筆者は「すげぇ……MZM」と小さく声を漏らしてしまった。MZMは男性ファンも少なくはないが、女性ファンも多いファン構造をしており、見えにくいオーディエンスにとっては大変助かったことだろう。
事実、筆者も途中見えにくい時があり、この演出には大変助けられた。
会場にこだまする コーサカ「どうでもいい」
コーサカさんは「みなさん声出てますか?」「じゃあもっと出してもらってもいいですか?」「『どうでもいい』って叫ぶ曲です」と楽曲「どうでもいい」のビートが始まる。
コーサカさんはこれまでに様々な鬱憤や嫌悪をラップのバースにのせてきた。
2024年にリリースされたソロアルバム『CORE』に収録されたこの楽曲は、そうしたコーサカさんの想いや苦しみが詰められており、観客も「日頃のどうでもいいなってこととか想いとか込めて」というコーサカさんの掛け声をもとに声に力を入れてレスポンスをしていた。
映像では、「どうでもいい」のワードに合わせレーザーのような文字で「どうでもいい」と画面に表れていた。
夕日はとっくに……でもライブはまだまだ 天開司「HOWL」
続いての提灯ルーレットで次のソロは天開司さんに決定。天開司さんの初のオリジナル曲「HOWL」を歌った。
「HOWL」は池袋のライブハウス・harevutaiのこけら落とし公演に出演することを機に制作された楽曲だ。MVでは夕日をバックにした曲ということもあり、ライブでも背景が茜色に染まった。
間奏で、天開司さんは「もうね、この曲にある夕日はとっくのとうに落ちました。けど、夜はまだまだこれから。ライブもまだまだこれから。せっかくの野外です、声出していきましょう!」とこのライブでも印象的なMCをした。
MCの直後、唐突に「歌える!?」とオーディエンスに呼びかけ。よくよく配信の音を聞いていると、この呼びかけにPAさんがアンビエントの音を勢いよくフェーダーをあげた痕跡があり、PAさんの反応速度の速さと対応力がうかがえた。
なお、MCでは「万が一、夕暮れだったらセトリを変えようって話してたもんな」とコーサカさんが話しており、一番目を天開司さんにする予定もあったという裏話が明かされた。
これには天開司さんも「最初にやらせようとしてて。なんでMonsterZ MATEってついてるのに最初にやらせようとするのって!?」と突っ込んでいたようだ。
男気コールで大盛り上がり 歌衣メイカ「Cho Cool Nice Guy」
再びランダムで曲が歌衣メイカさんに決まると、オーディエンスからは「アニキ!」の声援が多く聞こえた。
歌衣メイカさん以外のメンバーが舞台からはけ、「Cho Cool Nice Guy」を歌った。
「Cho Cool Nice Guy」は歌衣メイカさんの1stライブに向けて制作・公開された楽曲だ。作詞作曲はVTuberのIURA TOIさんが担当している。歌衣メイカさんはIURA TOIさんに依頼するにあたり、配信で「第一回の『V紅白』が頭に残っているんだよね」という話をしていた。
『V紅白』こと『V紅白歌合戦』は2018年末、2019年末、2020年末に開催されたVTuberの音楽番組で歌衣メイカさん、天開司さんが進行・企画を担当していた企画だった。
実のところ、MonsterZ MATEが人気になった背景にこの『V紅白』が大きな要因になっており、楽曲自体が大きな懸け橋になっているように感じた。
(なおこじつけにはなるが、佐藤ホームズさんも完全に無関係ではない。いちライターとしてMoguLiveの中で第三回の開催を連載コラムの中で触れている。)
舞台袖に捌けていた歌衣メイカさん以外のメンバーもサビでは再登場。メンバー勢揃い、オーディエンスも一緒になって「漢気」をコール&レスポンス。5thライブ以降、やはりこの”漢”はMonsterZ MATEのライブの暑さのボルテージをマックスまでつりあげてくれているだろう。
ヘドバン繰り出す アンジョー「狼藉」
提灯ルーレットで次がアンジョーさんに決まると、ヒートアップしすぎた残りのメンバーたちはひと休憩。
ひとり残ったアンジョーさんはMCで「もっと気持ちよくしてやるぜ」とヘドバンをレクチャー。配信ではMCでアンジョーさんが「腰に気を付けつつ」と発言したからか、「それはお前だよwww」という労う会話が聞こえた。
アンジョーさんは今回のソロで「狼藉」を歌った。これはMonsterZ MATEあるあるなのだが、ファンは配信されていない楽曲でも盛り上がることが出来る。
今回の「狼藉」も実はサブスク配信がされておらず、ライブでしか聞くことが出来ない一曲だろう。
そんな中でもヘドバンのレクチャーの時点からどの曲が来るかを察知し、ギターサウンドとアンジョーさんの鼓舞などに合わせてレスポンスを完璧にこなしていた様子が印象的だった。
まさかのサプライズ 佐藤ホームズオリジナル曲「ボクシダイ紀行」
そしてMCに移り、提灯ルーレットが表示された中で、ここまでソロ曲を持つメンバーが全員歌った中、コーサカさんが「次はどうするんだ」と話していると提灯はただひとり佐藤ホームズさんに点灯する。
これにオーディエンスも「え!?」とざわついた様子。
佐藤ホームズさんは元々ライターとVTuberに関するライブ配信を中心に活動していたこともあり、オリジナル曲を持っていない。
MonsterZ MATE 5th Anniversary LIVE「大騒動」でライブに初出演をした彼なのだが、あろう事かそのライブの開催会場はKT Zepp Yokohama。
彼は友人のひょんな影響から、初のライブをZeppで行うということを成し得たのである。
これには当時、アンジョーさんは大爆笑、他の全員がツッコミ、本人も困惑の様子だった。
しかし、この日の佐藤ホームズさんは違う。
「いや、ソロのオリジナル曲が……作っていただきまして」という一言に会場はもう「大騒動」。オーディエンスが驚きで恐らく知らない者同士で顔を見合わせたり、「え? え?」と心の声が漏れまくる人が居たりと最初は理解が追い付いていない様子だった。
しかし、楽曲「ボクシダイ紀行」が流れると会場もサイリウムを一生懸命にふり、各々のオーディエンスが思い思いにふりはじめる。
楽曲はどこか童心を感じるようなリリックとブギ調のメロディーが特徴的。今回の旅行のように聞いているとウキウキする、今回の掛川という普段と離れた土地で聞くのにはピッタリな一曲だった。
「ボクシダイ紀行」は、アンジョー(un:c)さんが作詞作曲し、その日の24時にリリースされた。
これにはコーサカさんが「俺たちが4年かかったことを……。」と突っ込んでいた。
ライブはもう終盤へ 5人で「MonsterZ PARADE」
MCでは事後グッズを紹介したほか、ここで終盤へ向かうことが明らかに。そしてハロウィンも近いことがあり、5人で「MonsterZ PARADE」を歌う。
今回開催された「掛川百鬼夜行」では百鬼夜行大行列という、仮装をした人たちが行列を成して行進するパレードが実際に開催されており、「MonsterZ PARADE」はまさにその状況にもふさわしい一曲だっただろう。
MCでも「我々も百鬼夜行の列に加わりたいと思います」というコーサカさんの曲振りで楽曲が始まった。
MonsterZ MATEのシンガー/ラッパーという特徴的なユニット構成にゲストボーカルが加わることで、それぞれのメンバーの良さがつまったパフォーマンスだった。
さらに元気に「天才モンスターズの元気が出るルーレット」
次なるMCでコーサカさんたちが「もうだめだ……。」と疲れた様子をみせると、佐藤ホームズさんのネタ振りから5人は「天才モンスターズの元気が出るルーレット」を歌った。
楽曲はUSAGI Productionというレーベルが2019年から出しているVTuberらによるコンピレーションアルバムシリーズ『VirtuaREAL』より2023年にリリースされた『VirtuaREAL.07』に収録されたもの。
ライブではアンジョーさん、歌衣メイカさんが息をピッタリと合わせたパフォーマンスを行っていた。
唯一、メンバーでラッパーであるコーサカさんは他のメンバーとは異なり、得意のラップを高速で披露し、その場を盛り上げた。
掛川から生まれた縁
MCでは待望のMonsterZ MATEのスケールフィギュア、ライブBlu-rayの発売、カウントダウンイベント「MZMカウントダウン2024→2025~一歩一歩~」が告知された。
また、カウントダウンイベントはすでに事前グッズが販売中だ。
MC中に「MZMの動画まで掛川を知らなかった人いる?」というコーサカさんオーディエンスへの質問には、多数の手があがった。
現地で手を挙げているオーディエンスは、MonsterZ MATEで掛川を知り、ライブに応募し、そして実際に掛川に来て、そしてライブを観戦していることになる。
この上がった手ひとつひとつが、TRPGから沢山の掛川への縁が生まれた証拠だっただろう。
また、これについてコーサカさんが関わってきた掛川にも縁が深い副市長の石川さん、株式会社あらまほしの戸田さんの名前があがり、市庁舎に行ったエピソードをメンバーが話した。
また、エピソードの中で「掛川茶本当においしいんですよ」「緑茶ビールみたいなのおいしかった」といったエピソードも出た。
筆者らも宿泊先や呑みの先で掛川茶、そして掛川のお茶の葉を原料としたクラフトビールを飲ませていただいたが、本当においしかった。
「さわやか食べたことがある人~」とコーサカさんが聞くと、食べたことのない天開司が地団駄を踏んだ。
蛇足的だが、ここで一人のオーディエンスについて触れさせてほしい。このさわやかのトークをする際に、一人の女性のオーディエンスが「あそこは3時間ぐらい混むよ~」だとか「さわやかおいしいよ~」といった地元に詳しそうな声を何度も上げていた。
ここまでレポートで触れてきてはいないのだが、この女性はライブの中盤からとても感極まったような声援を送っており、途中に少しそちらの方を向くと、感動で涙が出そうな表情を浮かべていた。
そして、このMCの声援で筆者と友人は気づいた。恐らくその女性は地元の住人であると。掛川にMonsterZ MATEが来たことで、地元の住人だろうファンがこんなにも喜んでいることはこのレポートに残しておきたかったので、ひとつ備忘録的に掲載させていただく。
ラストスパート「StarZ」
そして、ライブは残り2曲のラストスパートへ。
MonsterZ MATEと、その仲間たちが数多く集まって制作された「StarZ」を歌う。
「StarZ」は2023年リリースの1st EP『VIVA MATE』に収録。作詞作曲は今年消灯(解散)した音楽ユニット・浮遊信号に所属したesora umaが担当し、MVのアートワークは同ユニットのあとり依和が担当。コーラスには数多くのMonsterZ MATEに関わってきたVTuberたちの声が収録された一作だ。
今回のライブでは、MVを意識した中尾真波土さんによる映像演出でタイトルやMVにもある星の描写がされた。
また、タイトルやリリックにある星に関するように、コーサカさんが「夜空じゃないと星空は見えないぜ」というアドリブを披露。
天を見れば確かに星が輝いており、煌々と輝くLEDに描写された星々、照明の光、オーディエンスたちの色とりどりのサイリウムでどこを見ても星のように輝いていた。
今日は最後の曲 新曲「Baby上等」
「最後の曲の前に――」とライブの関係上、本当の最後の曲であるとアナウンス。そして最後の曲は映像撮影し、SNSに掲載してもよいと告知し、新曲「Baby上等」を披露した。
楽曲は「難航不落挑むんだ」というクトゥルフ神話TRPGシナリオ『狂気山脈』を彷彿させるリリックからはじまり、新木場STUDIO COAST(ageha)で開催された『VIRTUAFREAK』ラストナイトでの出来事を彷彿させる「シャカリキ土壇場でハズしてもOK」など、ここ数年の出来事をサンプリング/コンテクストしたと思われる歌詞が多く含まれる。
また、中盤では「白の陣」というワードも入り、今回のライブのために準備された曲であることが良くわかるように、「次は行く年来る年」というリリックも。
この楽曲から次のイベント「MZMカウントダウン2024→2025~一歩一歩~」が始まっているのであると筆者は感じた。
全員が楽しそうにダンスし、コーラスをする様は寂しいながら、素晴らしい掛川の縁を飾るラストにぴったりだっただろう。
楽曲が終わると、メンバーによる感謝の言葉とダンスの振り付けが被っていることがトークされた。
歌衣メイカさんは別れの際に「またな」と「また」を強調して退場していた。アンジョーさんはふざけつつも、最後には動画の別れのあいさつでおなじみの「バーイ、センキュー」のポーズで退散。
直後、「Baby上等」が24時にリリースされることがサプライズで発表され、ライブは終演となった。
オーディエンスたちの結束力
この後ファンたちは記念撮影に、画面に表示されたメンバーたちのイラストを撮っていたのだが、途中であるオーディエンスが「後ろの人が見えるように、撮った人から座ってください!」との声かけが聞こえた。
これに合わせて、先ほどの女性や筆者の知人らも「後ろの方が撮れるように座ってくださいー! ご協力をお願いします!」と自主的に掛け声を出した。
これにより、本来ならあまりライブで見えることのない画面下の「ご来場いただきありがとうございました。」という文字が見えたではないか。
これにあるオーディエンスが「『ご来場ありがとうございました』まで見える!」と言うと周りに和やかな笑いが起き、頃合いをみてオーディエンス自身が自主的に「ゆっくりと後ろの方から退場ください!」と声を掛け合う様子までみられた。
まさに長年培われたオーディエンスの結束力がここにあっただろう。
事実は小説よりも奇なり――筆者がライブに参加するまでの経緯
さて、ライブレポート後半戦は筆者らの掛川旅行談記になる。
これらの掛川に関する動画の中では、縁の大切さと、現実は小説よりも類稀なることが起きうることが語られていた。
そして、今回は筆者の身にも事実は小説よりも奇なることが起こり、我々は掛川へと足を踏み入れることになったのだ。
はじまりは動画「事実は小説より奇なりナリ〜 part2」の投稿翌日のこと。
今回同行した専門学校の同期から唐突に連絡後来た。
「相談したいことがあるから、一緒に呑みたい」という。
話を聞くと、仕事に困っているという話で、筆者と音響談義に花を咲かせられる、音が大好きな彼が「音響業界をやめたい」と言い出したのだ。これには驚き、相談に乗った。
そして、話は最近の趣味に移ると、「MonsterZ MATEにハマった」という話をし始めたのだ。さすがに筆者も彼が辞めたいというのと同じくらいか、それ以上にびっくりした。
そもそもその筆者の同期。実はMonsterZ MATEのスタッフの江口真彦さんの元後輩だったのだ。
それで、江口さんからMonsterZ MATEを元々布教されていたのだが、後に江口さんは退職し、株式会社バルスへ。筆者にも布教されていたこともあり、この頃ハマったのだという。
この話をされた時に頭にふと浮かんだ。「
」と。
そうして7月5日。
MonsterZ MATEが「白の陣 MZM music day」を発表した。
会場はなんと掛川市。これに筆者も耐え切れなくなり、LINEを送った。
「○○、掛川に行こう」
と、コーサカさん風にこの一文だけを彼に送りつけたのだ。
そこからライブは当選し、休みが決まるまではとんとん拍子に進んだ。
しかし、ライブ開催1週間前に宿を2人でとろうとすると全然見つからず、さらには快活や夜行バスまで満杯。
結局山の方に登った「翠月」という旅館に泊めさせていただいた。
これ以外に静岡駅ほか近隣の駅で泊めることが出来る駅がなかったので、本当に助かった。
当日の移動は新幹線。2人で雀魂で遊びながら、菓子を食べた。
掛川につくと、まずは腹ごしらえでうなぎ屋「大和田」へ。
老夫婦2人が作るウナギ丼は、少し日本酒の香りが残りながらもとても美味な大人な出来で、肝串も頼んだのだが、どちらもお酒が飲みたくなる味ながら、2人とも強烈に眠かったために酒欲をなんとか抑えて完食をした。
道中、掛川の地で「天城」という定食屋さんに出会った。
残念ながらもうウナギを食べてしまったので、入ることは出来なかった。この出会いに2人でびっくりしていた。
(MonsterZ MATEチャンネルには、天城てんというおてんばお嬢様VTuberが出ている。ストグラの葉風邪ナイ視点が本当にかわいいので、ぜひ見てほしい。)
その後は1時間に2、3本の掛川バスに乗車。宿へと向かった。
後ろに乗車し、整理券を受け取るスタイルで、久々のこのスタイルに懐かしさを感じた。
乗車料金は初乗りも安く、宿までは300円だった。
街中から、山道へと進んでいくバス。
上がっていくと、田んぼ、茶畑、柿畑などがあり、かなりガタガタと音を立てて走っていた。
ただ、旅館についても我々には時間がなかった。
旅館に荷物を置くだけでも〝大騒動〟だった。
3分後には街へ戻るバスが行ってしまう。我々の計算が甘かったのだ。
旅館のスタッフさんがご厚意で時間までバスを止めてくださり、なんとか間に合うことが出来た。
バスの中から旅館の方を向くと、自分たちに手を振ってくれていた。
「あと3分でいってしまうんです……。」と話し、時間まで止めてくださったのは本当に申し訳ないながら、旅館の方々、バスの方々には感謝しかなかった。
そのおかげもあって、ライブには余裕を持って間に合うことが出来た。これがもし乗れなければ、ライブ開演前ギリギリに街につく予定になっていたため、本当に危なかった。もっと早く出ていればよかったと反省している。
ライブ後は「掛川ビール飲みたいよな……?」という話で、掛川の街を巡ることに。
静岡おでんや先述の掛川割などを堪能した。
帰りの旅館への道中は、タクシーをチャーター。途中ドライバーさんが「あ、あぶねー」と唐突に止まったので、何かと思えば、シカでした。
翌日の朝は旅館の朝食を食べたのだが、これがシンプルながらにおいしい。
2日目は掛川を少し歩き、そうして沼津観光へと向かうのだった。
「辛いことも全部オセロみたく裏返って、楽しいことだけを今してる。俺達を止められるのは『時間』だけ。」——そんな楽しい旅になった。
こんな機会を与えてくれたコーサカさん/アンジョーさんはじめとするMonsterZ MATE関係者、天開司さん、佐藤ホームズさん、歌衣メイカさん、そして掛川の皆さん、TRPGの関係者各位には感謝をしている。本当にありがとうございました。